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5.めっきとガラス玉の願い
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『お姉さまを助けたいの』
『対価なしでは無理な話ね』
小さな手を組み、寝台の上で必死にお祈りをしていたら、信じられないほどの美女が幼いエリンジウムの前に現れていた。まるで夜の女王さまみたい。そんなエリンジウムの心の声が聞こえたのか、黒の魔女はうっすらと微笑み、彼女の言葉に耳を傾けた。子どもにもわかるように、かみ砕いて契約について説明する。
『対価?』
『願いを叶えてほしいのなら、代金が必要だってこと』
『あたし、お金持ってない。お父さまならいっぱい持っているけれど』
『魔女の助力は、お金では買えないわ』
『じゃあ、何を渡せばいいの?』
ぐるりと部屋の中を見回してみる。可愛らしいものがあふれているけれど、黒の魔女が欲しがるようなものがあるとは思えない。困り切ったように眉を下げ、エリンジウムは黒の魔女に問いかけた。
『そうね。お前が持っているものの中で、いっとう大事なものを差し出せるなら願いを叶えてあげる』
『あたしの大事なもの? あたしが一番大事なのはお姉さまよ。でもお姉さまを助けるのに、お姉さまは渡せないわ』
『それにお前の姉はお前のものではないもの。お前が差し出せるのは、お前自身だけ』
ささやくような魔女の言葉に、エリンジウムは首を傾げる。自分を魔女にあげてしまったら、エリンジウムはどうなってしまうのだろう。消えるのか。死ぬのか。それとも何かエリンジウムだったものが残るのか。
『あたしは、あなたに「あたし」をあげるの?』
『ちょっと違うわね。お前とお前の姉の役割を入れ替えてあげるの。姉が受け取るはずだったものをお前が受け取り、好きに扱えばいいわ』
『それでお姉さまが救われるのなら、あたしはなんだっていい』
まともな神経をしていれば、絶対に受け入れるはずのない条件。大人であれば、もっと詳細を確認したに違いない契約。けれど、幼いエリンジウムはためらうことなくうなずいた。大好きな異母姉を救えるのならば、なんだって構わなかったから。
『馬鹿な娘ね。半分しか血の繋がっていない異母姉を助けるために、人生を棒に振るつもりなの。もしも願いが叶ったところで、お前は助けた異母姉には愛されない。疎まれ、憎まれる。それでも構わないの?』
『お姉さまに嫌われるのは確かにちょっと寂しいけれど。それでも、あたしはお姉さまを助けたいの。あたしと違って、お姉さまは本物のお姫さまなんだから。幸せにならなくちゃいけないのよ』
『愚かだけれど、一生懸命で一途な子は好きよ。お前の願いを叶えてあげる』
『ありがとう!』
『こちらこそ、暇つぶしに付き合ってくれて感謝するわ』
魔女というのは、総じて気まぐれ。人間と同じ物差しでは測れない。そう知っていたはずなのに、エリンジウムは黒の魔女と契約をした。その結果、何が起きるのかを本当の意味では理解できないままで。
『対価なしでは無理な話ね』
小さな手を組み、寝台の上で必死にお祈りをしていたら、信じられないほどの美女が幼いエリンジウムの前に現れていた。まるで夜の女王さまみたい。そんなエリンジウムの心の声が聞こえたのか、黒の魔女はうっすらと微笑み、彼女の言葉に耳を傾けた。子どもにもわかるように、かみ砕いて契約について説明する。
『対価?』
『願いを叶えてほしいのなら、代金が必要だってこと』
『あたし、お金持ってない。お父さまならいっぱい持っているけれど』
『魔女の助力は、お金では買えないわ』
『じゃあ、何を渡せばいいの?』
ぐるりと部屋の中を見回してみる。可愛らしいものがあふれているけれど、黒の魔女が欲しがるようなものがあるとは思えない。困り切ったように眉を下げ、エリンジウムは黒の魔女に問いかけた。
『そうね。お前が持っているものの中で、いっとう大事なものを差し出せるなら願いを叶えてあげる』
『あたしの大事なもの? あたしが一番大事なのはお姉さまよ。でもお姉さまを助けるのに、お姉さまは渡せないわ』
『それにお前の姉はお前のものではないもの。お前が差し出せるのは、お前自身だけ』
ささやくような魔女の言葉に、エリンジウムは首を傾げる。自分を魔女にあげてしまったら、エリンジウムはどうなってしまうのだろう。消えるのか。死ぬのか。それとも何かエリンジウムだったものが残るのか。
『あたしは、あなたに「あたし」をあげるの?』
『ちょっと違うわね。お前とお前の姉の役割を入れ替えてあげるの。姉が受け取るはずだったものをお前が受け取り、好きに扱えばいいわ』
『それでお姉さまが救われるのなら、あたしはなんだっていい』
まともな神経をしていれば、絶対に受け入れるはずのない条件。大人であれば、もっと詳細を確認したに違いない契約。けれど、幼いエリンジウムはためらうことなくうなずいた。大好きな異母姉を救えるのならば、なんだって構わなかったから。
『馬鹿な娘ね。半分しか血の繋がっていない異母姉を助けるために、人生を棒に振るつもりなの。もしも願いが叶ったところで、お前は助けた異母姉には愛されない。疎まれ、憎まれる。それでも構わないの?』
『お姉さまに嫌われるのは確かにちょっと寂しいけれど。それでも、あたしはお姉さまを助けたいの。あたしと違って、お姉さまは本物のお姫さまなんだから。幸せにならなくちゃいけないのよ』
『愚かだけれど、一生懸命で一途な子は好きよ。お前の願いを叶えてあげる』
『ありがとう!』
『こちらこそ、暇つぶしに付き合ってくれて感謝するわ』
魔女というのは、総じて気まぐれ。人間と同じ物差しでは測れない。そう知っていたはずなのに、エリンジウムは黒の魔女と契約をした。その結果、何が起きるのかを本当の意味では理解できないままで。
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