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第1章 園生活編
第20話 緊張をほぐして
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【クライトside】
『汝よ……我が力を……獲れ……』
また、あの夢だ。でも今度は光を掴んでいる状態だ。
『汝よ……獲り……顕現させよ……!!!』
一握りの光が指に流れ込んできている。右手の人差し指にすうっと、一筋の乱れも無く溶け込んでいく。全てが溶け込んだ時、なんだか体の中が混ざったような感覚になる。それが妙に安心した。
「………んん、ん?うぁ、ゆーりあ?みんなも?」
眠っていたようだ。いや、僕が眠らせてとユーリアに頼んだんだった。それにしてもまた変な夢を見たなぁ。なんなんだろう、あの夢は。何か意味とかあるのかな?予知夢とかそういう系あるのかな?でも僕そう言うの一回も当たったことないんだよ………な
ドクンッ
心臓の鼓動音が鮮明に聞こえた。この感覚は………知っている。でも、でもなんで今なんだ………?分からない
「お、おはようクライト。お邪魔させてもらってるよ」
「ぁ、ぅん。い~よ。こんなせまいへやだけど、ゆっくりしてくれるなら」
よくこの空間に4人入ろうと思ったなぁ。別に減るものでもないから全然いる分には問題ないけれど。ユーリアとスタグリアンとキュールとマリスタンか、全員僕の大事な友達だ。
ドクンッ
またも、大きく心臓が拍を打つ。しかもなにか、何かおかしい。
本来であれば絶対に起こることのない現象が、今まさに起きようとしている。
「クライト君の寝顔可愛かったよ」
「えぇ?そ、そんなことな………んん、っ!?」
ドクンッッッ
一際大きな音が聞こえる。眠かった体は心臓が脈打つことで強制的に跳ね起こされた。魔力の奔流が、今まさに体全体を包み込んでいる。この感覚、間違いない。
「属性の発現………!!!!!」
「「「「えっ!?」」」」
この部屋にいる僕も含めた全員が驚いている。そりゃあそうだ。属性の発現というものは主に『負の感情があまりに昂った時』や、『善とされる行為を何度も何度も繰り返し、心からその行為に意味があると思っていた時』に起こるものであってこんな寝起きに起こるものではない。
魔力の奔流の本源を辿る。それは、あの日アクセサリーショップから貰った魔力を溜めておけると謳っていた指輪だった。毎日毎日、魔力を余していてももったいないからという理由で溜めていたらまさかこんなことになるなんて。
僕の目を介さずに、魔力が眩しい光となって脳に直接伝えられる。発現した属性は………〈謙譲〉だった。
「〈謙譲〉………え、〈謙譲〉!?」
おかしい。そう思っていた理由が、今分かった。本来〈傲慢〉と呼ばれる属性を持っている僕は、対になっている〈謙譲〉が発現することは絶対にない。はずだったのに、発現してしまった。多分、何も効能が無いと思い込んでいたこの指輪の効果で。
「え、な、何が起こったの!?」
「クライト、大丈夫か!?」
「クライト君!」
「クライト、息整えて」
4人が僕を心配してくれている。本当にありがたい。でも、でも今はそれどころではない。あまりにも、訳の分からないことが起こりすぎている。ゲームでも、こんなことは無かった。いわば、異常性の伴う属性の発現だ。
もしかしたらこの指輪は、もの凄い力を持っているのかもしれない。
「大丈夫だった?」
「心配したよ~!」
「あ、それと属性の発現おめでとう!」
「ほんとですよ!属性の発現ってこんな感じになるんですね、まだ経験したことないです~………」
