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第2章 戦技祭編

第26話 2日目、開幕

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「サァァァァァアアアアァアアア!!!!! 第一回学園戦技祭個人戦!!!!! 遂にやってまいりました!!! 実況は昨日に引き続きわたくしスティーブンが担当させていただきます!!! どうぞよろしくお願いしまぁぁああああす!!!!!」
『うォオオオおおおおおおお!!!!!』

 学園戦技祭の二日目、個人戦部門が始まった。個人戦はチーム戦に比べて時間がかかるけれど、チーム戦で戦っていたバッファーとかヒーラーは一人で戦わないから、試合終了予定時刻は一応昨日と同じくらいになっている。

「いや~楽しみだな!!!」
「スタグリアン、やけに気合いが入っているな」
「当然だ!今日は因縁の対決………絶対勝つぞ!」
「頑張って下さい!マリスタンもクライトも頑張って!」
「ありがとう」

 そして今日は………クレジアント、君と僕との因縁の対決だ。と言っても、因縁なのは僕が勝手に思ってるだけで戦闘好きなクレジアントからしたら感情面は『手応えある相手と戦えるの楽しみだな』としか思ってないだろうけど。

「昨日はま・さ・か・の!!!!! 1年生のクライトチームが3年生も含めた数々のチームを連携で壊していったり、クライト選手が魔人を秒殺、というかコンマ秒殺したりと色々ありすぎました!!!!! 今日の個人戦はどうなるのでしょうかぁぁぁ!!! わたくしスティーブン!!! 期待で胸いっぱいであります!!!!!」
『俺らもだァァアアアアア!!!!!』
「観客の皆さんも良いですねぇぇええええ!!!」

 スティーブンさんの喉はもう完全に治っている。この世界には回復魔法というものがあるわけで、多分損傷した喉を回復したのだろう。観客の人達も昨日に増して大きい声で合いの手を入れてくれている。

「女性の皆さんも恥ずかしがらず大声を上げて声援を送ってください!!! では練習しますか、わたくしが『スティーブンカッコいいー!』と言うので、リピートアフターミーしてください!!! いきますよ………スティーブンかっこいいー!」
『強制的に褒めさせるなぁあああ!!!』
「おお!!! 女性の皆さんの声も男性の皆さんの声も聞こえました!!! ありがとうございます!!!!! さて、褒めてくれなかったのは寂しいですが!!! 試合を始めましょうかね!!!」

 相変わらず、スティーブンさんは愛されているキャラだなぁ。さて、そろそろ僕も下に行こうかな。どういう訳か、昨日に続いてまた初戦からだ。

「じゃあ行ってくるよ」
「頑張れ!応援してる!!!」
「まぁどうせ負けないと思うが、勝ち進んだら私とまた勝負しよう」
「クライト、がんばってください!」

 皆が応援してくれる。その中に、ユーリアの影は居なかった。なんか、『なんでユーリアがここにいるんだ!』って言ってはいたけど、いざ居ないとちょっと寂しいな。まぁ試合終わったら探してみるか。

☆★☆★☆

「さてさてさてさてェェエエエエエ!!!!! それでは早速、第1試合目突入していきましょう!!!!! 初戦を飾るのはこの選手!!! パルナ選手とクライト選手だぁぁァァアアア!!!!!」
『クライトォォォオオオ!!!!! 人に向けていい魔法撃てよぉおお!!!』

 昨日に引き続いてそれ言わないでほしい。あれができたのは『絶対死なない』っていう条件下の下、誰にも攻撃されずに魔法陣と詠唱を完璧に出来た時だから!魔力消費も激しいし、そんな毎回ポンポンと打てる魔法じゃないんだよ………

「クライト選手は昨日の団体戦優勝チームのリーダー!!! そして、魔人をコンマ秒殺した男!!! 1年生であるにも関わらず、今日一番の期待の新星です!!! 対する2年生のパルナ選手は自身の持ち味である美しい剣術でクライト選手を翻弄できるか!!! そこが試合の見どころとなって来そうです!!!」
「よろしく」
「あぁ、よろしく。クライト君」

 僕のグータッチを返してくれる。こんな優しいなら昨日は見なかった人だ。別決闘場で戦っていたのかな、まだ相手の実力は未知数だけど………この先にクレジアントがそびえたっているんだ。こんなところで負けられない。

