28 / 107
第2章 戦技祭編
第26話 2日目、開幕
しおりを挟む
「サァァァァァアアアアァアアア!!!!! 第一回学園戦技祭個人戦!!!!! 遂にやってまいりました!!! 実況は昨日に引き続きわたくしスティーブンが担当させていただきます!!! どうぞよろしくお願いしまぁぁああああす!!!!!」
『うォオオオおおおおおおお!!!!!』
学園戦技祭の二日目、個人戦部門が始まった。個人戦はチーム戦に比べて時間がかかるけれど、チーム戦で戦っていたバッファーとかヒーラーは一人で戦わないから、試合終了予定時刻は一応昨日と同じくらいになっている。
「いや~楽しみだな!!!」
「スタグリアン、やけに気合いが入っているな」
「当然だ!今日は因縁の対決………絶対勝つぞ!」
「頑張って下さい!マリスタンもクライトも頑張って!」
「ありがとう」
そして今日は………クレジアント、君と僕との因縁の対決だ。と言っても、因縁なのは僕が勝手に思ってるだけで戦闘好きなクレジアントからしたら感情面は『手応えある相手と戦えるの楽しみだな』としか思ってないだろうけど。
「昨日はま・さ・か・の!!!!! 1年生のクライトチームが3年生も含めた数々のチームを連携で壊していったり、クライト選手が魔人を秒殺、というかコンマ秒殺したりと色々ありすぎました!!!!! 今日の個人戦はどうなるのでしょうかぁぁぁ!!! わたくしスティーブン!!! 期待で胸いっぱいであります!!!!!」
『俺らもだァァアアアアア!!!!!』
「観客の皆さんも良いですねぇぇええええ!!!」
スティーブンさんの喉はもう完全に治っている。この世界には回復魔法というものがあるわけで、多分損傷した喉を回復したのだろう。観客の人達も昨日に増して大きい声で合いの手を入れてくれている。
「女性の皆さんも恥ずかしがらず大声を上げて声援を送ってください!!! では練習しますか、わたくしが『スティーブンカッコいいー!』と言うので、リピートアフターミーしてください!!! いきますよ………スティーブンかっこいいー!」
『強制的に褒めさせるなぁあああ!!!』
「おお!!! 女性の皆さんの声も男性の皆さんの声も聞こえました!!! ありがとうございます!!!!! さて、褒めてくれなかったのは寂しいですが!!! 試合を始めましょうかね!!!」
相変わらず、スティーブンさんは愛されているキャラだなぁ。さて、そろそろ僕も下に行こうかな。どういう訳か、昨日に続いてまた初戦からだ。
「じゃあ行ってくるよ」
「頑張れ!応援してる!!!」
「まぁどうせ負けないと思うが、勝ち進んだら私とまた勝負しよう」
「クライト、がんばってください!」
皆が応援してくれる。その中に、ユーリアの影は居なかった。なんか、『なんでユーリアがここにいるんだ!』って言ってはいたけど、いざ居ないとちょっと寂しいな。まぁ試合終わったら探してみるか。
☆★☆★☆
「さてさてさてさてェェエエエエエ!!!!! それでは早速、第1試合目突入していきましょう!!!!! 初戦を飾るのはこの選手!!! パルナ選手とクライト選手だぁぁァァアアア!!!!!」
『クライトォォォオオオ!!!!! 人に向けていい魔法撃てよぉおお!!!』
昨日に引き続いてそれ言わないでほしい。あれができたのは『絶対死なない』っていう条件下の下、誰にも攻撃されずに魔法陣と詠唱を完璧に出来た時だから!魔力消費も激しいし、そんな毎回ポンポンと打てる魔法じゃないんだよ………
「クライト選手は昨日の団体戦優勝チームのリーダー!!! そして、魔人をコンマ秒殺した男!!! 1年生であるにも関わらず、今日一番の期待の新星です!!! 対する2年生のパルナ選手は自身の持ち味である美しい剣術でクライト選手を翻弄できるか!!! そこが試合の見どころとなって来そうです!!!」
「よろしく」
「あぁ、よろしく。クライト君」
僕のグータッチを返してくれる。こんな優しいなら昨日は見なかった人だ。別決闘場で戦っていたのかな、まだ相手の実力は未知数だけど………この先にクレジアントがそびえたっているんだ。こんなところで負けられない。