「皆、ありがと。もう大丈夫だよ」
まだ整理できていないことは沢山ある。この能力についても、指輪の詳細も。でも、この能力を有効活用すれば………その時は絶大な力を手にすることが出来るはずだ。
「よし、結果発表聞きに行こ!」
「行こう!」
「すごいな、どうやったんだろうか………ブツブツブツブツ」
「マリスタン、ブツブツ言って無いで行くよ」
「やっぱクライト君は凄いなぁ~」
因みにMVPは僕達のチームじゃなくてクレジアントのチームだった。流石は真の主人公が率いるパーティーだなと思う。僕は安堵したと同時に、あれだけ『MVP取ったらどうしよ』とか言って取れなかったという事実に大分恥ずかしくなった。
あとからニーナ先生が来て
「お、MVP取り逃した2位のチーム。それでもAクラスの1位以外のチームに勝ってるし惜しかったな~!ま、次は1位とってMVPをBクラスのチームが奪おうぜ!」
と言って去って行った。『2位』というのが、なおさら悔しいような良かったような複雑な気持ちになった。他の3人はなんか慰めてくれた。優しすぎて涙出ちゃう。
☆★☆★☆
あの日から何ヶ月か経ち、〈謙譲〉の使い方が分かってきた。まずそもそも
〈謙譲〉…常時ダメージが軽減される。
という大分ありがたい効果を持っている上に、特殊効果は………まぁまた今度見せたいなと思う。だって、ただ効果だけを言うのも味気ないだろ?どうせなら、実戦で特殊効果は見せたい。
それと課外授業も2回あった。順位は最初含めて3回連続で2位だった。1位も3回連続でクレジアントチームだった。なんでもそこそこ高ランクの依頼を7個程度も達成しているらしい。流石、主人公の器なだけある。
僕以外の3人はめっちゃ悔しそうだった。1回目は僕を慰めてくれたから今度は僕が慰めてあげた。確かに自分たちだって頑張っているのに、毎回同じチームに負けているのは悔しいに決まっている。名前を公表されたくない僕からしたら2位というのは嬉しい順位なんだけどね。それでも、他の皆は
「今度の大会で絶対あのチームに勝つ!」
って意気込んでいた。
おっと、そうそう。今度大会があるんだ。第1回学園戦技祭っていう名前で、今年から始められる大会だ。僕の入った年にこんな大会があるなんてまるでゲームのご都合展開みたいだなと思いながら、そういえば本当にここはゲームの世界でクレジアントという本来の主人公へのご都合展開なんだという事を思い出す。
因みにだけど学園戦技祭が終わったら長期休暇となる。まぁ簡単に言うならば夏休みみたいなものだ。
それで学園戦技祭っていうのは学園の1年生~3年生全員が相まみえて戦う大会で、全校生徒の1000人が参加するらしい。まぁ1000人も戦っていたら日が暮れてしまうし、Fクラスの人とか、高いクラスでも戦闘が得意ではない子とか、そんな人たちもいるから辞退もできる。そういう人達はスタッフだったり戦績レポートの作成だったり、新魔法の記録だったり………まぁ色々とするみたい。
そして今回の大会で禁止されている行為は〈属性〉の特殊効果使用禁止というルールだ。なんでも
『〈属性〉の特殊効果は力が強くて、基本的には〈属性〉を何個持っているかで勝負がついてしまう。そんな大会は面白くないし、なにより本質的じゃない』
という事らしい。それは実際にその通りだと思う。魔物相手だと〈属性〉が通りにくかったり副作用もあるから下手に使えないけど、僕も対人戦闘だったら基本的に〈属性〉を使った時点でほぼほぼ勝てる。それを技術で上回って来る猛者だっているけど。このルールで個人戦とチーム戦が行われるみたいだ。
そして、明日から第1回学園戦技祭が始まろうとしている。
「前遊んだ時より王都が活発だね!」