「それでは、試合開始ッ!!!」

 僕は動かない。パルナさんの動きを見極める。

「君、突っ立ってたら私が首狩るよ?………っ、やっぱり強いね」
「先輩も、細身なのに結構力強いんですね」
「君の所のマリスタンちゃんと同じさ。私は大剣じゃなくて長剣使うってだけだよ」

 パルナさんが居合切りにも近い剣筋で一気に肉薄してきた。僕の剣術は独学だから、こういう完成された剣筋を見るとやっぱり綺麗だなと思う。どこの流派の剣かは知らないけれど、隙が少なくてなかなか完成された剣技だと思う。
 こういう綺麗な剣筋を学んでおくことも、今後の実戦に役立つからまだ倒さない。じっくりと、技を全部使い切ってもらう。それにしても、剣筋がやっぱり綺麗だ。なんというか、舞踊を見ているような感覚になる。実際は僕と剣を交えている戦な訳だけど。

「剣筋、綺麗ですね」
「そういう君は反撃しないのか」
「お望みなら」
「………へぇ、いつでも倒せるって訳かな?」
「いえ、そうは言って無いです」

 実際、これがどういう流派なのか全くわからない以上驚くほど受け流されたり超絶素早いカウンターしてくるかもしれないから、別にいつでも倒せると踏んでいるわけではない。ただ僕は実戦でちょっと勉強してただけだ。でも

「そろそろ反撃しますね」

 パルナさんの剣術は大体理解できた。この試合が終わったら少し練習でもしよう。そう思いながら、反撃に出る。

「その剣は………なんだ?」
「ん、この剣ですか?この剣は丁度昨日貰った………」
「違う、君の剣筋だ。全く見たことが無い」
「あぁなるほど」

 そりゃあそうだ。だって、僕の剣術は僕しか知らないものだからね。でも、未熟ではないと思う。だって、10年以上練習してきたものだからね。

「独学ですよ」
「どっ、独学!?だったら何で………こんなに完成された剣なんだ!?」
「まあ、努力ですかね。じゃあ、そろそろさよならです」
「っ」

 僕は跳んだ。空中で小刀を取り出して投げる。それを防ぐために剣を上方向に上げた瞬間、無防備になった頭に剣の腹を殴りつける。死角からの殴打にパルナさんは耐え切れず、倒れこんだ。どうやら気絶したらしい。

「勝者クライト選手ゥゥゥゥぅウウウウウ!!!!! 昨日は魔法で魅せてくれたが今日は剣術で魅せるというのか!!!??? 強すぎるぞォォォオオオ!!!」
『すげぇぇえええええええ!!!!!』

 お、僕の剣技は観客から見てウケたみたい。さて、それじゃあ戻ってパルナさんが使っていた剣術でも練習しようかな~………あ、違う。まずはユーリアを探さないと、ユーリアは個人戦でも出るし、きっとどこかにはいるはず………

☆★☆★☆

 少し探していると、ユーリアが見つかった。

「あ、ユーリア!!!昨日から見かけなかったけど、どこいたの?」
「クライト君!昨日ぶりだね!」

 特に変わった様子はない。単純に会えなかっただけかな。

「昨日、夜ご飯ユーリアも一緒にどうかな?って思ったんだけど………どこ居たの?」
「あ、えっと~。まぁ疲れちゃって、寮帰って寝てたよ」
「そっか、じゃあ今日は一緒にご飯食べよ!昨日貰ったお金僕には使いきれないからさ、僕が奢るよ」
「そ、そんな………悪いよ」
「大丈夫!悪くないよ!」

 事実、僕だけじゃ使い切れないお金を使ってもらうのは全く悪くない。むしろありがたいくらいだ。こんなにお金あっても………ほんとに管理とか困るし。

「や、やっぱり駄目だよ………クライト君のだもん」
「ユーリア、気にしないで?むしろ使って欲しいくらいだから!」
「でも………私、クライト君の事ほんとに好き………だから、だからこそお金とか貰ったら彼女として良くない気がするの………」
「………?え、なんで?」

 ん~、なんか。言おうとすることが分からないわけでも無いけど、分かるわけでも無い。というかそうだった、なんで彼女になったのかも聞かないと。

「私が、お金でクライト君の事を好きって言ってるって思われたくないから………ほんとに好きだから、私はクライト君にお金を払ってもらうはダメって思うの」
「なるほど………」