「それでは、試合開始ッ!!!」
僕は動かない。パルナさんの動きを見極める。
「君、突っ立ってたら私が首狩るよ?………っ、やっぱり強いね」
「先輩も、細身なのに結構力強いんですね」
「君の所のマリスタンちゃんと同じさ。私は大剣じゃなくて長剣使うってだけだよ」
パルナさんが居合切りにも近い剣筋で一気に肉薄してきた。僕の剣術は独学だから、こういう完成された剣筋を見るとやっぱり綺麗だなと思う。どこの流派の剣かは知らないけれど、隙が少なくてなかなか完成された剣技だと思う。
こういう綺麗な剣筋を学んでおくことも、今後の実戦に役立つからまだ倒さない。じっくりと、技を全部使い切ってもらう。それにしても、剣筋がやっぱり綺麗だ。なんというか、舞踊を見ているような感覚になる。実際は僕と剣を交えている戦な訳だけど。
「剣筋、綺麗ですね」
「そういう君は反撃しないのか」
「お望みなら」
「………へぇ、いつでも倒せるって訳かな?」
「いえ、そうは言って無いです」
実際、これがどういう流派なのか全くわからない以上驚くほど受け流されたり超絶素早いカウンターしてくるかもしれないから、別にいつでも倒せると踏んでいるわけではない。ただ僕は実戦でちょっと勉強してただけだ。でも
「そろそろ反撃しますね」
パルナさんの剣術は大体理解できた。この試合が終わったら少し練習でもしよう。そう思いながら、反撃に出る。
「その剣は………なんだ?」
「ん、この剣ですか?この剣は丁度昨日貰った………」
「違う、君の剣筋だ。全く見たことが無い」
「あぁなるほど」
そりゃあそうだ。だって、僕の剣術は僕しか知らないものだからね。でも、未熟ではないと思う。だって、10年以上練習してきたものだからね。
「独学ですよ」
「どっ、独学!?だったら何で………こんなに完成された剣なんだ!?」
「まあ、努力ですかね。じゃあ、そろそろさよならです」
「っ」
僕は跳んだ。空中で小刀を取り出して投げる。それを防ぐために剣を上方向に上げた瞬間、無防備になった頭に剣の腹を殴りつける。死角からの殴打にパルナさんは耐え切れず、倒れこんだ。どうやら気絶したらしい。
「勝者クライト選手ゥゥゥゥぅウウウウウ!!!!! 昨日は魔法で魅せてくれたが今日は剣術で魅せるというのか!!!??? 強すぎるぞォォォオオオ!!!」
『すげぇぇえええええええ!!!!!』
お、僕の剣技は観客から見てウケたみたい。さて、それじゃあ戻ってパルナさんが使っていた剣術でも練習しようかな~………あ、違う。まずはユーリアを探さないと、ユーリアは個人戦でも出るし、きっとどこかにはいるはず………
☆★☆★☆
少し探していると、ユーリアが見つかった。
「あ、ユーリア!!!昨日から見かけなかったけど、どこいたの?」
「クライト君!昨日ぶりだね!」
特に変わった様子はない。単純に会えなかっただけかな。
「昨日、夜ご飯ユーリアも一緒にどうかな?って思ったんだけど………どこ居たの?」
「あ、えっと~。まぁ疲れちゃって、寮帰って寝てたよ」
「そっか、じゃあ今日は一緒にご飯食べよ!昨日貰ったお金僕には使いきれないからさ、僕が奢るよ」
「そ、そんな………悪いよ」
「大丈夫!悪くないよ!」
事実、僕だけじゃ使い切れないお金を使ってもらうのは全く悪くない。むしろありがたいくらいだ。こんなにお金あっても………ほんとに管理とか困るし。
「や、やっぱり駄目だよ………クライト君のだもん」
「ユーリア、気にしないで?むしろ使って欲しいくらいだから!」
「でも………私、クライト君の事ほんとに好き………だから、だからこそお金とか貰ったら彼女として良くない気がするの………」
「………?え、なんで?」
ん~、なんか。言おうとすることが分からないわけでも無いけど、分かるわけでも無い。というかそうだった、なんで彼女になったのかも聞かないと。
「私が、お金でクライト君の事を好きって言ってるって思われたくないから………ほんとに好きだから、私はクライト君にお金を払ってもらうはダメって思うの」