「うん、確かに。学園戦技祭って王国からしてみれば将来の最前線に立つ人たちの戦いなわけだから、そりゃあ興奮するよね」
今日はユーリアが明日の学園戦技祭で不安だっていうから一緒に王都へ遊びに来ていた。効果的な不安の解消の仕方は分からないけど、一緒に遊んであげることくらいは僕にだってできる。
「ねえ!あそこのお店、学園戦技祭限定饅頭だって!」
「えぇ?何それ」
漢字が多くて一瞬分かんなかったけど、あれだ。よくお祭りにあるやつ。やっぱりそういう所は異世界でも同じなんだなぁ。でもこういうのは、活気づけるのには丁度いいかもね。ユーリアが欲しそうだったので買ってあげた。
僕はBクラスの下の方の順位だからよくBクラスに上がりたい人の恰好の的にされる。そういう人達を返り討ちにして、ついでにお金も請求しているとだんだん溜まってくるものだ。だから、お金には結構余裕がある。
「どう?」
「美味しい~!肉まんだね!」
「あぁ、饅頭っていう割に大きいと思った。じゃあ僕も………んん、結構美味しい」
饅頭と言えば甘いものと想像してたけど、肉まんだったか。大きいとは思ったんだけど、まんの部分が黒かったから甘いと勝手に思ってただけだった。でも、普通に美味しかったからいいや。
「武器屋にも、防具屋にも人が沢山いるね」
「ほとんど学園生だね」
「明日の優勝者を予想する賭けなんかもされてるらしいよ」
「え~!そうなの?私はクライト君が優勝すると思う!クライト君は誰だと思う?」
「いやいや、そんなこと無いよ~。ユーリアだって、優勝できるくらいのポテンシャルあるでしょ」
お世辞にはお世辞で返す。といっても、ユーリアが優勝するなんて未来はありえなくない。ユーリアは魔法の才能がありすぎて兄弟姉妹から蔑まれてきたっていう設定だったし、今この世界においてもそうなっているだろう。
今回は〈属性〉を使ってはいけない大会だから、ユーリアが勝てる可能性は大いにありうるのだ。ただ、この大会は十中八九クレジアントが勝つだろう。だって、それが世界の意志なんだから。
「明日、やっぱり緊張する?」
「ん~、もう大丈夫!クライト君と一緒に居たら安心して来た!」
「そっか、それなら良かった」
「クライト君は大丈夫?」
「………うん、僕は大丈夫だよ」
………嘘だ。この大会は本来、本当のクライトがクレジアントに恨みを持つ大会。つまり、噛ませ犬ルートに進む分岐点とも呼べるような場所だ。僕がクレジアントの事を恨むなんてことは絶対に無いし、そもそも死ぬかもしれない相手に会うのすら怖いに決まっている。
でも、原作だったら今回の大会でクライトとクレジアントはあたる。ばっちり、トーナメントで戦う事になってしまうのだ。でも、今日の為に沢山鍛えてきた。死ぬことは無い。ただ、どれだけクレジアントの興味を僕に向けさせないか。それだけが今回の大会で意識することだ。
「他の人にだったら、まぁ結構戦えると思うしね」
「凄いな~。私全然自信無いのに」
「大丈夫、魔法をしっかり冷静に行使すればユーリアはどんな相手でも勝てるよ」
「え、そ、そうかなぁ?えへへ………」
可愛い。ヨシヨシしてあげたい。
おっといけない。危うくユーリアの頭に手が出るところだった。
ユーリアを見ていたら、クレジアントの事もなんかいける気がしてきた。いや、前言撤回。いける気はしてないけど、なるべく上手く立ち回れるように頑張りたいと思う。僕は死ぬためにこの世界に転生したんじゃないから。
「それじゃあ帰ろ!」
「そうだね」
ユーリアの緊張をほぐすつもりが僕の緊張までほぐれた。今日ユーリアと一緒に遊んだのは正解だったかもしれない。それに、緊張云々関係なく楽しかったしね!
