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ところで、問題の鍵は一体どこにあるのだろう?
私が悠人に尋ねてみれば、彼は軽く制服の胸ポケットを叩いた。
「鍵はね、ここに入ってるよ」
「どういうこと?」
「実は学校からの帰り道にね、駅の改札口で鍵を拾ったんだ。駅員さんに預けようかなとも思ったんだけれど、鍵に『秋山理沙』って名前と電話番号まで書いてあってびっくりしたよ」
なんと、落とした直後に拾ってもらっていたらしい。運が良いんだか悪いんだか微妙なところだ。
「書いてある番号に電話をかけたら、理沙ちゃんのお母さんに繋がったんだよね。鍵を拾ったことは伝えたんだけれど、『理沙にお灸を据えるために、すぐに見つかったって伝える必要はない。少しは困らせた方がいい』って言われちゃって。心配したよね。ごめんね」
「ううん、私のほうこそありがとう。まさかの時のために書いておいた名前と電話番号が役に立った! すごい!」
「いやいや、俺が言うのもなんだけど、鍵に名前と電話番号を書くのは本当に危ないからもうやめてね」
住所を書いていないから大丈夫かなと思ったけれど、そういう問題じゃなかったらしい。うーん、じゃあ鍵を落とした時にどうやって本人確認してもらえるんだろう。ああ、だからそもそも落とすなって話なのか。
そこで私は気がついた。
「え、それじゃあさっきまでの占いは、鍵探しに全然関係なかったってこと?」
「むしろ、なんであれでちゃんとした占いができるって信じたのか不思議だよ。裏返していてもカードの絵柄がわかるのに」
私のツッコミに、悠人がおかしくてたまらないといった様子で笑った。
「表に返す前に何の絵柄かわかっていたの?」
「うん。テレホンカードは、それぞれ裏面のバーコードや品名が違うからね。そもそも腕のいいマジシャンなら、自分の狙い通りのカードを相手にひかせることだってできるし」
「えー、じゃあデタラメのイカサマ?」
「最初から占い自体はデタラメ。でもね、理沙ちゃんとならどんなことでだって笑っておしゃべりできるのは本当。だから、カードは完全にアトランダムで引いてもらったんだよ。それっぽかったでしょ」
悠人と一緒にめくったカードのことを振り返ってみる。確かにどのカードを見ても、悠人と過ごしてきたことを思い出した。結局、相手のことを想う気持ちがあれば、カードの絵柄どころか占いが本物か偽物かなんて、関係ないのかもしれない。
と、その時、玄関からバタバタと賑やかな足音が聞こえてきた。
「ただいま。悠人、理沙ちゃんが来てるんだって? 理沙ちゃんのお母さんから電話をもらったわよ。ちゃんと、冷蔵庫のケーキ、おやつに出してる? ……って、え、どうしたの? 理沙ちゃん泣いてるの? 悠人、あんたまさか、理沙ちゃんに……。なんてことを! あんたがそういう人間だったなんて思わなかったわ! 最低! 変態!」
「いや、違う、完全に誤解……」
「女の子を泣かせて、誤解もへったくれもあるか!」
「俺の話、聞いて!」
そういや、私、途中でちょっと泣いたんだっけ。そのせいで目の周りが赤かったのが誤解を招いてしまったらしい。賑やかで優しい悠人のお母さんを見て、私は思わず吹き出した。
少しだけ回り道をしたけれど、また今日から昔みたいに過ごせるね。これからまたよろしくね。
私が悠人に尋ねてみれば、彼は軽く制服の胸ポケットを叩いた。
「鍵はね、ここに入ってるよ」
「どういうこと?」
「実は学校からの帰り道にね、駅の改札口で鍵を拾ったんだ。駅員さんに預けようかなとも思ったんだけれど、鍵に『秋山理沙』って名前と電話番号まで書いてあってびっくりしたよ」
なんと、落とした直後に拾ってもらっていたらしい。運が良いんだか悪いんだか微妙なところだ。
「書いてある番号に電話をかけたら、理沙ちゃんのお母さんに繋がったんだよね。鍵を拾ったことは伝えたんだけれど、『理沙にお灸を据えるために、すぐに見つかったって伝える必要はない。少しは困らせた方がいい』って言われちゃって。心配したよね。ごめんね」
「ううん、私のほうこそありがとう。まさかの時のために書いておいた名前と電話番号が役に立った! すごい!」
「いやいや、俺が言うのもなんだけど、鍵に名前と電話番号を書くのは本当に危ないからもうやめてね」
住所を書いていないから大丈夫かなと思ったけれど、そういう問題じゃなかったらしい。うーん、じゃあ鍵を落とした時にどうやって本人確認してもらえるんだろう。ああ、だからそもそも落とすなって話なのか。
そこで私は気がついた。
「え、それじゃあさっきまでの占いは、鍵探しに全然関係なかったってこと?」
「むしろ、なんであれでちゃんとした占いができるって信じたのか不思議だよ。裏返していてもカードの絵柄がわかるのに」
私のツッコミに、悠人がおかしくてたまらないといった様子で笑った。
「表に返す前に何の絵柄かわかっていたの?」
「うん。テレホンカードは、それぞれ裏面のバーコードや品名が違うからね。そもそも腕のいいマジシャンなら、自分の狙い通りのカードを相手にひかせることだってできるし」
「えー、じゃあデタラメのイカサマ?」
「最初から占い自体はデタラメ。でもね、理沙ちゃんとならどんなことでだって笑っておしゃべりできるのは本当。だから、カードは完全にアトランダムで引いてもらったんだよ。それっぽかったでしょ」
悠人と一緒にめくったカードのことを振り返ってみる。確かにどのカードを見ても、悠人と過ごしてきたことを思い出した。結局、相手のことを想う気持ちがあれば、カードの絵柄どころか占いが本物か偽物かなんて、関係ないのかもしれない。
と、その時、玄関からバタバタと賑やかな足音が聞こえてきた。
「ただいま。悠人、理沙ちゃんが来てるんだって? 理沙ちゃんのお母さんから電話をもらったわよ。ちゃんと、冷蔵庫のケーキ、おやつに出してる? ……って、え、どうしたの? 理沙ちゃん泣いてるの? 悠人、あんたまさか、理沙ちゃんに……。なんてことを! あんたがそういう人間だったなんて思わなかったわ! 最低! 変態!」
「いや、違う、完全に誤解……」
「女の子を泣かせて、誤解もへったくれもあるか!」
「俺の話、聞いて!」
そういや、私、途中でちょっと泣いたんだっけ。そのせいで目の周りが赤かったのが誤解を招いてしまったらしい。賑やかで優しい悠人のお母さんを見て、私は思わず吹き出した。
少しだけ回り道をしたけれど、また今日から昔みたいに過ごせるね。これからまたよろしくね。
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