脅迫して意中の相手と一夜を共にしたところ、逆にとっ捕まった挙げ句に逃げられなくなりました。

石河 翠

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「……店長さん、なんでそれを私に言うんです? もしも私が脅したとしても、しらをきることだってできましたよね? え、私、どうなっちゃうの? 死体に口なしとかそういう感じですか?」
「だって家族には守秘義務はないからね。むしろ、ちゃんと自分の所属している組織のことは正確に伝えておかないと、有事の際に心配だし」

 って、いきなりおでこにキスしてきたああああ。なんで? なんで? 一体どうなってるの?

「ミーちゃん、王の犬のことを嗅ぎまわっている様子もないし、その癖わたしに興味津々みたいだし。かといって、その目にいやらしさがないんだよ。普通の女性は、金か身体か、その両方が目当てのはずなのに」
「いや、完全に身体目当てですよ!」
「身体目当ての人間が、即落ちでぐうすか寝るわけがないだろう。あんな思わせぶりなことを言って、わたしは結構期待していたのに。無邪気にわたしを翻弄して。本当にミーちゃんはいけない子だ」

 寝るって、そういう意味だと思われていたの?

 いや、本当にただただ安眠を求めていただけなんですう。限界突破して、意味不明なことを言ったことは謝ります。ごめんなさい。だから、謎の顔面きらきら攻撃で、求婚まがいの言葉を吐くのはやめてええええ。勘違いしちゃうううう。

 わふん。
 あわあわする私の元に、もふもふした金色の毛玉が飛来した。おおおお、これは!

「あああ、私の安心毛布ちゃん!」

 腕の中にもふんとおさまっていたのは、あの日見つけたお日さまみたいなわんこだった。やっぱりもふっとわんこは本当にいたのね。私の夢や幻じゃなかったんだ! 嬉しさのあまり大型犬の身体に顔をうずめてすはすはしていると、呆れたような店長さんの声が落ちてきた。

「なるほど。ミーちゃんはわたしではなく、相棒狙いで店に通ってきていたんだね」
「この子、店長さんの相棒なんですか? ペットではなく?」
「この子はこう見えて聖獣なんだよ。本来の力を解放すれば、国だって焦土にできるくらいのね。家での留守番は退屈みたいだし、聖獣に勝てるような人間はこの国にはいないから自由に出入りさせているんだ。ちなみにあの酒場は、王の犬の情報交換場所だよ」

 隠れ家的酒場というか、本来なら見つからないはずの酒場だったらしい。じゃああの気さくな常連さんたちもみんな魔術師なの? 嘘でしょう?

「それにしても、妬けてしまうな。わたしは君に出会ってから、君のことで頭がいっぱいだったというのに。君はわたしのことなんて、眼中になかったのか。まあ、確かにこの子は可愛いけれどねえ」

 うん、店長さん、この手は何ですかね? あと、なぜ、わんこもとい聖獣さんを横にどかしてから、私に覆いかぶさってきたのでしょうか? まさかまさか、こんな美形で貴重な魔術師さまが平凡な私に手を出すなんてことは、ない、よね?
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