「明日から、お互い頑張ろう!」
「えいえいおー!」
明日はまず団体戦。今回出る人は課外授業のチームで出なさいってニーナ先生に言われてあるから、明日はスタグリアンとマリスタンとキュールと僕で戦う事になる。クレジアント達のチームと戦う事になったら………まぁその時考えよう。
『汝よ……我が力を……獲れ……』
また、あの夢だ。でも今度は光を掴んでいる状態だ。
『汝よ……獲り……顕現させよ……!!!』
一握りの光が指に流れ込んできている。右手の人差し指にすうっと、一筋の乱れも無く溶け込んでいく。全てが溶け込んだ時、なんだか体の中が混ざったような感覚になる。それが妙に安心した。
「………んん、ん?うぁ、ゆーりあ?みんなも?」
眠っていたようだ。いや、僕が眠らせてとユーリアに頼んだんだった。それにしてもまた変な夢を見たなぁ。なんなんだろう、あの夢は。何か意味とかあるのかな?予知夢とかそういう系あるのかな?でも僕そう言うの一回も当たったことないんだよ………な
ドクンッ
心臓の鼓動音が鮮明に聞こえた。この感覚は………知っている。でも、でもなんで今なんだ………?分からない
「お、おはようクライト。お邪魔させてもらってるよ」
「ぁ、ぅん。い~よ。こんなせまいへやだけど、ゆっくりしてくれるなら」
よくこの空間に4人入ろうと思ったなぁ。別に減るものでもないから全然いる分には問題ないけれど。ユーリアとスタグリアンとキュールとマリスタンか、全員僕の大事な友達だ。
ドクンッ
またも、大きく心臓が拍を打つ。しかもなにか、何かおかしい。
本来であれば絶対に起こることのない現象が、今まさに起きようとしている。
「クライト君の寝顔可愛かったよ」
「えぇ?そ、そんなことな………んん、っ!?」
ドクンッッッ
一際大きな音が聞こえる。眠かった体は心臓が脈打つことで強制的に跳ね起こされた。魔力の奔流が、今まさに体全体を包み込んでいる。この感覚、間違いない。
「属性の発現………!!!!!」
「「「「えっ!?」」」」
この部屋にいる僕も含めた全員が驚いている。そりゃあそうだ。属性の発現というものは主に『負の感情があまりに昂った時』や、『善とされる行為を何度も何度も繰り返し、心からその行為に意味があると思っていた時』に起こるものであってこんな寝起きに起こるものではない。
魔力の奔流の本源を辿る。それは、あの日アクセサリーショップから貰った魔力を溜めておけると謳っていた指輪だった。毎日毎日、魔力を余していてももったいないからという理由で溜めていたらまさかこんなことになるなんて。
僕の目を介さずに、魔力が眩しい光となって脳に直接伝えられる。発現した属性は………〈謙譲〉だった。
「〈謙譲〉………え、〈謙譲〉!?」
おかしい。そう思っていた理由が、今分かった。本来〈傲慢〉と呼ばれる属性を持っている僕は、対になっている〈謙譲〉が発現することは絶対にない。はずだったのに、発現してしまった。多分、何も効能が無いと思い込んでいたこの指輪の効果で。
「え、な、何が起こったの!?」
「クライト、大丈夫か!?」
「クライト君!」
「クライト、息整えて」
4人が僕を心配してくれている。本当にありがたい。でも、でも今はそれどころではない。あまりにも、訳の分からないことが起こりすぎている。ゲームでも、こんなことは無かった。いわば、異常性の伴う属性の発現だ。
もしかしたらこの指輪は、もの凄い力を持っているのかもしれない。
「大丈夫だった?」
「心配したよ~!」
「あ、それと属性の発現おめでとう!」
「ほんとですよ!属性の発現ってこんな感じになるんですね、まだ経験したことないです~………」
「皆、ありがと。もう大丈夫だよ」
まだ整理できていないことは沢山ある。この能力についても、指輪の詳細も。でも、この能力を有効活用すれば………その時は絶大な力を手にすることが出来るはずだ。