「なるほど………」
分からん。分かんないけど、取り敢えず僕が恥ずかしくなった。そんなに面と向かって好き好きって言わないで欲しい僕が恥ずかしくなってくるから………
「ま、まぁ僕はユーリアの事をそんな風に思った事無いから大丈夫。それにこれからもそんな風に思う事は無いから。そこは安心して」
「ほ、ほんと?」
「それと………なんか、僕達ってカップル………なんだよね?えっと………な、なんで、カップルになったんだっけ?」
「え?それは………」
入学式翌日に僕が、付き合って欲しいというユーリアのお願いを受諾したらしい。因みにだけど、全くそんな記憶はないしそもそも付き合って欲しいとすら言われたか怪しい。
でも………まぁ、別にいいか。ユーリアは可愛いし、優しいし、それに伯爵家でお金は沢山あるはずなのに、わざわざ僕に悪く思われないように奢られたくなかったみたいだし。そんなに僕の事を想ってくれている人の気持ちを僕の勘違いで無下にするのは、外道というものだろう。
「という訳で、今日は僕に奢らせてね!僕はユーリアの事を変な目で見ることは絶対ないから!」
「うん………ありがとうクライト君。じゃあ私そろそろ試合だから行ってくるね?」
「行ってらっしゃい!!!」
ユーリアを送り出す。色々とすっきりした、まぁ付き合った理由はあんまり覚えてなかったけど。取り敢えず、皆の所に戻ろう。
☆★☆★☆
クライトがユーリアとの間に抱えていた二つの疑問を解決したその一方で………
「多分今クライトユーリアの所に行ってるよ」
「あー確かにそうかもな、クライトが気にかけてる人といったら………ユーリア、クレジアント、それから私達だもんな。クライトの事が好きな女子はよく見かけるが、クライト自身はあんまり気が付いてないようだしな」
「ふぇぇ………ユ、ユーリアの所いるんですか?うぅ………」
3人は恋バナをしていた。キュールがクライトのことが好きだからこそ、クライトの居ないときにしかできない恋バナをするのは自然な流れだろう。
「キュール、そろそろクライトに言わないと、クライト絶対気が付かないよ。だって、わりとキュールふとしたところではアタックしてるし」
「そうだな。誰かに取られる前に直接告白した方が良いんじゃないか?」
「で、でもぉ、ユーリアもクライトの事好きだしさぁ………しかも前はパートナーって言ってたけどもう付き合ってるっぽいし………」
流石恋する乙女である。そういう所は見逃さないようだ。ただ、もともとクライトとユーリアは付き合っているのだが。
「まぁまぁ、もし付き合ってたとしてさ。どうせ貴族の大半は一夫多妻制にすると思うし、大丈夫だと思うよ」
「そうだな。クライトも優しいし、キュールだったら断らないと思うぞ」
「うぅ、そうですか?じ、じゃあ………」
「「お!!!」」
「まぁ、また今度の機会に………」
「「うおおおい!!!」」
スタグリアンとマリスタンの完全に息のあったツッコミがキュールに飛ぶ。
「スタグリアンとマリスタンだって夫婦みたいなものなのに認めないじゃないですかぁ………それと同じですよぅ」
「「だって夫婦みたいなものじゃないからね」」
「じゃあ、夫婦ですか?」
「「何がだ!」」
確かに、第三者から見たらどっからどう見ても夫婦漫才にしかみえない。
★★★★★
【クレジアントside】
「クライト、君って奴は本当に凄いな」
正直俺はクライトの事をまだ過小評価していた。強いとは思ったものの、それは魔法面での話。剣術でも凄いとは思っていなかった。
「あの面白い剣筋も興味深いし………いやぁ、楽しみだな」
ようやく1対1で戦えるのか。それがたまらなく嬉しい。普段平民である俺が見られている目は全て対等に見てくれていなかった。俺がそこそこ強いからか分からないけれど、女子は大体上目遣い。俺が恐らく平民だからだろうけど男貴族は完全に下に見る。どっちの目も嫌いだった。
でもそんな中でクライトは俺を真っ直ぐ見つめ返してくれた。精一杯誠実にという気持ちで戦ってくれた。実際にそう思っていたかは知らない、でも俺の本質まで見抜いてくれている気がした。
