【虐げヒロインはドSエリートに翻弄される】〜囚える鎖を放すか否か(仮)

光月海愛(こうつきみあ)

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策略

ドSと性悪

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 ラブホで二晩過ごして迎えた朝は、体調は完全に良くなっていた。

 精算機で領収書を取り、藍野さんが私に渡す。

「ありがとうございます。会社で精算したらお返しします」

 藍野さんは薄く笑って、「行こうか」と、車を走らせた。

「今日まで休めばいいのに」

「時間があると落ち着かなくて」
 
 家のことが気になるのもあるし、これ以上一緒にいたら本当に帰りたくなくなる。

「じゃあ、ここで」

 家最寄りの駅で降ろして貰い、藍野さんと別れた。

 今日も会社で会えると分かってるからか、切ない気持ちにはならなかった。

 車庫には、兄と継母の車はなかった。
 珍しい。
 こんなに朝早くにもう出社? それとも旅行でも行ってる?

 玄関のところには、出さずじまいの生ごみ袋があった。

「すぐそこなのに」

 ゴミをまとめただけマシか。置き場へ出しに行き、戻ると、義弟の凱也が玄関で仁王立ちで(というほど威圧はないけど)私を待ち構えていた。

「な、なに?」

 まだ酒が抜けてないのか、赤ら顔だ。

「いいご身分だな。家事ほったらかして男とヤりまくってたんだろ?」

「……風邪引いたから、帰ってくるなと言われたのよ」

 ダルいやり取りで、風邪がぶり返しそう。

「お兄さん達は?」

 横をすり抜けようとしたら、腕を取られた。

「兄貴達は瑠衣を連れ戻しに出たんだよ」

「え」

 彼氏と同棲を始めたばかりなはず。
 そこに乗り込む気だろうか。
 どうして、そこまでこの屋敷に住まわせる事に拘るのだろう?

「お前といい、瑠衣といい、葉月まで、梅野家の女どもは性に奔放過ぎるだろ」

 凱也は不満そうに口を歪めている。

 奔放?
 恋愛をする事は普通じゃないの?
 それに、葉月さんは雅夫兄さんと結婚しているのだから、奔放とは違うでしょう。

 それとも、葉月さん、浮気してる? だから雅夫兄さんはいつも不機嫌なの?

 色んな疑問符が喉の奥で渋滞している。
 けれども、この凱也と話をしても疲れるだけ。

「瑠衣が使えなかったら、お前だからな」

 意味の分からない事を言っていたが、スルーして私は二階へ上がった。

 廊下で、雅夫兄さん達の寝室から、葉月さんの笑い声が聞こえてきた。誰かと電話で話をしてるみたいだった。

「あいつ、金持ってるだけが取り柄だったのに、最近、会社ヤバいみたいなのよー。私も一応、副社長の肩書あるからさぁ、気が気でないの」

 名ばかりとはいえ、副社長ともあろう人が、経営状態を″ヤバいみたい″と話すあたり、本当にお花畑だ。
 藍野さんの功績は、買い手企業の最終的な企業価値評価に反映されるだけで、立て直すまではいかない。

 本来、梅野家の人間として、その事を黙ってるのは心苦しいはずだが、私はもう会社なんてどうでもよくなっている。

 藍野さんは、虐げられ、縛られる事を私が自ら望んでるって言ってたけど、違うと思う。
 無力だから、従うしかなかった。

 だけど、藍野さんになら、何をされても構わないと思い始めている。

 たとえ監禁されても、幸せに感じるかもしれない。
 もっと、ぐちゃぐちゃにしてくれていいのに、藍野さんは、優しかった。 
 梅野家の人間とは違う。
 ドSと性悪は別物なんだと、思い知らさせた。

 自分は恋愛をしている。
 竹林部長への片思いとは桁違いに、その事でいっぱいいっぱいになる。

 早く、会いたい。
 同じ空気を吸いたい。

 雅夫兄さん達が戻る前に出社すると、事務所には竹林部長がいた。









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