「よし、結果発表聞きに行こ!」
「行こう!」
「すごいな、どうやったんだろうか………ブツブツブツブツ」
「マリスタン、ブツブツ言って無いで行くよ」
「やっぱクライト君は凄いなぁ~」
因みにMVPは僕達のチームじゃなくてクレジアントのチームだった。流石は真の主人公が率いるパーティーだなと思う。僕は安堵したと同時に、あれだけ『MVP取ったらどうしよ』とか言って取れなかったという事実に大分恥ずかしくなった。
あとからニーナ先生が来て
「お、MVP取り逃した2位のチーム。それでもAクラスの1位以外のチームに勝ってるし惜しかったな~!ま、次は1位とってMVPをBクラスのチームが奪おうぜ!」
と言って去って行った。『2位』というのが、なおさら悔しいような良かったような複雑な気持ちになった。他の3人はなんか慰めてくれた。優しすぎて涙出ちゃう。
☆★☆★☆
あの日から何ヶ月か経ち、〈謙譲〉の使い方が分かってきた。まずそもそも
〈謙譲〉…常時ダメージが軽減される。
という大分ありがたい効果を持っている上に、特殊効果は………まぁまた今度見せたいなと思う。だって、ただ効果だけを言うのも味気ないだろ?どうせなら、実戦で特殊効果は見せたい。
それと課外授業も2回あった。順位は最初含めて3回連続で2位だった。1位も3回連続でクレジアントチームだった。なんでもそこそこ高ランクの依頼を7個程度も達成しているらしい。流石、主人公の器なだけある。
僕以外の3人はめっちゃ悔しそうだった。1回目は僕を慰めてくれたから今度は僕が慰めてあげた。確かに自分たちだって頑張っているのに、毎回同じチームに負けているのは悔しいに決まっている。名前を公表されたくない僕からしたら2位というのは嬉しい順位なんだけどね。それでも、他の皆は
「今度の大会で絶対あのチームに勝つ!」
って意気込んでいた。
おっと、そうそう。今度大会があるんだ。第1回学園戦技祭っていう名前で、今年から始められる大会だ。僕の入った年にこんな大会があるなんてまるでゲームのご都合展開みたいだなと思いながら、そういえば本当にここはゲームの世界でクレジアントという本来の主人公へのご都合展開なんだという事を思い出す。
因みにだけど学園戦技祭が終わったら長期休暇となる。まぁ簡単に言うならば夏休みみたいなものだ。
それで学園戦技祭っていうのは学園の1年生~3年生全員が相まみえて戦う大会で、全校生徒の1000人が参加するらしい。まぁ1000人も戦っていたら日が暮れてしまうし、Fクラスの人とか、高いクラスでも戦闘が得意ではない子とか、そんな人たちもいるから辞退もできる。そういう人達はスタッフだったり戦績レポートの作成だったり、新魔法の記録だったり………まぁ色々とするみたい。
そして今回の大会で禁止されている行為は〈属性〉の特殊効果使用禁止というルールだ。なんでも
『〈属性〉の特殊効果は力が強くて、基本的には〈属性〉を何個持っているかで勝負がついてしまう。そんな大会は面白くないし、なにより本質的じゃない』
という事らしい。それは実際にその通りだと思う。魔物相手だと〈属性〉が通りにくかったり副作用もあるから下手に使えないけど、僕も対人戦闘だったら基本的に〈属性〉を使った時点でほぼほぼ勝てる。それを技術で上回って来る猛者だっているけど。このルールで個人戦とチーム戦が行われるみたいだ。
そして、明日から第1回学園戦技祭が始まろうとしている。
「前遊んだ時より王都が活発だね!」
「うん、確かに。学園戦技祭って王国からしてみれば将来の最前線に立つ人たちの戦いなわけだから、そりゃあ興奮するよね」
今日はユーリアが明日の学園戦技祭で不安だっていうから一緒に王都へ遊びに来ていた。効果的な不安の解消の仕方は分からないけど、一緒に遊んであげることくらいは僕にだってできる。
