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第4章 終幕戦編

第81話 変異と卒倒

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 僕が〈謙譲〉2式を発動させて、戦闘が再開する。〈謙譲〉2式の効果は、効果時間中は敵に与えるダメージを抑えるが、効果が終わり次第敵に与えるダメージが一定時間二倍に上がる。他の属性とは違って、効果発動中は弱体化するという特殊な効果。
 制限はこの〈謙譲〉系の効果が切れるまで他の属性効果を使用できない。〈謙譲〉系効果の時間は所持する属性が多くなる程に減り、効果が切れた後の与ダメージアップ時間は所持する属性が多くなる程増える。

 他の属性とは少し違い、特殊な効果を持っている。だから僕は魔人狩りをしていた時に使い勝手が悪くて発動させなかったんだけれど………今こそ使うべき時だろう。効果を受けた先生達も、瞬時に僕の意図を分かってくれたようだった。

「我は、御前等に敬意を払おう。三人掛かりとはいったって、我に敵う者等今までいなかったからな。だが………だからこそ、御前等がとことん邪魔である。この国を亡ぼす為に、先ずは御前等を亡くそうか」
「そんなこと………っ!!!何してっ!?」

 魔人が、先のナヴァール先生の潰炎オプスキュリテで火傷した部分を。勿論、大量に血が出るけれど魔人は特に気にした様子もない。よく見ると火傷して体表面の治癒細胞が壊死していたところから、そこを斬り落として元の状態まで回復をしている。

「冥土の土産にでも、教えてやろう。我の名は………ギュルリア。この国の王者の『』だった者だ」
「………えっ?」
「おいおい、マジかよ………?」
「………あ、今魔力探知したら………ヨーダン王殿下の頸が………」
「………へっ?」

 衝撃の事実が多すぎる。

 ヨーダン王の兄?それに、ヨーダン王はもう死んでいる?

「………謀反だぞ」
「おいおい、我は魔人だが?そしてその『謀反』との言葉………反吐が出る。二度と口にするで無い。我がヨーダンの王になるはずだったのにも関わらず………何をしよったと思う?彼奴は、彼奴の母に唆されて第一王子であった我を陥れた!!!」
「だ………第一、王子だと?」

 ニーナ先生が懐疑と戸惑いが混ざった目線を向ける。

「先代の、だがな?お前ら学園教師が生まれたて、もしくはもっと前の話だ。我が王となる為に、他所の国へ外交へ行った帰りの事だ………彼奴が、我の食事に毒を盛った。我は疲れ果てていて、毒見の確認をしなかった故。帰りの馬車で誰にも知られず我は毒を混ぜられた軽食を食べ………地に伏した。そして、彼奴が手配していた暗殺集団の手によって我と彼奴が乗っていた馬車に招かれざる魔物達がやってきたのだ」
「………暗殺集団」
「ああ、そうだ。今でも貴族を連れ去ったり、周りから見た違和感のない手法で貴族を殺しているらしいじゃないか?」

 今や遠い過去の記憶がふと思い出される。ユーリアの元に訪れたあの強盗達。やっぱり………あれはただの強盗なんかじゃなかったのか。

「我はもともと戦えた方だったが、毒を盛られていてなす術も無く殺された。彼奴は抵抗している間に、援軍が来て助かった。殺された我は援軍によって傷つけられた体を癒そうとした魔物が、我を巣穴に持ち帰った………そこで、今の我の始まりともいえることが起こった。我が、魔人になって意識を取り戻したのだ。体を見ると変色しているが、力が湧き出てくることが分かった。その場で魔物に食われそうになったから瞬殺してやったさ」
「………何故、魔人化したのですか」
「そんなこと分かるまい。だが、そこはこの場所よりもかなり深い位置で魔素の奔流が渦巻いていた。我はいわば突然変異なのだ。どの時代にも選ばれし者と変わった者はいるものだが、どちらかを持って居る者は個体として強い。その上でだが………我は前者でもあり、後者でもある」

 目の前の魔人の人生が普通とはかけ離れたものだという事は瞬時に理解できた。そして、だからこそ今はこのようにしていても………この国を亡ぼすという覚悟が並外れたものではないだろうことも理解できた。

「………」
「おっと、お喋りが過ぎたようだな?御前等の様に強い者達は初めてなものだからな、少々興奮していた様だ。我の話はお気に召さなかったか………それとも、衝撃の事実が陳列されていたか。いずれにせよ、残念ながらこの先今の話が御前等の頭に残り続けることは無い」
「ニーナ先生、クライト君、気を付けてください………!」

 先に発動させてあった〈謙譲〉2式の効果は切れている。今は与ダメージが二倍になっている。こちら側の攻撃チャンスでもある。

「さあ………始めようか?」
「………っ!?」

 魔人がいた場所に残像だけが残る。何か嫌な予感がして剣を構えると、けたたましいような金属音が周囲に響き渡る。衝撃で大きく後ろへ退くけれど、魔人はそれ以上僕を追ってくることはせずにニーナ先生の方へ向かって地を踏み抜く。
 刹那で距離を無くし、ニーナ先生が剣を前に突き出してもニーナ先生の元へ進み続ける。剣が魔人の肉体を貫いても尚、魔人の推進力は止まらずにニーナ先生の首元を手に握った剣で捉える。だが、ナヴァール先生が魔人の手元に爆炎を咲かせて魔人の凶刃がニーナ先生の頸を切断するのを間一髪で止める。

 だがしかし、魔人は即座に剣を持っている逆方向の腕をニーナ先生の頭に振り被る。ニーナ先生は回避行動をとろうとするけれど、僅かに魔人がエルボーを下ろしてニーナ先生がノックダウンする。幸い、致命傷には至っていない様だけれど………まずい。

「クライト君!合わせて!!!」
「わ、分かりました!!!!!」

 ナヴァール先生が多層土壁ミルフィーユウォールを魔人に対して展開して、一時的に閉じ込める。タイミングを合わせて、僕が全速力で土壁に接近していく。このままだとぶつかってしまうけれど………勿論そんなことにはならない。
 魔人が多層土壁ミルフィーユウォールを瞬時に破り切ったのだ。そうなると読んでいた僕は魔人に向かって剣を突き刺す。それと同時に、魔人に蹴りを入れて、反作用でダメージを与えると同時に今突き刺した剣とニーナ先生の剣を引き抜いて流血させる。今は与ダメージが二倍になっている為、胸には大き目の風穴が二つ空いている。

「こちらナヴァール!!!只今ニーナ先生が戦闘不能状態に陥りました!!!総員、こちらへ向かってきてください!!!クライト君と私だけでは、戦力が足りません!!!」

 ナヴァール先生が必死に無線で各先生達に呼び掛けている。

 胸に風穴が二つも空いて、人間だったら絶対に死んでいるであろう傷を受けながらも魔人はまだ倒れない。

「先ずは………一人だ」

 先程よりも確実に傷を与えているのに、不安が高まった。
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