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第4章 終幕戦編

第85話 目には目を

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【クライトside】

 不安で叫び出したい気持ちを心の中に必死に抑える

 ニーナ先生やストライク先輩は無事なのか、ここに来る前に僕を助けてくれた皆は今どこで何をしているのか、あの魔人はどうやったら倒せるのか、この王国が崩壊するのではないか、僕はここで………死ぬんじゃないか。

 そんな疑問や不安が頭の中を駆け巡り、オーバーヒート状態に陥っていた。

「死んでいるけど、死んでいない………」

 あの魔人を倒せることは分かっている。でも倒しきれるかどうかはまた別の問題。

 でもあいつは、『ある条件が満たされていれば、我が血を分け与え魔人化したものの生命と血液を奪って復活できる』と言っていた。そう、『』と。

 その、条件が分かれば………その条件をってしまえば、魔人の疑似永続復活は止められるという事だ。わざわざそんなことを教えてくれるなんて、さぞお人よしなのだろう。実際はこうして数万もの兵を陥落させて、王国の中でもトップクラスの実力を持つ何人もの人を沈めているわけだけれど。

「こんなこと、ゲームでは無かったんだけどな………」

 この期に及んでまだそんなことを言ってみる。もちろん、これが意味の無い発言であることは重々承知だ。

 だって。

「僕がここに前世の記憶を持って生まれた時点で、この世界にとってはイレギュラーなんだから」

 そう、何もあの魔人だけが特異点なのでは無い。むしろ一番の特異点は僕だ。

 大丈夫。今まで僕は沢山の戦いに勝ってきたじゃないか。確かに、戦ってきた数も期間も他の人よりは少ない。でも、それでも。

「僕なら、僕たちなら出来る」

 確かに今回の魔人は今までよりも遥かに強大な敵だ。だけどそれは今までもそうだった。最初は普通の同級生と戦って、それから魔物を倒して、低級ダンジョンのボスをみんなで倒して、中級も攻略して、スタグリアンと戦って、ストライク先輩と戦って。どんどんと強くなっていっていた。

 これは僕を祝福してくれているんだ。世界の意志シナリオは僕を見捨てていない。しっかりと、僕の事をこの先の物語に加えておいてくれている筈。

「………よし」

 小さく息を吐き出して、気合を入れる。

 僕だけで倒せないのは明白だ。

 だからこそ王城にも一筆送ったし、ナヴァール先生が二人を助けられるように少しは時間も稼いだ。皆の力があれば、倒せる。

「行こう、この戦いは………」





















 体が熱かった。どうしてだろうか?腹部辺りが熱いと思って顔を向けると。そこには僕のお腹を綺麗に貫いた腕があった。

「はは………ははははは!!!」

 腕の主が真後ろで笑っている。

「御前は強かった。人生最大の賛辞を送ろう!!!我と同じほどの並々ならぬ努力をしてきただろうことは伝わった!!!!!」

 聞き覚えのある声が背後から聞こえる。

 僕は視線をお腹に固定したまま、その声を呆然と聞いている。

「だが、それ故に御前は我の計画において最高に目障りな存在であった。だから、ここで死んでもらおう………これからは我の眷属となり、永遠を共に使用ではないか。世界を滅ぼし、我等が支配するのだ!!!!!」

 魔人は腕をお腹から引き抜いた。お腹には依然として大きな風穴があいている。



 膝をつき、地面に伏す。やけに静かな空間に、クライトが倒れる音と魔人の不敵な笑い声だけが響く。



★★★★★

【ギュルリアside】

「凄い奴だったよ」

 素直な気持ちを一人呟く。

 我が新たに眷属に出来る能力が発現しなかったら、我は先ほどクライトに殺されて終了であっただろう。先程は我が咄嗟に音を出し、眷属を我の生き返る条件である五百であるメートル以内に魔人百人以上を引き寄せていなかったら我の命も計画もそこで消えて無くなっていただろう。

 我はそっと膝をつき、懐から取り出した注射器に我の血を吸わせてクライトに注入する。これをクライトが吸収した時、すぐにこの風穴は塞ぐ。それと同時に、人間でなくなる。魔人になるのだ。我の言いなりになる眷属になるのだ。

「これから、忙しくなるぞ」

 もう動かないクライトに向かってそう話しかける。注射をした瞬間からクライトの腹に空いた風穴は見る見るうちに塞がって言っている。クライトでも、やはり我の血には敵わない様だ。

「よし、これで………」
「ぁあっ………」

 後ろからか細い悲鳴のような声が聞こえる。この声を聞いたことは無い。

「誰だ」
「………」

 口をあんぐりを開けて、ただ呆然と立ち尽くしている者が二名。視線の先は我………ではなく、その先に居たクライトに向けられていた。

「お………」
「………お?」
「お前が………お前が、殺したんだな?」

 クライトに向けられていたし視線は徐々に下がっていき、最終的には地面を見つめるようになった。二人の体中が小刻みに震え、怒り心頭という言葉が最適であった。泣いているのだろうか、表情が見えない。

「………答える義務はない」

 そう言って、剣を引き抜き二人に突撃する。その瞬間二人は顔をキッと正面に向けて応戦をしてきた。どうやら死にに来たわけではないらしい。女の方は空を駆ける大剣を携え、男の方は剣に様々な状態の魔素を纏わせ攻撃力を格段に上げている。
 だがこの者達からは、クライト程の強さを感じない。魔人の波を掻き分けてここに来たのだろうから弱くはないのだろうが………クライトとの戦いの後だと、どうしても弱く感じる。

「………」

 二人と戦っていると何か違和感を覚える。この二人、

 もしくは攻撃を防ぐのに必死で、攻撃が出来ないのか。パッと見はそう見える。だが、我の細胞の一つ一つが何かあると警告してきていた。だが我は本能の警告を振り切り、理性的に目の前の状況だけで判断を下す。

 二人の連携を崩し、先ほど倒してきた教師陣達と同じように頭を斬り落とそうと剣を首にかける。その時、

「っ!!!」

 両サイドから、轟音で唸る氷魔法が飛んできて体勢を無理やりにかえる。勿論、頭を斬り落とすことに成功はしていない。やはり、何か裏があったか。我がその場から少し距離をとり、全員を見渡す。併せて四人、全体で差はあるがかなり手練れだ。それと一人、恐らく下手な学園教師よりも強い者がいる。

「………だが、残念だったな」

 その四人をもってしても、クライトには及ばない。

 我の後方でむくりとクライトが起き上がったのを感じる。

「クライト………殺れ」

 四人の顔に緊張が走る。それと同時に、我の顔には笑みが浮かぶ。

 ここで、貴様らの命運は尽きるのだ。クライト、しかと実力を見せて貰おう!!!


















 体が、熱い。さっき小さな太陽に灼かれたような鋭い熱さだった。



「………嘘、だろうが」



 我の腹にはれっきとした魔人の腕が突き刺さっていた。


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