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それからこんこんと話し合いを重ねた結果わかったこと。信じられないことに、辺境伯さまの想いびとというのは私のことだったらしい。ねえ、ちょっと嘘でしょう?
「まさか、辺境伯さまの」
「グスターヴァスと」
「グスターヴァスさまの『彼女』が私のことだったなんて想像もしていませんでした」
「もともと、あなたに求婚するために王都に向かうつもりでいたのだが。国境でまた小競り合いがあってな。社交シーズンの開始に間に合わなかった。しかも到着してみれば、すでに騒ぎが起きたあとときた」
「な、なるほど?」
「どうにかしてあなたに想いを伝えようと屋敷を訪ねたが、あなたは契約結婚を希望していると言う。あの時は頭を抱えるしかなかったよ」
それは本当にすみませんでした。今考えると、かなりとんでもない条件を突きつけてしまっていたと思う。それに付き合ってくれたグスターヴァスさまは、やはり紳士的な方だ。
「今、俺のことを優しいとか親切なひとだと思った?」
「はい」
「俺はあなた以外の人間には、別に優しくなんてないよ」
「ですがグスターヴァスさまのように、か弱き人々を守り抜く誇り高い方を、私は他に知りません」
貴族の中には領民を奴隷か何かのように考えているろくでなしだってたくさんいる。グスターヴァスさま以外の方が辺境伯だったなら、この国はとっくの昔に隣国に攻め落とされていたに違いない。
「それは、昔あなたが俺に教えてくれたことだよ」
「私が?」
果たして、私と辺境伯さまに接点などあっただろうか。首を傾げていると、楽しそうにグスターヴァスさまが色っぽく片目をつぶる。
「ずっと昔、俺が公爵家主催の夜会に出たときの話だ。辺境伯というのは、国にとって重要な立場ではあるが、上位貴族にしてみれば野蛮な連中に見えるのだろう。みんながひそひそと俺のことを嗤っていた」
「おかしな話です。辺境伯さまがしっかり国境を守っているからこそ、私たちは安心して暮らすことができるのに」
「ありがとう。そう言ってくれるひとが、もっと増えるといいのだけれどね。まあそんな雰囲気に嫌気がさして、庭に出たら女神がいたんだ」
「女神、ですか?」
「ああ、素晴らしい笑顔で暴漢をタコ殴りにしている戦女神がね」
「えええええええ」
すみません、私が想像していた方向性とは全然違うのですが!
「まさか、辺境伯さまの」
「グスターヴァスと」
「グスターヴァスさまの『彼女』が私のことだったなんて想像もしていませんでした」
「もともと、あなたに求婚するために王都に向かうつもりでいたのだが。国境でまた小競り合いがあってな。社交シーズンの開始に間に合わなかった。しかも到着してみれば、すでに騒ぎが起きたあとときた」
「な、なるほど?」
「どうにかしてあなたに想いを伝えようと屋敷を訪ねたが、あなたは契約結婚を希望していると言う。あの時は頭を抱えるしかなかったよ」
それは本当にすみませんでした。今考えると、かなりとんでもない条件を突きつけてしまっていたと思う。それに付き合ってくれたグスターヴァスさまは、やはり紳士的な方だ。
「今、俺のことを優しいとか親切なひとだと思った?」
「はい」
「俺はあなた以外の人間には、別に優しくなんてないよ」
「ですがグスターヴァスさまのように、か弱き人々を守り抜く誇り高い方を、私は他に知りません」
貴族の中には領民を奴隷か何かのように考えているろくでなしだってたくさんいる。グスターヴァスさま以外の方が辺境伯だったなら、この国はとっくの昔に隣国に攻め落とされていたに違いない。
「それは、昔あなたが俺に教えてくれたことだよ」
「私が?」
果たして、私と辺境伯さまに接点などあっただろうか。首を傾げていると、楽しそうにグスターヴァスさまが色っぽく片目をつぶる。
「ずっと昔、俺が公爵家主催の夜会に出たときの話だ。辺境伯というのは、国にとって重要な立場ではあるが、上位貴族にしてみれば野蛮な連中に見えるのだろう。みんながひそひそと俺のことを嗤っていた」
「おかしな話です。辺境伯さまがしっかり国境を守っているからこそ、私たちは安心して暮らすことができるのに」
「ありがとう。そう言ってくれるひとが、もっと増えるといいのだけれどね。まあそんな雰囲気に嫌気がさして、庭に出たら女神がいたんだ」
「女神、ですか?」
「ああ、素晴らしい笑顔で暴漢をタコ殴りにしている戦女神がね」
「えええええええ」
すみません、私が想像していた方向性とは全然違うのですが!
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