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第3章 領改善編

第47話 改善の兆し

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「………なんだ!?」

 臨時ゲートが開いたかと思えば、死体が一つ流れ込んできた。

 違う、正確にはゲートに入り込んでくる途中で殺されたのだ。

 ゲートが閉じる。殺した奴が誰だかは分からない。

「おい!」
「はい、簡易鑑識します!」
「ええと………鑑識結果が出ました!この死体はマル小隊長の死体の様です!」
「マルはどこの領地に向かった!?」
「少々お待ちを!………レンメル領です!」
「レンメル領?それは確かに辺境領だよな?」

 いや、それは我自身確認したはずだ。確かにレンメル領は辺境領だった。だからこそ攻め込んだのだ………何故だ?何故マルが辺境地の者共に負けているんだ?マルは少なくとも学園生10人は相手取っても難なく倒せるはずだ。だったらなんだ?たまたまS級冒険者に当たってしまったのか………
 いや確かにその線もあるが、この速さで敗走してきたと考えると騎士団か学園教師共が居たのか………なんなんだ、何故こんなにも早く辺境領で負けているんだ!!!

「おい、レンメル領に今訪れている者は分かるか?S級冒険者、騎士団、学園教師の中でだ!!!」
「ええと………確認をしてみます!」
「クソ………」

 計画が狂った。そいつらに気づかれないように辺境のゴミから攻め込んだというのに………いや、まだ作戦は終わっていない。ただマルが敗走したからなんだ、それは我達にとって騎士団の人間や学園教師共を個別で始末するチャンスじゃないのか?

「王都に潜んでいる者からの報告ですが、現在騎士団、学園のどちらにも欠員は居ないとのことです!S級冒険者は分かりませんが、依頼を受けて別の場所に赴いている可能性が高いかと!」
「はぁ?じゃあなんなんだ………!!!」

 そこら辺じゃないとなるとなんだ?もしかしてだが、クライトとクレジアントがレンメル領に滞在しているとかか?いや、まさかそんな訳はあるまい。あまりにも偶然すぎるだろうが。

「………しょ、将軍様!」
「なんだ?このような時に下手な事だったら分かっているよな?」
「も、もちろんです!………く、クライトの本名は覚えていらっしゃいますか?」
「クライトの本名だと?知らん、覚えていない………おい、まさか!!!」
「ク、クライトの本名は………クライト・フェルディナント・ッ!!!」

☆★☆★☆

【クライトside】

 昼頃、僕たちは厨房から料理を運び出して別邸の目の前に設置しているテーブルの上に並べていく。皆が持って帰れるように、手編みの小さなかごもある。これはキュールと使用人の皆が作っておいてくれたものだ。

「今の領民の人数は?」
「おおよそ、100人に満たっていません」
「うん。それなら足りるね」

 昔の勢いはどこへ行ったのやら、あまりに領地に居る人が閑散とし過ぎている。いくら辺境とはいえ、昔のレンメル領は商売も農業も色々とやっていた。だけど、税金のせいで何にも出来なくなってから今や土地の大半は荒れている。

 それと、今日から昼食の無償提供を始める。もちろん、こんなことをいつまでもやっていくわけにはいかないから、また次なる対策を考えないといけないけれど今はこれで領民達の最低限生きていける環境を整えていくしかない。

「それじゃあ、僕とキュール・クレジアント・ナイパーに別れて病気の人を治していこう。食事を貰いに来た人に家族やその人自身が病気かどうか聞いてね」
「わ、分かりました!頑張ります………!!!」
「キュールは病気の人を治すだけで大丈夫だよ!話しかけるのはボクがやるから、得意な事を別れてした方がどっちにも得だからね!」
「あ、ありがとうクレジアントちゃん」
「私めも傍で待機しておりますので、何か必要がありましたらいつでもお声おかけくださいませ」
「3人ともありがとう。それじゃあ、始めよう!」

 昨日の内に、ナイパーが張り紙を領の掲示板に貼っておいてくれたらしい。だから、何十人もとは行かなくても何人かは来るはず………あ。早速何人か来た。

「………え?」
「ど、どういう事?何であんなに税を高く設定しているレンメル家が食事の無償提供しているの?」
「ちょっと、これ罠なんじゃない?」
「そ、そういう事か!俺達を毒で殺してしまおうって訳か!」
「ふざけんな、そんなことあっていいのかよ!」

 うわぁ………そっちに行っちゃったか。確かに、領民の人からしてみたら僕と父は同じグループ分けになっているに決まっているよね。うーん、取りあえず。

「毒殺なんてしませんよ。ほら」

 近くにあったパンをちぎって口に放り込む。

「こっちも」

 スープ、野菜、果物。一品ずつ一口だけ手を付けて行く。

「毒は入ってません」
「………じゃ、じゃあ何で急にこんなこと始めたんですか!」
「………そうだぞ!こんなことするくらいなら税をもっと下げてくれ!」
「すべてに税がかかるせいで商売も何もできやしないわ!」

 やっぱり税だよね。そこは今の僕にはどうしようもできない。それを説明するか………いや、まだ駄目だ。

「税は………後々下げます。必ず」
「ふん!そんな言葉信用して溜まるか!」
「本当です。信じてください」

 僕は頭を下げる。普通、こんなことする貴族なんてきっとこの世界どこを探しても居ないだろう。でも、今はするしかない。

「なっ」
「………」
「………頭、下げてる」
「………」

 まだ、頭はあげない。僕のプライドごときで、領地その物がダメになったらそれはもう本当に貴族としての素質が無いということになる。そもそも、僕にとって別に頭を下げることはそんなに苦じゃない。日本人の頃の感覚がまだ残っているのか。

「ねぇ、もういいんじゃない?貰えるもんは貰いましょうよ」

 頭を上げる。口を発したのは、昨日助けた女性の人だった。

「………でも!」
「私、昨日この人に助けて貰ったの。まさかレンメル家とは思わなかったけれど。考えてみて、昨日の魔人の軍勢が来ても一人も死者が出ていないのは何で?」
「………それは」
「確かに、レンメル家は税率を上げて豪遊しているし私達は反撃の手段も無いから好きになれない。でも、この人だけは信用していい気がする。昨日に続いて、今日だって助けようとしてくれてる」
「………」

 女性の目の奥を見る。昨日とは少し違って、瞼が少し大きめに開かれたおかげか光が差し込んでいる。

「私は食べるから」
「………じゃあ俺も」
「………それなら」

 段々と、皆が食事をとりに来る。



 印象は何とかなったみたい。
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