白雪姫の継母に転生したようです。バッドエンドを避けるため、魔法の鏡と協力していたら、評判の愛され王妃になりました。

石河 翠

文字の大きさ
5 / 7

(5)

しおりを挟む
 とはいえ、気がかりなことはいくつかある。家庭教師とのお勉強に戻って行った白雪ちゃんを見送り、行儀悪くテーブルに頬杖をついた。山のように積み上げられた釣書を見ながら、ため息を吐く。そう、ひとつは婚約者の件だ。

「白雪姫って一人娘でしょ。どうして婚約者がいないの。女王になるなら、それこそ王配はまともな人間を選ばないとまずいっていうのに」
「それはわたしの口からはなんとも。候補者ということであれば、隣国の王子はいかがですか」
「隣国の王子かあ」

 思わず出た渋い声に、魔法の鏡は不思議そうだ。

「何かご不満な点でも? あなたが知る未来では、危機に陥った白雪姫を助けにくるのは彼なのでしょう。ちょうど良いのでは?」
「そうなんだけどさあ。あの王子さまって、りんごを喉に詰まらせて死にかけていた白雪姫にキスするんだよね。結果として美談にはなるけれど、死体に一目惚れしてキスするタイプの王子さまとか気持ち悪くない?」
「まあ、確かに」
「可愛い白雪ちゃんを変態に嫁がせるのは嫌だよ」

 真剣な顔で訴えれば、魔法の鏡はちょっと笑ったみたいだった。

「はあ、わかりましたよ。周辺の王族の情報を出せばいいんですね?」
「国とかの利益も大事だけど、やっぱり白雪ちゃんが幸せになることが一番だから。あ、でもあんまり弱小貴族はダメ。権力とお金はある程度持っていてほしい!」
「おや、愛さえあれば他には何もとはおっしゃらないのですね」
「愛なんかでお腹は膨れないじゃん。白雪ちゃんはきっとどんなに貧乏でも相手を大切にできる子だけれど、相手はそうとは限らないからね。困窮して暴力を振るったり、白雪ちゃんを売り飛ばしたりするかもしれない。やっぱり幸せな生活のためには、愛だけじゃなくって生活能力も大事だよ」
「……あなたもそういう理由で陛下に嫁がれたのですか?」
「ふふふ、私は貧乏くじを引いたのよ」

 残りの気がかりなことである国王陛下について言及されて、私は苦笑した。

 昔の記憶は他人の日記帳を読んでいるみたいで、ちょっと変な感じがする。

 亡き妻を愛し続ける国王に、前妻に良く似た絶世の美少女の継子。白い結婚で、愛人を得ることもかなわない。生まれるはずのない後継について周囲から詮索も受けるだろう。嫁ぐ前から針のむしろ決定だ。

「今の私にとっては白雪ちゃんはすごく大事な娘だし、魔法の鏡なんていう心強い友人もいて、結構幸せだよ。でも選べるなら、結婚はあなたみたいなひととしたかったな」
「……ゴマをすったところで何も出てきませんよ」
「あなたはそれだけ素敵だってこと。鏡の中から出てこれないのが残念ね」
「そんなことを呑気に言っていられるのも今のうちですよ」

 もしかして、今までの会話で何か地雷を踏んじゃったの? 嘘、どれよ。どれがNGだったの?

 ううう、バッドエンドは処刑ではなくそれなりの修道院への追放で勘弁してください。

「せめて地獄のタップダンスとかじゃない、安らかな死に方を希望します」
「何を馬鹿なことを言ってるんですか」

 呆れ果てた冷ややかな声。とりあえず涙目のまま、私は魔法の鏡に祈りを捧げた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

狼隊長さんは、私のやわはだのトリコになりました。

汐瀬うに
恋愛
目が覚めたら、そこは獣人たちの国だった。 元看護師の百合は、この世界では珍しい“ヒト”として、狐の婆さんが仕切る風呂屋で働くことになる。 与えられた仕事は、獣人のお客を湯に通し、その体を洗ってもてなすこと。 本来ならこの先にあるはずの行為まで求められてもおかしくないのに、百合の素肌で背中を撫でられた獣人たちは、皆ふわふわの毛皮を揺らして眠りに落ちてしまうのだった。 人間の肌は、獣人にとって子犬の毛並みのようなもの――そう気づいた時には、百合は「眠りを売る“やわはだ嬢”」として静かな人気者になっていた。 そんな百合の元へある日、一つの依頼が舞い込む。 「眠れない狼隊長を、あんたの手で眠らせてやってほしい」 戦場の静けさに怯え、目を閉じれば仲間の最期がよみがえる狼隊長ライガ。 誰よりも強くあろうとする男の震えに触れた百合は、自分もまた失った人を忘れられずにいることを思い出す。 やわらかな人肌と、眠れない心。 静けさを怖がるふたりが、湯気の向こうで少しずつ寄り添っていく、獣人×ヒトの異世界恋愛譚。 [こちらは以前あげていた「やわはだの、お風呂やさん」の改稿ver.になります]

