神の使いと呼ばれた男【僕は元地球人だった気がしないでもない】

ろっこつ

文字の大きさ
38 / 62

閑話 セラ

しおりを挟む
    私の名前はセラ。

 暗殺業を生業としてきた。そんな私は今、途方に暮れている。
    どういう事だ、裏城門?



 ここは城の裏城門。外よ、脱獄したのかって?
 まさか…、そんなことする筈ないじゃない…。

 でもまさかね、まさかなのよね、釈放されるとは思わなかった…。

 あの後、手法を変えてまた尋問があった。手法を変えてとは言っても、筆談形式だった。

 この城の文官は予め答えを用意し、それを私に選ばせた。
 この国はそこまでして私に証言をさせたいのかと、正直その情熱に驚いたわ…。
 死ぬほど暇だし、死ぬ前にそのお遊びに付き合ってあげる、そう思って奴の質問には正直に答えてやった。
 選択肢が無くて答えられない部分もあったけど。

 この城の文官は、あたしの名前を予め周到に調べていたみたいね、ズバッと言い当てられた時には正直ちょっと驚いたわ。

 その後は、なし崩しね。

 あの一件があり、ここレジアで捕まった事で人生の全てを諦めていたあたしは、奴の用意した答えに沿って全て、正直に選択肢の中から選んで答えた。
 そして虜囚裁判が始まった。
 簡単な裁判だったけど、ほんとこの国は変わってる。
    生まれ故郷のオセニアラやイギストじゃ、こんな面倒な手順なんか踏まずに、奴隷に落とすか見せしめに首をはね飛ばすだけなのに。
 なんでも大昔にこの国を興した時、流星の使者の影響を受けて法が作られ、受け継がれた習わしだとか。
 ま、そんな事は良いわ。それより虜囚裁判の判決ね、アレにはあたしも驚いた。

 その内容は一年間の奉仕活動。だって。

 他にもいろいろ難しい事言ってたけど。
    要するに、戦時中の行為は敵国から与えられた任務なので罪に問わない。
 そこで万策尽きて捕虜となったあたしの高い能力を認め、厚遇すると。

 そのかわりに、レジア王国に対する反逆行為を行わないと誓った上で、この国に奉仕せよって事ね。

 その奉仕活動の間に心の病を治し、社会性を取り戻せって言う最後だけなんか病気扱いなんですけど、どういう事なのよ。

 そんな訳で今お外。

 国内で、自衛目的以外に人へ向ける事を禁止された愛用の短刀と、少ない荷物を返され、あたしはここで一人、途方に暮れてる。



「………。」



 後ろを振り返ると門番の兵は目を背ける。

 なんなのさその態度、私には言い寄って来る男も多かった、でもすぐにあたしと釣り合わないって解るとすぐに消えて行く。
 それでも門番の方を見てると声を掛けてきたわ。

「ぼ…   冒険者ギルドは通りを西に行ったら有るから、そんなとこに突っ立ってないでっ、さっさと行けッ!」

 顔真っ青にして、なにあいつ照れてるの、可愛い。
 そうだ思い出した、冒険者ギルドに登録しないといけないんで、あの組合に行くのだった。
 私はギルドに登録して、その仕事ぶりを監視される保護観察が言い渡されてるの、だから、ギルドに登録して定期的に活動報告をしておかないと、逃亡と視なされ、その時はこの国からも追われる立場になるって事だ。
 レジアの処遇は寛大だったけど、裏切ると地の果てまで追いかけてきて捕まえてやろうって姿勢が見えるよね。

 オセニアラやイギストでも逃げ場のない私は、それに従うしかないって事かね。

 仕方ないわ。



 冒険者ギルドの登録はちょっと面倒だったわ、でも釈放された時に、持たされた書状を見せると、犬顔の受付は尻尾を振って台帳を作ってくれた。
 三日後、ギルド札なる物を取りに行き、私は暗殺業を改め、冒険者として華々しくデビューしたのよ。

 ギルドの『依頼』や、簡単な『任務』をあたしは精力的にこなした。
 ギルド札が有れば安く泊まれる宿を紹介され、そこに身を置き、この国の為に奉仕してるという実績を積み上げる為、我ながら頑張った方さ。
 今までやって来た盗賊や暗殺業、お天道様に顔向けできない日陰者だった私は、暫らくするとこういう生活も良いかもしれないって、思うようになってきた。
 仕事を終えて宿で暖かい食事を取り、寝る前、もし、私がこの国で生まれて居たらって、ちょっとむず痒くなる様な妄想もした。

 今まで僅かな気配や物音で目を覚まし、暖かい毛布にくるまれての安眠なんて程遠い生活を送っていた私は、真っ当な仕事をして、対価を貰い、温かい食事をとり、夜ぐっすり寝るっていう、この普通の生活が何故か心地よくて、いつの間にかこのレジアが気に入ったのかも知れない。

   そう感じる様にまでなったのさ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

魔法物語 - 倒したモンスターの魔法を習得する加護がチートすぎる件について -

花京院 光
ファンタジー
全ての生命が生まれながらにして持つ魔力。 魔力によって作られる魔法は、日常生活を潤し、モンスターの魔の手から地域を守る。 十五歳の誕生日を迎え、魔術師になる夢を叶えるために、俺は魔法都市を目指して旅に出た。 俺は旅の途中で、「討伐したモンスターの魔法を習得する」という反則的な加護を手に入れた……。 モンスターが巣食う剣と魔法の世界で、チート級の能力に慢心しない主人公が、努力を重ねて魔術師を目指す物語です。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...