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『めも』りでは測れない
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お疲れさまです。
毎日暑い日が続きますね。とはいえ、僕たち外回りの営業が無駄にエアコンの設定温度を下げるから、内勤の女性は身体が冷えてたまらないという話を耳にしました。営業一課や二課のフロアでは、そんなことが起きていないと良いのですが。
念入りにチェックして、温度を急激に下げる輩と風速を最大にしたがる輩はこちらで指導しておきました。おそらく数箇月後には、ダイエットに成功して生まれ変わる男性社員が複数人出てくると予想されます。楽しみにしておいてください。このフロアの某課長だってそのうちの一人です。
最近は外回りが終わってから、直帰せず、会社にとんぼ帰りするのが楽しみで仕方ありません。別に仕事中毒なわけではありませんよ。外回りに出かけている間に電話がかかってきていると、あなたが電話の内容を要約してデスクの上に置いていてくれるからです。きっちりとした性格がよくわかるあなたの字を読んでいると、仕事内容がすっきりと頭に入ってきます。
電話がかかってきた時間を確認してみればその多くは昼休み。僕の取引先は一般企業とは限りません。例えば役所に大学関係だってあります。だから、昼休に問い合わせをしてくる方が結構いらっしゃるんです。本当にありがとうございます。
同じ課の女性社員でさえ昼休みの電話番は避けたがるのに、別の課であるあなたがわざわざ僕宛の電話を取ってくれている。それがたまらなく嬉しいのです。まあ、「僕」なんて部分を強調して自惚れていては笑われてしまいますよね。きっとあなたは律儀だから電話番を引き受けているだけなのに。ところが男というのは、すぐにこんな風に自分の良いように解釈するんです。本当に可笑しいでしょう?
毎日きちんと仕事に向き合っているあなたが好きです。派手なところだけ、美味しいところだけやりたがる人は多いですが、あなたがややこしい上に、地味な仕事をやってくれているから、うちの会社は回っているのだと僕は知っています。
本当なら毎回直接お礼を言いたいところなのです。けれど、いちいち声をかけられるときっと困ってしまいますよね。あなたは優しい人だから、あからさまに嫌そうな顔をすることはないでしょうが。どうやったらあなたと話すチャンスが手に入るのでしょう。
僕が外回りやら出張やらに行くたびにお土産を買ってくるのは、あなたに渡したいからなんです。買ってきたお菓子をあなたが幸せそうに頬張っているのを見ると、こちらまで嬉しくなります。それに夏が近付いてくると、温かいココアで気を引くわけにはいかないですしね。お菓子で釣るなんてせこいやり方ですが、それ以外に方法が見当たりません。どうか許してください。このお菓子が、僕なりのラブレターなのです。
今日はあなたの好きなケーキ屋さんが、駅ナカで季節限定のマカロンを売っていました。三時のおやつに食べてくださいね。
フロアの共有スペースにではなく、あなたがよく使う給湯室にお菓子を置いて、「ご自由にどうぞ」と付箋をつけているのは、つまりそういう訳なんです。
<おみやげです。女性社員のみなさん、ご自由にどうぞ>
毎日暑い日が続きますね。とはいえ、僕たち外回りの営業が無駄にエアコンの設定温度を下げるから、内勤の女性は身体が冷えてたまらないという話を耳にしました。営業一課や二課のフロアでは、そんなことが起きていないと良いのですが。
念入りにチェックして、温度を急激に下げる輩と風速を最大にしたがる輩はこちらで指導しておきました。おそらく数箇月後には、ダイエットに成功して生まれ変わる男性社員が複数人出てくると予想されます。楽しみにしておいてください。このフロアの某課長だってそのうちの一人です。
最近は外回りが終わってから、直帰せず、会社にとんぼ帰りするのが楽しみで仕方ありません。別に仕事中毒なわけではありませんよ。外回りに出かけている間に電話がかかってきていると、あなたが電話の内容を要約してデスクの上に置いていてくれるからです。きっちりとした性格がよくわかるあなたの字を読んでいると、仕事内容がすっきりと頭に入ってきます。
電話がかかってきた時間を確認してみればその多くは昼休み。僕の取引先は一般企業とは限りません。例えば役所に大学関係だってあります。だから、昼休に問い合わせをしてくる方が結構いらっしゃるんです。本当にありがとうございます。
同じ課の女性社員でさえ昼休みの電話番は避けたがるのに、別の課であるあなたがわざわざ僕宛の電話を取ってくれている。それがたまらなく嬉しいのです。まあ、「僕」なんて部分を強調して自惚れていては笑われてしまいますよね。きっとあなたは律儀だから電話番を引き受けているだけなのに。ところが男というのは、すぐにこんな風に自分の良いように解釈するんです。本当に可笑しいでしょう?
毎日きちんと仕事に向き合っているあなたが好きです。派手なところだけ、美味しいところだけやりたがる人は多いですが、あなたがややこしい上に、地味な仕事をやってくれているから、うちの会社は回っているのだと僕は知っています。
本当なら毎回直接お礼を言いたいところなのです。けれど、いちいち声をかけられるときっと困ってしまいますよね。あなたは優しい人だから、あからさまに嫌そうな顔をすることはないでしょうが。どうやったらあなたと話すチャンスが手に入るのでしょう。
僕が外回りやら出張やらに行くたびにお土産を買ってくるのは、あなたに渡したいからなんです。買ってきたお菓子をあなたが幸せそうに頬張っているのを見ると、こちらまで嬉しくなります。それに夏が近付いてくると、温かいココアで気を引くわけにはいかないですしね。お菓子で釣るなんてせこいやり方ですが、それ以外に方法が見当たりません。どうか許してください。このお菓子が、僕なりのラブレターなのです。
今日はあなたの好きなケーキ屋さんが、駅ナカで季節限定のマカロンを売っていました。三時のおやつに食べてくださいね。
フロアの共有スペースにではなく、あなたがよく使う給湯室にお菓子を置いて、「ご自由にどうぞ」と付箋をつけているのは、つまりそういう訳なんです。
<おみやげです。女性社員のみなさん、ご自由にどうぞ>
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