脅迫して意中の相手と一夜を共にしたところ、逆にとっ捕まった挙げ句に逃げられなくなりました。

石河 翠

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「何が難しいの?」
「ええ、ちょっと聞きたいことがあったのですけれど、さすがに話の流れも何もないまま聞くのは難しいなあと」
「具体的に店長さんに何を聞きたいの?」
「ああ、そうですね。犬の話なんですけれど」

 その瞬間、店内の音が突如消えてなくなった。え、なに、なに、なに。ちょっと怖いんですけれど? こういうドッキリみたいな反応、やめてもらえます?

「犬って、犬?」
「そうです、とっても魅力的で近づかずにはいられない魔性のわんこの秘密についてなんですけれど」

 力説しすぎたのか、常連さんがなんとも言えない顔で腕を組んだままうなり始めた。

「犬、犬かあ。あなたは、犬への嫌悪感とかないの?」

 うん? なんだろう、アレルギーとかの心配かな。ありがたいことに動物全般大好きなんだよね。向こうさんからはあまり好いていただけないのが悲しいところなんだけれど。

「え、あるわけないじゃないですか。忠誠心が高くて、ひたすら一途。決して相手を裏切らないところなんて、最高です」
「そっか、そうなんだ。ふんふん、なるほど。それなら、まあ問題ないか」
「ええ。むしろこんなに大好きなのに、ちっとも相手には好きになってもらえなくて。それだけが悲しいところなんですね」
「あひゃひゃひゃ。まさか、ここで、こんな面白恋愛話を聞くことができるとか思わなかったよ。よーし、みんな、飲もう! 熱い愛の告白に乾杯!」
「え、何を言って……。ちょっと、べろんべろんでひとの話、聞いてないし!」

 犬に反応していたってことは、やっぱり常連さんたちはもふもふわんこのことを知っているのでは? すみまん、その話、詳しく教えてくださいいいい。駄目だ、完全に酔っぱらいと化している。もしもーし。最終的に何の解決も見せないまま、あっさり酔いつぶれるのはやめてもらえませんかね?

 珍しく場末の酒場のように騒がしくなったのもつかの間、結局常連さんは、一緒にいた腐れ縁らしい男友達に抱えられて店を出ていった。あれは、絶対に男の人が女の人を恋愛対象として狙っている感じだな。でも、相手の気持ちが自分に向くまでは絶対に手を出さない真面目さんだ。わかる、わかるぞ! 男ばっかりの騎士団に所属しているからこそ、ひとさまの色恋には敏感になるもの。このミリセントさまに死角はないのだ! お目当てのわんこは探せない節穴だけれどね!
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