「ねえ!あそこのお店、学園戦技祭限定饅頭だって!」
「えぇ?何それ」
漢字が多くて一瞬分かんなかったけど、あれだ。よくお祭りにあるやつ。やっぱりそういう所は異世界でも同じなんだなぁ。でもこういうのは、活気づけるのには丁度いいかもね。ユーリアが欲しそうだったので買ってあげた。
僕はBクラスの下の方の順位だからよくBクラスに上がりたい人の恰好の的にされる。そういう人達を返り討ちにして、ついでにお金も請求しているとだんだん溜まってくるものだ。だから、お金には結構余裕がある。
「どう?」
「美味しい~!肉まんだね!」
「あぁ、饅頭っていう割に大きいと思った。じゃあ僕も………んん、結構美味しい」
饅頭と言えば甘いものと想像してたけど、肉まんだったか。大きいとは思ったんだけど、まんの部分が黒かったから甘いと勝手に思ってただけだった。でも、普通に美味しかったからいいや。
「武器屋にも、防具屋にも人が沢山いるね」
「ほとんど学園生だね」
「明日の優勝者を予想する賭けなんかもされてるらしいよ」
「え~!そうなの?私はクライト君が優勝すると思う!クライト君は誰だと思う?」
「いやいや、そんなこと無いよ~。ユーリアだって、優勝できるくらいのポテンシャルあるでしょ」
お世辞にはお世辞で返す。といっても、ユーリアが優勝するなんて未来はありえなくない。ユーリアは魔法の才能がありすぎて兄弟姉妹から蔑まれてきたっていう設定だったし、今この世界においてもそうなっているだろう。
今回は〈属性〉を使ってはいけない大会だから、ユーリアが勝てる可能性は大いにありうるのだ。ただ、この大会は十中八九クレジアントが勝つだろう。だって、それが世界の意志なんだから。
「明日、やっぱり緊張する?」
「ん~、もう大丈夫!クライト君と一緒に居たら安心して来た!」
「そっか、それなら良かった」
「クライト君は大丈夫?」
「………うん、僕は大丈夫だよ」
………嘘だ。この大会は本来、本当のクライトがクレジアントに恨みを持つ大会。つまり、噛ませ犬ルートに進む分岐点とも呼べるような場所だ。僕がクレジアントの事を恨むなんてことは絶対に無いし、そもそも死ぬかもしれない相手に会うのすら怖いに決まっている。
でも、原作だったら今回の大会でクライトとクレジアントはあたる。ばっちり、トーナメントで戦う事になってしまうのだ。でも、今日の為に沢山鍛えてきた。死ぬことは無い。ただ、どれだけクレジアントの興味を僕に向けさせないか。それだけが今回の大会で意識することだ。
「他の人にだったら、まぁ結構戦えると思うしね」
「凄いな~。私全然自信無いのに」
「大丈夫、魔法をしっかり冷静に行使すればユーリアはどんな相手でも勝てるよ」
「え、そ、そうかなぁ?えへへ………」
可愛い。ヨシヨシしてあげたい。
おっといけない。危うくユーリアの頭に手が出るところだった。
ユーリアを見ていたら、クレジアントの事もなんかいける気がしてきた。いや、前言撤回。いける気はしてないけど、なるべく上手く立ち回れるように頑張りたいと思う。僕は死ぬためにこの世界に転生したんじゃないから。
「それじゃあ帰ろ!」
「そうだね」
ユーリアの緊張をほぐすつもりが僕の緊張までほぐれた。今日ユーリアと一緒に遊んだのは正解だったかもしれない。それに、緊張云々関係なく楽しかったしね!
「明日から、お互い頑張ろう!」
「えいえいおー!」
明日はまず団体戦。今回出る人は課外授業のチームで出なさいってニーナ先生に言われてあるから、明日はスタグリアンとマリスタンとキュールと僕で戦う事になる。クレジアント達のチームと戦う事になったら………まぁその時考えよう。
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