竜神に愛された令嬢は華麗に微笑む。〜嫌われ令嬢? いいえ、嫌われているのはお父さまのほうでしてよ。〜

石河 翠

文字の大きさ
7 / 9

(7)

しおりを挟む
 わたくしの両親、娘にとっては祖父母の元で育ったことで、ジェニファーはわたくしと同じたくましい娘に育った。何と言っても、自ら領内を探索し、眠りについていた竜神さまを叩き起こすくらいである。

「竜の宝と呼んでおきながら、預けっぱなしにするとは何ごとかしら。大切なら自分で守れ。竜の宝の大切なものも全力で守りなさい。この大馬鹿野郎!」と鉄拳制裁をしていたことは、記憶に新しい。娘の気迫に驚きつつ、その胆力に惚れ込んだ竜神さまのおかげで、わたくしは草葉のかげからではなく、わりと明確な姿をした守護霊として娘のそばにいられることになったのである。

 その後娘は王家と神殿に対してこの件について手出し無用だと言い放った。あくまで、自分たち親子の問題であり、この手で片をつけてみせると。成人したらすぐに当主を引き継いでみせるから、それまで待ってくれと。それくらい対応できなければ、女侯爵としてやっていくこともできはしないだろうと不敵に笑って。

 娘を後押ししたのは、竜神さまの存在だろう。彼は目障りな夫のことを消し炭にしてやりたかったようだが、娘に乞われて手出しを控えていたらしい。娘への振舞いにより、夫の有責ポイントが日々数えられていたと知ったら夫はどんな顔をするだろうか。

 夫への復讐の機会がようやくやってきた。夫が自ら竜穴に足を運ぶと言ったときは踊りだしたくなるほどだった。竜穴は、魔力の宝庫。ここなら、防御力の高い娘の身体を一時的に借りることができるだろうと竜神に教えてもらっていたからだ。

 守護霊をおろすのは、結構大変なのだ。強大な魔力に月の満ち欠け、神聖な場。さまざまな条件を満たすのはもちろんのこと、適性のある神官や聖女でなければ、普通は魂同士がぐちゃぐちゃに混ざり合ってしまうらしい。なんという大事故。

 けれど、わたくしたちは諦めなかった。どうにかして、身勝手なあの男に一泡吹かせてやりたい。そのためならどんな修行にも耐えてみせる。そうやって時を重ねようやく儀式に必要な要素がほぼ揃えられたものの、どうやって竜穴まで呼び出そうかと思っていたところに、自分からあんな馬鹿なことを言い出したのだ。こちらとしては渡りに船だったのである。

 何度考えても、本当にあの男は愚かだ。それに、王家や神殿に手出し無用と言ったのには、ほんの少しだけ期待していた部分もあるのだ。もしかしたら、夫が改心してくれるかもしれないと。まあ、そんな都合のよいことは起きなかったのだけれど。

 渋る竜神さまに母娘で説得をし、ようやく獲得した憑依の機会だ。そう簡単に終わらせてやるわけにはいかない。わたくしは情けなく気絶してしまった夫が起きるまでの間、持ってきたお弁当類でピクニックを楽しむことにした。今までは娘と竜神さまとしか話せなかったから、今のうちにたくさんのひとにお礼を伝えよう。わたくしの大切な娘を守ってくれてありがとうと。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約予定の令嬢の評判が悪すぎるんだけど?!

よーこ
恋愛
ある日、ディータはシュレーダー伯爵である父親から、キールマン子爵家の令嬢ルイーゼと婚約することになると伝えられる。このことは婚約するまで世間には秘密にするため、学園でもルイーゼに声をかけたりしないよう父親に命じられたディータは、しかしどうしても気になるあまり、顔を見るくらいはいいだろうとルイーゼの教室に足を向けた。その時に偶然、ルイーゼと話をする機会を得たのだが、ディータがいずれ婚約する相手だと気付かなかったルイーゼは、あろうことがディータに向かって「デートしましょう」「人気のないとろこにいってイケナイことして楽しみましょう」なんてことを誘ってきたものだから、ディータは青褪めてしまう。 自分はなんてふしだらな令嬢と婚約しなければならないのだと憂鬱になってしまうのだが……

虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜

ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」 あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。 「セレス様、行きましょう」 「ありがとう、リリ」 私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。 ある日精霊たちはいった。 「あの方が迎えに来る」 カクヨム/なろう様でも連載させていただいております

【完結】白と黒の回合

白キツネ
恋愛
前世が日本人だったフィーア・ローズ伯爵令嬢は自分の髪色が白だからという理由で、悪魔付きと呼ばれる。また、同様に黒髪である、オスカー・ミリスティア公爵子息は呪い持ちと呼ばれていた。そして、その異名をつけたのは両方とも第二王子だった。 二人は家族に愛されている自覚はあったが、自分のことを打ち明けられずにいた。 そして、二人は出会い… 小説家になろう カクヨム、pixivにも掲載しております。

貧乏伯爵家の妾腹の子として生まれましたが、何故か王子殿下の妻に選ばれました。

木山楽斗
恋愛
アルフェンド伯爵家の妾の子として生まれたエノフィアは、軟禁に近い状態で生活を送っていた。 伯爵家の人々は決して彼女を伯爵家の一員として認めず、彼女を閉じ込めていたのである。 そんな彼女は、ある日伯爵家から追放されることになった。アルフェンド伯爵家の財政は火の車であり、妾の子である彼女は切り捨てられることになったのだ。 しかし同時に、彼女を訪ねてくる人が人がいた。それは、王国の第三王子であるゼルーグである。 ゼルーグは、エノフィアを妻に迎えるつもりだった。 妾の子であり、伯爵家からも疎まれていた自分が何故、そんな疑問を覚えながらもエノフィアはゼルーグの話を聞くのだった。

【完結】義妹に全て奪われた私。だけど公爵様と幸せを掴みます!

朝日みらい
恋愛
リリアナは美貌の義妹イザベラにすべてを奪われて育ち、公爵アルノーとの婚約さえも破棄される。 役立たずとされて嫁がされたのは、冷徹と噂される公爵アルノー。 アルノーは没落した家を立て直し、成功を収めた強者。 新しい生活で孤立を感じたリリアナだが、アルノーの態度に振り回されつつも、少しずつ彼の支えを感じ始め――

氷の公爵の婚姻試験

潮海璃月
恋愛
ある日、若き氷の公爵レオンハルトからある宣言がなされた――「私のことを最もよく知る女性を、妻となるべき者として迎える。その出自、身分その他一切を問わない。」。公爵家の一員となる一世一代のチャンスに王国中が沸き、そして「公爵レオンハルトを最もよく知る女性」の選抜試験が行われた。

オッドアイの伯爵令嬢、姉の代わりに嫁ぐことになる~私の結婚相手は、青血閣下と言われている恐ろしい公爵様。でも実は、とっても優しいお方でした~

夏芽空
恋愛
両親から虐げられている伯爵令嬢のアリシア。 ある日、父から契約結婚をしろと言い渡される。 嫁ぎ先は、病死してしまった姉が嫁ぐ予定の公爵家だった。 早い話が、姉の代わりに嫁いでこい、とそういうことだ。 結婚相手のルシルは、人格に難があるともっぱらの噂。 他人に対してどこまでも厳しく、これまでに心を壊された人間が大勢いるとか。 赤い血が通っているとは思えない冷酷非道なその所業から、青血閣下、という悪名がついている。 そんな恐ろしい相手と契約結婚することになってしまったアリシア。 でも実際の彼は、聞いていた噂とは全然違う優しい人物だった。

ループ中の不遇令嬢は三分間で荷造りをする

矢口愛留
恋愛
アンリエッタ・ベルモンドは、ループを繰り返していた。 三分後に訪れる追放劇を回避して自由を掴むため、アンリエッタは令嬢らしからぬ力技で実家を脱出する。 「今度こそ無事に逃げ出して、自由になりたい。生き延びたい」 そう意気込んでいたアンリエッタだったが、予想外のタイミングで婚約者エドワードと遭遇してしまった。 このままではまた捕まってしまう――そう思い警戒するも、義姉マリアンヌの虜になっていたはずのエドワードは、なぜか自分に執着してきて……? 不遇令嬢が溺愛されて、残念家族がざまぁされるテンプレなお話……だと思います。 *カクヨム、小説家になろうにも掲載しております。

処理中です...