落ちこぼれ姫はお付きの従者と旅立つ。王族にふさわしくないと追放されましたが、私にはありのままの私を愛してくれる素敵な「家族」がおりますので。

石河 翠

文字の大きさ
4 / 8

(4)

しおりを挟む
「黄金の卵には手出し無用。そういう取り決めのはずだ」
「あら、どうしてわざわざ庇うのかしら。いまだに精霊を生み出すことのできない出来損ないよ?」
「その卵を届けたのは、俺だ」
「仕事をまっとうする責任があるということね」

 ふたりの間に割って入ったジギスムントの言葉に、デイジーはうつむいたまま唇をかんだ。

(そう、この卵を届けてくれたのはジギスムントだったのよね)

 ジギスムントがデイジーの隣にいてくれるのは、ただの責任感。思わずデイジーは胸が苦しくなった。

 本来ならば、聖獣たちが届ける黄金の卵。それを届けたのが、美しいとはいえただの平民であったことに国王は不満を漏らしたと聞いている。

『なぜ聖獣ではなく、そなたが遣いに選ばれたのか?』
『聖獣ではなく、俺のほうがふさわしいと精霊王が判断したからだ』
『王に向かってその口のききかた。精霊王は何を考えておられるのだ』
『たかが一国の王が、偉そうに』
『貴様、無礼であるぞ!』
『しばらくこの姫の側にいさせてもらおう。ああ、もてなしなど気にするな。こちらが好きでやることだからな』
『誰が貴様のような人間を歓迎するか。聖獣でもあるまいし。まったく不愉快だ。さっさと下がるがよい』
『やれやれ、まったく愉快な王さまだな。あんまりいらいらすると、早死にするぞ』
『剣のサビになりたくなければ、即刻出て行け!』

 物心ついてから聞いた当時の話に、デイジーはめまいを覚えたものだ。それからデイジーはジギスムントの言葉遣いを直そうとしたが、改められることはなかった。

(彼はそもそも王宮内の規範であるとか、常識というものに価値を感じていないのよね。無意味なものというか、完全に理解できないものとして振る舞っているけれど。平民がみんなジギスムントのようなわけではもないし……。なんだか、まるで人間ではないみたい)

 王宮内に味方のいないデイジーでも、ジギスムントの不自然さは理解していたのだ。だからこそ、不思議だった。なぜ彼が、ここまでデイジーのことを大切にしてくれるのか。

「そうよ。どうせなら、わたくしのお付きになりなさい。美味しい食べ物も、きれいな服だって用意してあげる。そこの疫病神と一緒に、這いつくばって雑草を集めたり、土にまみれる生活などしなくていいのよ」
「知ったような口をきかないでもらいたい。責任と言うのが誤解を招いたのであれば、言い直そう。俺は、自分の意思でデイジーの隣にいる」
「可哀想に。そうまでして精霊王に義理立てするなんて。命令には従わなければならないのね」
「勝手にほざいておけ。だがな、俺に触れていいのはデイジーだけだ」

 異母姉がジギスムントの頬に手を伸ばす。しかし彼は、それをまるで虫でも追い払うように払いのけた。面子を潰された異母姉が、デイジーを睨みつけてくる。

(本当に、ただの責任感ではないの?)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

氷のメイドが辞職を伝えたらご主人様が何度も一緒にお出かけするようになりました

まさかの
恋愛
「結婚しようかと思います」 あまり表情に出ない氷のメイドとして噂されるサラサの一言が家族団欒としていた空気をぶち壊した。 ただそれは田舎に戻って結婚相手を探すというだけのことだった。 それに安心した伯爵の奥様が伯爵家の一人息子のオックスが成人するまでの一年間は残ってほしいという頼みを受け、いつものようにオックスのお世話をするサラサ。 するとどうしてかオックスは真面目に勉強を始め、社会勉強と評してサラサと一緒に何度もお出かけをするようになった。 好みの宝石を聞かれたり、ドレスを着せられたり、さらには何度も自分の好きな料理を食べさせてもらったりしながらも、あくまでも社会勉強と言い続けるオックス。 二人の甘酸っぱい日々と夫婦になるまでの物語。

婚約破棄されたので昼まで寝ますわ~白い結婚で溺愛なんて聞いてません

鍛高譚
恋愛
「リュシエンヌ・ド・ベルナール、お前との婚約は破棄する!」 突然、王太子フィリップから婚約破棄を告げられた名門公爵家の令嬢リュシエンヌ。しかし、それは義妹マリアンヌと王太子が仕組んだ策略だった。 王太子はリュシエンヌが嘆き悲しむことを期待するが—— 「婚約破棄ですね。かしこまりました。」 あっさり受け入れるリュシエンヌ。むしろ、長年の束縛から解放され、自由な生活を満喫することに! 「これでお昼まで寝られますわ! お菓子を食べて、読書三昧の生活ができますのよ!」 しかし、そんな彼女の前に現れたのは、王太子のライバルであり冷徹な公爵・ヴァレンティン・ド・ルーアン。 「俺と婚約しないか?」 政略的な思惑を持つヴァレンティンの申し出に、リュシエンヌは「白い結婚(愛のない形式的な結婚)」ならと了承。 ところが、自由を満喫するはずだった彼女の心は、次第に彼によって揺さぶられ始め——? 一方、王太子と義妹は社交界で次々と醜態をさらし、評判は地に落ちていく。 そしてついに、王太子は廃嫡宣告——! 「ええ? わたくし、何もしていませんわよ?」 婚約破棄された令嬢が、のんびり自由を謳歌するうちに、 いつの間にか勝手にざまぁ展開が訪れる、痛快ラブストーリー! 「婚約破棄……むしろ最高でしたわ!」 果たして、彼女の悠々自適な生活の行方は——?

好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が

和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」 エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。 けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。 「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」 「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」 ──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)

柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!) 辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。 結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。 正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。 さくっと読んでいただけるかと思います。

下賜されまして ~戦場の餓鬼と呼ばれた軍人との甘い日々~

星森
恋愛
王宮から突然嫁がされた18歳の少女・ソフィアは、冷たい風の吹く屋敷へと降り立つ。迎えたのは、無愛想で人嫌いな騎士爵グラッド・エルグレイム。金貨の袋を渡され「好きにしろ」と言われた彼女は、侍女も使用人もいない屋敷で孤独な生活を始める。 王宮での優雅な日々とは一転、自分の髪を切り、服を整え、料理を学びながら、ソフィアは少しずつ「夫人」としての自立を模索していく。だが、辻馬車での盗難事件や料理の失敗、そして過労による倒れ込みなど、試練は次々と彼女を襲う。 そんな中、無口なグラッドの態度にも少しずつ変化が現れ始める。謝罪とも言えない金貨の袋、静かな気遣い、そして彼女の倒れた姿に見せた焦り。距離のあった二人の間に、わずかな波紋が広がっていく。 これは、王宮の寵姫から孤独な夫人へと変わる少女が、自らの手で居場所を築いていく物語。冷たい屋敷に灯る、静かな希望の光。 ⚠️本作はAIとの共同製作です。

処理中です...