 分からん。分かんないけど、取り敢えず僕が恥ずかしくなった。そんなに面と向かって好き好きって言わないで欲しい僕が恥ずかしくなってくるから………

「ま、まぁ僕はユーリアの事をそんな風に思った事無いから大丈夫。それにこれからもそんな風に思う事は無いから。そこは安心して」
「ほ、ほんと?」
「それと………なんか、僕達ってカップル………なんだよね?えっと………な、なんで、カップルになったんだっけ?」
「え?それは………」

 入学式翌日に僕が、付き合って欲しいというユーリアのお願いを受諾したらしい。因みにだけど、全くそんな記憶はないしそもそも付き合って欲しいとすら言われたか怪しい。
 でも………まぁ、別にいいか。ユーリアは可愛いし、優しいし、それに伯爵家でお金は沢山あるはずなのに、わざわざ僕に悪く思われないように奢られたくなかったみたいだし。そんなに僕の事を想ってくれている人の気持ちを僕の勘違いで無下にするのは、外道というものだろう。

「という訳で、今日は僕に奢らせてね!僕はユーリアの事を変な目で見ることは絶対ないから!」
「うん………ありがとうクライト君。じゃあ私そろそろ試合だから行ってくるね?」
「行ってらっしゃい!!!」

 ユーリアを送り出す。色々とすっきりした、まぁ付き合った理由はあんまり覚えてなかったけど。取り敢えず、皆の所に戻ろう。

☆★☆★☆

 クライトがユーリアとの間に抱えていた二つの疑問を解決したその一方で………

「多分今クライトユーリアの所に行ってるよ」
「あー確かにそうかもな、クライトが気にかけてる人といったら………ユーリア、クレジアント、それから私達だもんな。クライトの事が好きな女子はよく見かけるが、クライト自身はあんまり気が付いてないようだしな」
「ふぇぇ………ユ、ユーリアの所いるんですか?うぅ………」

 3人は恋バナをしていた。キュールがクライトのことが好きだからこそ、クライトの居ないときにしかできない恋バナをするのは自然な流れだろう。

「キュール、そろそろクライトに言わないと、クライト絶対気が付かないよ。だって、わりとキュールふとしたところではアタックしてるし」
「そうだな。誰かに取られる前に直接告白した方が良いんじゃないか?」
「で、でもぉ、ユーリアもクライトの事好きだしさぁ………しかも前はパートナーって言ってたけどもう付き合ってるっぽいし………」

 流石恋する乙女である。そういう所は見逃さないようだ。ただ、もともとクライトとユーリアは付き合っているのだが。

「まぁまぁ、もし付き合ってたとしてさ。どうせ貴族の大半は一夫多妻制にすると思うし、大丈夫だと思うよ」
「そうだな。クライトも優しいし、キュールだったら断らないと思うぞ」
「うぅ、そうですか?じ、じゃあ………」
「「お!!!」」
「まぁ、また今度の機会に………」
「「うおおおい!!!」」

 スタグリアンとマリスタンの完全に息のあったツッコミがキュールに飛ぶ。

「スタグリアンとマリスタンだって夫婦みたいなものなのに認めないじゃないですかぁ………それと同じですよぅ」
「「だって夫婦みたいなものじゃないからね」」
「じゃあ、夫婦ですか?」
「「何がだ!」」

 確かに、第三者から見たらどっからどう見ても夫婦漫才にしかみえない。

★★★★★

【クレジアントside】

「クライト、君って奴は本当に凄いな」

 正直俺はクライトの事をまだ過小評価していた。強いとは思ったものの、それは魔法面での話。剣術でも凄いとは思っていなかった。

「あの面白い剣筋も興味深いし………いやぁ、楽しみだな」

 ようやく1対1で戦えるのか。それがたまらなく嬉しい。普段平民である俺が見られている目は全て対等に見てくれていなかった。俺がそこそこ強いからか分からないけれど、女子は大体上目遣い。俺が恐らく平民だからだろうけど男貴族は完全に下に見る。どっちの目も嫌いだった。

 でもそんな中でクライトは俺を真っ直ぐ見つめ返してくれた。精一杯誠実にという気持ちで戦ってくれた。実際にそう思っていたかは知らない、でも俺の本質まで見抜いてくれている気がした。

「だからクライト、全力で楽しもう」



 いかにも主人公らしい笑顔を浮かべた。
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