「だからクライト、全力で楽しもう」
いかにも主人公らしい笑顔を浮かべた。
『うォオオオおおおおおおお!!!!!』
学園戦技祭の二日目、個人戦部門が始まった。個人戦はチーム戦に比べて時間がかかるけれど、チーム戦で戦っていたバッファーとかヒーラーは一人で戦わないから、試合終了予定時刻は一応昨日と同じくらいになっている。
「いや~楽しみだな!!!」
「スタグリアン、やけに気合いが入っているな」
「当然だ!今日は因縁の対決………絶対勝つぞ!」
「頑張って下さい!マリスタンもクライトも頑張って!」
「ありがとう」
そして今日は………クレジアント、君と僕との因縁の対決だ。と言っても、因縁なのは僕が勝手に思ってるだけで戦闘好きなクレジアントからしたら感情面は『手応えある相手と戦えるの楽しみだな』としか思ってないだろうけど。
「昨日はま・さ・か・の!!!!! 1年生のクライトチームが3年生も含めた数々のチームを連携で壊していったり、クライト選手が魔人を秒殺、というかコンマ秒殺したりと色々ありすぎました!!!!! 今日の個人戦はどうなるのでしょうかぁぁぁ!!! わたくしスティーブン!!! 期待で胸いっぱいであります!!!!!」
『俺らもだァァアアアアア!!!!!』
「観客の皆さんも良いですねぇぇええええ!!!」
スティーブンさんの喉はもう完全に治っている。この世界には回復魔法というものがあるわけで、多分損傷した喉を回復したのだろう。観客の人達も昨日に増して大きい声で合いの手を入れてくれている。
「女性の皆さんも恥ずかしがらず大声を上げて声援を送ってください!!! では練習しますか、わたくしが『スティーブンカッコいいー!』と言うので、リピートアフターミーしてください!!! いきますよ………スティーブンかっこいいー!」
『強制的に褒めさせるなぁあああ!!!』
「おお!!! 女性の皆さんの声も男性の皆さんの声も聞こえました!!! ありがとうございます!!!!! さて、褒めてくれなかったのは寂しいですが!!! 試合を始めましょうかね!!!」
相変わらず、スティーブンさんは愛されているキャラだなぁ。さて、そろそろ僕も下に行こうかな。どういう訳か、昨日に続いてまた初戦からだ。
「じゃあ行ってくるよ」
「頑張れ!応援してる!!!」
「まぁどうせ負けないと思うが、勝ち進んだら私とまた勝負しよう」
「クライト、がんばってください!」
皆が応援してくれる。その中に、ユーリアの影は居なかった。なんか、『なんでユーリアがここにいるんだ!』って言ってはいたけど、いざ居ないとちょっと寂しいな。まぁ試合終わったら探してみるか。
☆★☆★☆
「さてさてさてさてェェエエエエエ!!!!! それでは早速、第1試合目突入していきましょう!!!!! 初戦を飾るのはこの選手!!! パルナ選手とクライト選手だぁぁァァアアア!!!!!」
『クライトォォォオオオ!!!!! 人に向けていい魔法撃てよぉおお!!!』
昨日に引き続いてそれ言わないでほしい。あれができたのは『絶対死なない』っていう条件下の下、誰にも攻撃されずに魔法陣と詠唱を完璧に出来た時だから!魔力消費も激しいし、そんな毎回ポンポンと打てる魔法じゃないんだよ………
「クライト選手は昨日の団体戦優勝チームのリーダー!!! そして、魔人をコンマ秒殺した男!!! 1年生であるにも関わらず、今日一番の期待の新星です!!! 対する2年生のパルナ選手は自身の持ち味である美しい剣術でクライト選手を翻弄できるか!!! そこが試合の見どころとなって来そうです!!!」
「よろしく」
「あぁ、よろしく。クライト君」
僕のグータッチを返してくれる。こんな優しいなら昨日は見なかった人だ。別決闘場で戦っていたのかな、まだ相手の実力は未知数だけど………この先にクレジアントがそびえたっているんだ。こんなところで負けられない。
「それでは、試合開始ッ!!!」
僕は動かない。パルナさんの動きを見極める。
「君、突っ立ってたら私が首狩るよ?………っ、やっぱり強いね」
「先輩も、細身なのに結構力強いんですね」