身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)

柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!) 辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。 結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。 正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。 さくっと読んでいただけるかと思います。

氷のメイドが辞職を伝えたらご主人様が何度も一緒にお出かけするようになりました

まさかの
恋愛
「結婚しようかと思います」 あまり表情に出ない氷のメイドとして噂されるサラサの一言が家族団欒としていた空気をぶち壊した。 ただそれは田舎に戻って結婚相手を探すというだけのことだった。 それに安心した伯爵の奥様が伯爵家の一人息子のオックスが成人するまでの一年間は残ってほしいという頼みを受け、いつものようにオックスのお世話をするサラサ。 するとどうしてかオックスは真面目に勉強を始め、社会勉強と評してサラサと一緒に何度もお出かけをするようになった。 好みの宝石を聞かれたり、ドレスを着せられたり、さらには何度も自分の好きな料理を食べさせてもらったりしながらも、あくまでも社会勉強と言い続けるオックス。 二人の甘酸っぱい日々と夫婦になるまでの物語。

【完結】『推しの騎士団長様が婚約破棄されたそうなので、私が拾ってみた。』

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
【完結まで執筆済み】筋肉が語る男、冷徹と噂される騎士団長レオン・バルクハルト。 ――そんな彼が、ある日突然、婚約破棄されたという噂が城下に広まった。 「……えっ、それってめっちゃ美味しい展開じゃない!?」 破天荒で豪快な令嬢、ミレイア・グランシェリは思った。 重度の“筋肉フェチ”で料理上手、○○なのに自由すぎる彼女が取った行動は──まさかの自ら押しかけ!? 騎士団で巻き起こる爆笑と騒動、そして、不器用なふたりの距離は少しずつ近づいていく。 これは、筋肉を愛し、胃袋を掴み、心まで溶かす姉御ヒロインが、 推しの騎士団長を全力で幸せにするまでの、ときめきと笑いと“ざまぁ”の物語。

「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)

透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。 有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。 「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」 そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて―― しかも、彼との“政略結婚”が目前!? 婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。 “報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。

図書館でうたた寝してたらいつの間にか王子と結婚することになりました

鳥花風星
恋愛
限られた人間しか入ることのできない王立図書館中枢部で司書として働く公爵令嬢ベル・シュパルツがお気に入りの場所で昼寝をしていると、目の前に見知らぬ男性がいた。 素性のわからないその男性は、たびたびベルの元を訪れてベルとたわいもない話をしていく。本を貸したりお茶を飲んだり、ありきたりな日々を何度か共に過ごしていたとある日、その男性から期間限定の婚約者になってほしいと懇願される。 とりあえず婚約を受けてはみたものの、その相手は実はこの国の第二王子、アーロンだった。 「俺は欲しいと思ったら何としてでも絶対に手に入れる人間なんだ」

周囲からはぐうたら聖女と呼ばれていますがなぜか専属護衛騎士が溺愛してきます

鳥花風星
恋愛
聖女の力を酷使しすぎるせいで会議に寝坊でいつも遅れてしまう聖女エリシアは、貴族たちの間から「ぐうたら聖女」と呼ばれていた。 そんなエリシアを毎朝護衛騎士のゼインは優しく、だが微妙な距離感で起こしてくれる。今までは護衛騎士として適切な距離を保ってくれていたのに、なぜか最近やたらと距離が近く、まるでエリシアをからかっているかのようなゼインに、エリシアの心は揺れ動いて仕方がない。 そんなある日、エリシアはゼインに縁談が来ていること、ゼインが頑なにそれを拒否していることを知る。貴族たちに、ゼインが縁談を断るのは聖女の護衛騎士をしているからだと言われ、ゼインを解放してやれと言われてしまう。 ゼインに幸せになってほしいと願うエリシアは、ゼインを護衛騎士から解任しようとするが……。 「俺を手放そうとするなんて二度と思わせませんよ」 聖女への思いが激重すぎる護衛騎士と、そんな護衛騎士を本当はずっと好きだった聖女の、じれじれ両片思いのラブストーリー。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

処理中です...