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「それで、どうしてこういうことになるんだ?」
納得いかないという表情を隠さないカルロの隣で、アンジェラはころころと笑ってみせた。あの日、十年ぶりにカルロの店を訪れた後、そのままカルロを公爵家に連れてきたのだ。
目を白黒させるカルロは、実家の人間が公爵家に勢ぞろいしていることに頭を抱えてしまっていた。
「あら、カルロ以外のご家族の皆さまには、納得していただいておりますわ」
「それがまずおかしいんだ。どうして、君がうちの家族とこんなに親しいのか」
目を吊り上げるカルロの頭を、カルロの長兄がすかさず押さえつける。ぐりぐりと拳骨を落としつつも、長兄の笑顔は優しい。なんだかんだで、弟のことを可愛がっているのだ。
「お前、可愛いお嬢さまを前になんて顔をしているんだ。政略結婚どころか、ここまで乞われて結婚するんなら、本望だろう。昔から言っていたじゃないか。結婚するなら恋愛結婚に限るって」
「まあ、カルロったらそうでしたの。意外とロマンチストでしたのね。それならば私、ちょうどよろしかったですわ。求婚用に赤い薔薇を百本準備しておいて正解でした」
アンジェラがちらりと横を向けば、執事が心得たように小さくうなずいた。
「待て待て待て。どうして、いきなり求婚することになっているんだ。婚約が先だろう。そもそも、少しずつお互いを知っていくという話ではなかったか?」
「まあ。十年も待たせておいて、さらにおあずけを命じるなんて罪なお方。私、一人寝が寂しくて、泣いてしまいますわ」
「年頃の娘が、はしたない話をするんじゃない!」
「昔は、寂しいと言ったら朝まで手を握って隣にいてくださったではありませんか」
「あれはそういう意味じゃない」
「お前、否定しないのか。生真面目朴念仁だと思っていたが、手が早いんだな」
「兄上も、勝手に納得するのはやめてくれ」
「気分の切り替えに、お庭でも散歩いたしましょうか?」
「おお、嫁の実家で大胆だな。人目がないからって、押し倒すなよ」
「誰がするか!」
長兄を振り切りずんずんと歩くカルロに、そっとアンジェラが自分の腕を絡める。
「だまし討ちみたいな真似をしてごめんなさい」
「まったくだ。せめてもう少し、俺にもどうにか連絡できなかったのか」
カルロは、アンジェラの言葉を疑わなかった。あの日、突然家にやって来た迷惑な子どもがアンジェラだったなんて信じがたいだろうに、それでもカルロは全部受け入れてくれた。それが涙が出るほど嬉しい。
「カルロに情報を流して、未来を変えてしまうのが怖かったの。だって、早い段階で辺境領と王都の貴族との関係が安定していたら、カルロは王都までわざわざ乗り込んでくることはなかったでしょう?」
アンジェラの質問に、カルロは懐かしい苦虫を噛みつぶしたような顔で押し黙る。その表情に、アンジェラは自身の考えの正しさを実感した。彼はとても情に厚いひとだ。もともと高位貴族とのやり取りを好んでいないにもかかわらず、あえて王都に乗り込んできたのはあくまで辺境伯領を守るため。最初から公爵家が手厚く保護していれば、きっとカルロと自分を結ぶ縁はなくなってしまう。
それにとアンジェラは肩をすくめた。祖父も父もそして兄弟たちまで、アンジェラのことを溺愛している。万が一辺境伯に連なる者が、アンジェラに守られなければ潰れてしまうようならば、彼らはアンジェラが嫁ぐことを決して許しはしないだろう。なんだったら、嬉々として彼ら自ら潰そうとするいに違いない。だからこそ、表立ってカルロに直接かかわることはできなかったのだ。
納得いかないという表情を隠さないカルロの隣で、アンジェラはころころと笑ってみせた。あの日、十年ぶりにカルロの店を訪れた後、そのままカルロを公爵家に連れてきたのだ。
目を白黒させるカルロは、実家の人間が公爵家に勢ぞろいしていることに頭を抱えてしまっていた。
「あら、カルロ以外のご家族の皆さまには、納得していただいておりますわ」
「それがまずおかしいんだ。どうして、君がうちの家族とこんなに親しいのか」
目を吊り上げるカルロの頭を、カルロの長兄がすかさず押さえつける。ぐりぐりと拳骨を落としつつも、長兄の笑顔は優しい。なんだかんだで、弟のことを可愛がっているのだ。
「お前、可愛いお嬢さまを前になんて顔をしているんだ。政略結婚どころか、ここまで乞われて結婚するんなら、本望だろう。昔から言っていたじゃないか。結婚するなら恋愛結婚に限るって」
「まあ、カルロったらそうでしたの。意外とロマンチストでしたのね。それならば私、ちょうどよろしかったですわ。求婚用に赤い薔薇を百本準備しておいて正解でした」
アンジェラがちらりと横を向けば、執事が心得たように小さくうなずいた。
「待て待て待て。どうして、いきなり求婚することになっているんだ。婚約が先だろう。そもそも、少しずつお互いを知っていくという話ではなかったか?」
「まあ。十年も待たせておいて、さらにおあずけを命じるなんて罪なお方。私、一人寝が寂しくて、泣いてしまいますわ」
「年頃の娘が、はしたない話をするんじゃない!」
「昔は、寂しいと言ったら朝まで手を握って隣にいてくださったではありませんか」
「あれはそういう意味じゃない」
「お前、否定しないのか。生真面目朴念仁だと思っていたが、手が早いんだな」
「兄上も、勝手に納得するのはやめてくれ」
「気分の切り替えに、お庭でも散歩いたしましょうか?」
「おお、嫁の実家で大胆だな。人目がないからって、押し倒すなよ」
「誰がするか!」
長兄を振り切りずんずんと歩くカルロに、そっとアンジェラが自分の腕を絡める。
「だまし討ちみたいな真似をしてごめんなさい」
「まったくだ。せめてもう少し、俺にもどうにか連絡できなかったのか」
カルロは、アンジェラの言葉を疑わなかった。あの日、突然家にやって来た迷惑な子どもがアンジェラだったなんて信じがたいだろうに、それでもカルロは全部受け入れてくれた。それが涙が出るほど嬉しい。
「カルロに情報を流して、未来を変えてしまうのが怖かったの。だって、早い段階で辺境領と王都の貴族との関係が安定していたら、カルロは王都までわざわざ乗り込んでくることはなかったでしょう?」
アンジェラの質問に、カルロは懐かしい苦虫を噛みつぶしたような顔で押し黙る。その表情に、アンジェラは自身の考えの正しさを実感した。彼はとても情に厚いひとだ。もともと高位貴族とのやり取りを好んでいないにもかかわらず、あえて王都に乗り込んできたのはあくまで辺境伯領を守るため。最初から公爵家が手厚く保護していれば、きっとカルロと自分を結ぶ縁はなくなってしまう。
それにとアンジェラは肩をすくめた。祖父も父もそして兄弟たちまで、アンジェラのことを溺愛している。万が一辺境伯に連なる者が、アンジェラに守られなければ潰れてしまうようならば、彼らはアンジェラが嫁ぐことを決して許しはしないだろう。なんだったら、嬉々として彼ら自ら潰そうとするいに違いない。だからこそ、表立ってカルロに直接かかわることはできなかったのだ。
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