「君の所のマリスタンちゃんと同じさ。私は大剣じゃなくて長剣使うってだけだよ」
パルナさんが居合切りにも近い剣筋で一気に肉薄してきた。僕の剣術は独学だから、こういう完成された剣筋を見るとやっぱり綺麗だなと思う。どこの流派の剣かは知らないけれど、隙が少なくてなかなか完成された剣技だと思う。
こういう綺麗な剣筋を学んでおくことも、今後の実戦に役立つからまだ倒さない。じっくりと、技を全部使い切ってもらう。それにしても、剣筋がやっぱり綺麗だ。なんというか、舞踊を見ているような感覚になる。実際は僕と剣を交えている戦な訳だけど。
「剣筋、綺麗ですね」
「そういう君は反撃しないのか」
「お望みなら」
「………へぇ、いつでも倒せるって訳かな?」
「いえ、そうは言って無いです」
実際、これがどういう流派なのか全くわからない以上驚くほど受け流されたり超絶素早いカウンターしてくるかもしれないから、別にいつでも倒せると踏んでいるわけではない。ただ僕は実戦でちょっと勉強してただけだ。でも
「そろそろ反撃しますね」
パルナさんの剣術は大体理解できた。この試合が終わったら少し練習でもしよう。そう思いながら、反撃に出る。
「その剣は………なんだ?」
「ん、この剣ですか?この剣は丁度昨日貰った………」
「違う、君の剣筋だ。全く見たことが無い」
「あぁなるほど」
そりゃあそうだ。だって、僕の剣術は僕しか知らないものだからね。でも、未熟ではないと思う。だって、10年以上練習してきたものだからね。
「独学ですよ」
「どっ、独学!?だったら何で………こんなに完成された剣なんだ!?」
「まあ、努力ですかね。じゃあ、そろそろさよならです」
「っ」
僕は跳んだ。空中で小刀を取り出して投げる。それを防ぐために剣を上方向に上げた瞬間、無防備になった頭に剣の腹を殴りつける。死角からの殴打にパルナさんは耐え切れず、倒れこんだ。どうやら気絶したらしい。
「勝者クライト選手ゥゥゥゥぅウウウウウ!!!!! 昨日は魔法で魅せてくれたが今日は剣術で魅せるというのか!!!??? 強すぎるぞォォォオオオ!!!」
『すげぇぇえええええええ!!!!!』
お、僕の剣技は観客から見てウケたみたい。さて、それじゃあ戻ってパルナさんが使っていた剣術でも練習しようかな~………あ、違う。まずはユーリアを探さないと、ユーリアは個人戦でも出るし、きっとどこかにはいるはず………
☆★☆★☆
少し探していると、ユーリアが見つかった。
「あ、ユーリア!!!昨日から見かけなかったけど、どこいたの?」
「クライト君!昨日ぶりだね!」
特に変わった様子はない。単純に会えなかっただけかな。
「昨日、夜ご飯ユーリアも一緒にどうかな?って思ったんだけど………どこ居たの?」
「あ、えっと~。まぁ疲れちゃって、寮帰って寝てたよ」
「そっか、じゃあ今日は一緒にご飯食べよ!昨日貰ったお金僕には使いきれないからさ、僕が奢るよ」
「そ、そんな………悪いよ」
「大丈夫!悪くないよ!」
事実、僕だけじゃ使い切れないお金を使ってもらうのは全く悪くない。むしろありがたいくらいだ。こんなにお金あっても………ほんとに管理とか困るし。
「や、やっぱり駄目だよ………クライト君のだもん」
「ユーリア、気にしないで?むしろ使って欲しいくらいだから!」
「でも………私、クライト君の事ほんとに好き………だから、だからこそお金とか貰ったら彼女として良くない気がするの………」
「………?え、なんで?」
ん~、なんか。言おうとすることが分からないわけでも無いけど、分かるわけでも無い。というかそうだった、なんで彼女になったのかも聞かないと。
「私が、お金でクライト君の事を好きって言ってるって思われたくないから………ほんとに好きだから、私はクライト君にお金を払ってもらうはダメって思うの」
「なるほど………」
分からん。分かんないけど、取り敢えず僕が恥ずかしくなった。そんなに面と向かって好き好きって言わないで欲しい僕が恥ずかしくなってくるから………
