異世界で勇者兼聖女なりました!……が、現在ドラゴンにストーカーされてます!?

嘉藤 静狗

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番外編

初めての魔獣戦の話 後編 ※前書き

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 ===*前書き*===*===*===
 皆さん、明けましておめでとうございます!
 今年も、よろしくお願いします!

 大晦日&元日、二日連続公開SP!その②
(注・前編に引き続き、年明けらしさは皆無です。やっぱり、シリアス?)
 ===*===*===*===*===


(注・第2章読了後推奨)



 グダグダと悩んでる間にも、『豚象セルドエレファンテ』は縦横無尽に暴れまわり、私はそれをちょちょいと避けていく。
 こんなとき、優柔不断な自分がイヤになるよ。
 まったく、もう。

「あー、何とか正常に治せないかなぁ……っ、と!」

 すれ違い様に足蹴をくらうとこだった、あぶね。……当たってもダメージになるかは、一旦置いておこうか。
 んー……《世界事典》には、《魔力狂化》を治す方法は載ってないね。なら、やっぱりムリっぽい。
 うぅ、なら戦うっきゃないか。あー、憂鬱。

「さぁって、と……覚悟、しようか」

 ……実は、五キロ圏内の街道にヒトが近づいてきてんだよね。おそらく行商団かな?人数とヒトの配置、あと動くスピード的にそうだと思う。
 万が一『豚象』が、そっちに興味持ったらマズい。大荷物持った集団が、このロケットみたいな魔獣に対抗できるとは思えないから。
 護衛はいるだろうけど、ヒトを守りながらコイツの相手は難しいだろうなぁ。

 だから、私が殺るしかないんだよ。
 だって、生き物は好きだけど……ヒトの命と天秤にかけたら、どうしてもヒトに比重が寄る。コレは私がヒトだからこその、エゴなんだ。

「っ、ふ───……」

 集中。
 決めるなら、一撃を、一瞬で。
 ムダに苦しませるのは、良くない。命に対しても、品質上でも。
 最も効率的な殺傷方法は──

[───顕現《風刃フウジン》]

 ──それは、頭を落とすこと。

 何故なら、首は太い血管が多い。頭を落として逆さに吊り上げれば、血抜きが楽だ。おまけに頭部には食べられる部位は少ない。つまり、頭を残すには旨味が少ないのだ。『豚象』には牙があって、それはギルドに持ち込めば金になるけど、それも首が繋がっている必要はないワケで。
 つまり……あぁ、もう何だ。何を言っても、全部言い訳っぽいな。
 でも、コレがわたしに出来る最善だったんだ。……他には、思いつかなかった。

「恨みはない。……でも、謝れないよ」

 私が殺したんだ。謝るのは、この《魔獣》に失礼だ。
 ……願わくば、次の生はより良いものでありますように。
 そう祈ることしか、出来ない。


 頭を落とす、と言えば。
 その昔、見世物のように大々的に行われていたギロチン処刑は、首と頭が離れてから、約三秒間は意識があるって聞いたことがある。理由は脳に血液が残るから、だったかな?……そのことを思い出したせいかな、切り落とされた『豚象』とほんの一瞬、目が合った気がした。
 動物らしい感情が分かりにくい黒目がちな双眸は、凪いでいて、そのくせ真っ直ぐにこっちを見てるように見えた。……それが少し、怖い。
 悪いとは思いつつ、ふっと目を逸らして、近くの木に体をぶら下げ、血抜きをする。この時、血が落ちる場所に穴を掘ることを忘れないのが重要だ。

(決して、ムダにはしないよ……)

 血が抜けるのを待つ間、辺りに飛び散った血や、戦闘跡─大抵は『豚象』が突進するときに抉れた地面─の始末を仕上げる。作業自体は、魔法を使えばすぐに終わった。……逆にキレイになりすぎて、少々怪しい気もする。が、仕方ない。

 待つこと約一時間、そろそろ血が抜けたかな?確認すると、頃合いかなぁと思う。もう血が滴る様子はないから。
 覚悟を決めて、木から『豚象』の体を下ろす。それから、両手を合わせて数秒、黙祷を捧げる。……個人的に、「いただきます」は大事だと思うの。

 それからスキル《解体》を使って、部位を的確に仕分けては、《異空間収納》へと仕舞っていった。
 正直、《異空間収納》内は時間が停止してる……と言うより、時間の概念がない。なので、一度仕舞えば永遠に同じ状態のまま保管できる。生肉は腐らないし、骨は劣化しない。ぶっちゃけ、血が抜けたらそのまま入れてしまってもいいぐらいだ。
 それでも、丸ごと入れると料理には使いづらいし、ギルドで全部売ったとしても、最終的に解体手数料が取られる。だから、自前で解体した方が手間はかかるが、安上がりなのだ。

 ……もちろん、前世日本じゃ生粋の都会っ子かつ平凡なOLだった私には、解体の知識なんぞ微塵もない。
 精々が、川魚を捌くか、加工済みの肉の筋きりか。それくらいだ。
 このスキル《解体》は、そんな私のためにイリオスが用意してくれたものだ。だって、綺麗に解体できた方がいっぱい美味しい部位を食べられるもんね。……それに食べ物じゃなくても、綺麗な方が市場価値は高いハズ。

 このスキルを使うと、触れている対象が自動的にバラけるのだ。そりゃもう、ほどけるみたいに、一瞬だ。
 ただ、ストッパーとして、ヒトと、あと生きている物には使えないように設定されている。……生きてる物に使えたら、即死魔法より怖いと思うよ。
 惨殺死体スプラッタ、待ったなしだもの。

「収納よし、後処理よし。……周囲、何もなし」

 ……うん。
 さてさて、準備は完了だ。目的地があるワケじゃないけど、もう出発しなくちゃ、ね。いつまでもグズグズしてらんないもの。

 ……でも、今日のことは一生忘れないつもりだ。
 初めて、自分の意思で生き物の命を刈り取ったのだから。

「さぁ───進もう、か」


 この世界の空は、今日もひどく青い。
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