リポグラム短編集~『あい』を失った女~

石河 翠

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わかれ『みち』は意外な場所に

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条件「み」「ち」「ぢ」を使ってはならない。



 放課後ほうかごおな学年がくねん美少女びしょうじょ先輩せんぱい体育館裏たいいくかんうらしているのを目撃もくげきしてしまった。わたすつもりだったラブレターらぶれたあをかばんのなかんで、学校がっこうす。

 いえかえりたくなくて住宅街じゅうたくがい公園こうえん時間じかんつぶしていると、虫眼鏡むしめがねにぎりしめたおとこ出会であった。どうやら、虫眼鏡むしめがね日光にっこうあつめてをおこす実験じっけんをしたいらしい。失恋しつれんでやさぐれているのに邪険じゃけんにできないのは、どことなくかれ先輩せんぱいているからだろう。

 今時いまどき幼児ようじかしこいんだなあと感心かんしんしながら、わたしラブレターらぶれたあした。どうせてようとおもっていたものだし、おとこ学習がくしゅうのためにやされるのなら、ラブレターらぶれたあ本望ほんもうのはず。

 それなのにおとこは、絶対ぜったいやすなとはじめた。それどころか、しっかりと相手あいてとどけるべきだという。いやいや、あんなに可愛かわいおんな告白こくはくしたあとにこんなものわたせるか。ふたりにわらわれるだけだ。

 きっぱりことわると今度こんどおとこがしくしくはじめた。通行人つうこうにんはひそひそとなにごとかいあっている。やめてくれ、幼児ようじかせるなんて世紀せいき極悪人ごくあくにんじゃないか。このままじゃ、不審者ふしんしゃとして通報つうほうされてしまいそうだ。


 ***


 仕方しかたなくラブレターらぶれたあわたすことを承諾しょうだくすると、天使てんしかおわらいやがった。いきおいよく指切ゆびきりげんまんをされる。なんだ、こいつ。嘘泣うそなきか。

「あれ、なにしているの?」
「え、あ、えと、あの、先輩せんぱい、これ!」

 たまたまとおりがかったらしい先輩せんぱいラブレターらぶれたあしつけると、わたしはこれさいわいとした。れい美少女びしょうじょとなりにいなかったようだが、いえ方向ほうこうことなるのだろうか。まあ、いいや。

 とりあえず義理ぎりたした。あとのことはらん。まったくどうそだてたら、あんなふうになるんだか。おやかおおがませてもらいたいくらいだわ。


 ***


「はあ、そういうことか」

 そんな出来事できごとなど記憶きおく彼方かなた。ところがある唐突とうとつ理解りかいした。

「どうしたの?」
「いや、分岐点ぶんきてんって本当ほんとうにあるんだなあと。あと、おやかお観察かんさつしておこうと思って」
今日きょうイケメンいけめんだろ?」
「あー、まったくもう、大好だいすき!」

 好奇心旺盛こうきしんおうせい活動的かつどうてき虫眼鏡むしめがねって、ひかりについて研究けんきゅうするとっている息子むすこうしろで、わたしおっととなった先輩せんぱいほほにひとつキスきすをした。
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