「ま、まぁ僕はユーリアの事をそんな風に思った事無いから大丈夫。それにこれからもそんな風に思う事は無いから。そこは安心して」
「ほ、ほんと?」
「それと………なんか、僕達ってカップル………なんだよね?えっと………な、なんで、カップルになったんだっけ?」
「え?それは………」
入学式翌日に僕が、付き合って欲しいというユーリアのお願いを受諾したらしい。因みにだけど、全くそんな記憶はないしそもそも付き合って欲しいとすら言われたか怪しい。
でも………まぁ、別にいいか。ユーリアは可愛いし、優しいし、それに伯爵家でお金は沢山あるはずなのに、わざわざ僕に悪く思われないように奢られたくなかったみたいだし。そんなに僕の事を想ってくれている人の気持ちを僕の勘違いで無下にするのは、外道というものだろう。
「という訳で、今日は僕に奢らせてね!僕はユーリアの事を変な目で見ることは絶対ないから!」
「うん………ありがとうクライト君。じゃあ私そろそろ試合だから行ってくるね?」
「行ってらっしゃい!!!」
ユーリアを送り出す。色々とすっきりした、まぁ付き合った理由はあんまり覚えてなかったけど。取り敢えず、皆の所に戻ろう。
☆★☆★☆
クライトがユーリアとの間に抱えていた二つの疑問を解決したその一方で………
「多分今クライトユーリアの所に行ってるよ」
「あー確かにそうかもな、クライトが気にかけてる人といったら………ユーリア、クレジアント、それから私達だもんな。クライトの事が好きな女子はよく見かけるが、クライト自身はあんまり気が付いてないようだしな」
「ふぇぇ………ユ、ユーリアの所いるんですか?うぅ………」
3人は恋バナをしていた。キュールがクライトのことが好きだからこそ、クライトの居ないときにしかできない恋バナをするのは自然な流れだろう。
「キュール、そろそろクライトに言わないと、クライト絶対気が付かないよ。だって、わりとキュールふとしたところではアタックしてるし」
「そうだな。誰かに取られる前に直接告白した方が良いんじゃないか?」
「で、でもぉ、ユーリアもクライトの事好きだしさぁ………しかも前はパートナーって言ってたけどもう付き合ってるっぽいし………」
流石恋する乙女である。そういう所は見逃さないようだ。ただ、もともとクライトとユーリアは付き合っているのだが。
「まぁまぁ、もし付き合ってたとしてさ。どうせ貴族の大半は一夫多妻制にすると思うし、大丈夫だと思うよ」
「そうだな。クライトも優しいし、キュールだったら断らないと思うぞ」
「うぅ、そうですか?じ、じゃあ………」
「「お!!!」」
「まぁ、また今度の機会に………」
「「うおおおい!!!」」
スタグリアンとマリスタンの完全に息のあったツッコミがキュールに飛ぶ。
「スタグリアンとマリスタンだって夫婦みたいなものなのに認めないじゃないですかぁ………それと同じですよぅ」
「「だって夫婦みたいなものじゃないからね」」
「じゃあ、夫婦ですか?」
「「何がだ!」」
確かに、第三者から見たらどっからどう見ても夫婦漫才にしかみえない。
★★★★★
【クレジアントside】
「クライト、君って奴は本当に凄いな」
正直俺はクライトの事をまだ過小評価していた。強いとは思ったものの、それは魔法面での話。剣術でも凄いとは思っていなかった。
「あの面白い剣筋も興味深いし………いやぁ、楽しみだな」
ようやく1対1で戦えるのか。それがたまらなく嬉しい。普段平民である俺が見られている目は全て対等に見てくれていなかった。俺がそこそこ強いからか分からないけれど、女子は大体上目遣い。俺が恐らく平民だからだろうけど男貴族は完全に下に見る。どっちの目も嫌いだった。
でもそんな中でクライトは俺を真っ直ぐ見つめ返してくれた。精一杯誠実にという気持ちで戦ってくれた。実際にそう思っていたかは知らない、でも俺の本質まで見抜いてくれている気がした。
「だからクライト、全力で楽しもう」
いかにも主人公らしい笑顔を浮かべた。
69
あなたにおすすめの小説
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる