あの頃のまま、君と眠りたい

光月海愛(こうつきみあ)

文字の大きさ
26 / 67
恋心

沸点

しおりを挟む
「おいおい、里がお化けとか笑えないんだけど。見た目リアル過ぎて!」

 「いいじゃん!本人、サダコに立候補してるんだから!」

  学級委員長の声に、ウトウトしていた担任がハッと目を覚まし、

 「お?お化け屋敷に決定か? サダコ? おー、いいんじゃないか? 誰がやるんだ? どーせならギャップあるやつがいいだろ?」

  呑気に教室を見渡してた。

  続けて、

 「野沢、お前、案外似合うかもしれんぞー」

  普段、ノリのいい野沢さんを先生が指名してしまって、彼女の気分を相当害してしまったよう。

  みるみる顔を赤くした野沢さんは、

「何で、サダコなんか私がしなきゃいけないのよ?
そんなの、ネクラで可愛くない里さんがやればいいじゃないですか?……それか、本物の化け物が」

  私と、颯斗くんに鋭い視線をぶつけてきた。

  この時。
  やっと、颯斗くんは、ゾンビになれと言われた理由が分かったようで、
  初めて見る、とても悲しい表情を浮かべていた。

  ……人に怒りの沸点があるとしたら、きっと、これだと思った。


  こんなに他人に憎悪に近い気持ちを抱いたことなんてない。


  私は振りかえって、思い切り野沢さんを突き飛ばしてしまった。

 「謝って!」

  踏ん張る事が出来なかった野沢さんが、よろめいて倒れる。

「……ちょ、何すんのよ?!」

  やり過ぎたと思った時には遅かった。

  彼女の仲間もキレて、私を取り囲み、教室の掃除用具入れに押し付けた。ものすごい圧だった。

 
「おいっ、こらっ、やめんか!」

  担任が慌てて走りよってくる。

「美海!」

  颯斗くんも。

「先生も男もすっこんでろよ!」
「女子の問題なんだから!」
「あんた里の分際で暴力振るう気?!」
「颯斗くんとデキてるからって調子に乗ってんじゃないよ!」

  女子数人の口による猛攻撃。
  絶対にかなうわけないのに、その時の私は無我夢中で、

「誰だって好きな人をあんな風に言われたら怒るでしょ?!何であんなに仲良かった友達のこと傷付けることできるのよ?!」

  別人のように、誰かが乗り移ってるみたいに叫んでた。

  でも、

「友達って誰のことさ? ゾンビと友達になった覚えないけど!」

  やはり、届かない。

「ウケるーーー!」

  笑う彼女を再びド突いた。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

はじまりの朝

さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。 ある出来事をきっかけに離れてしまう。 中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。 これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。 ✳『番外編〜はじまりの裏側で』  『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。

Zinnia‘s Miracle 〜25年目の奇跡

弘生
現代文学
なんだか優しいお話が書きたくなって、連載始めました。 保護猫「ジン」が、時間と空間を超えて見守り語り続けた「柊家」の人々。 「ジン」が天に昇ってから何度も季節は巡り、やがて25年目に奇跡が起こる。けれど、これは奇跡というよりも、「ジン」へのご褒美かもしれない。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

ここは世田谷豪徳寺

武者走走九郎or大橋むつお
青春
佐倉さくら 自己紹介するとたいていクスっと笑われる。 でも、名前ほどにおもしろい女子じゃない。 ないはずなんだけど、なんで、こんなに事件が多い? そんな佐倉さくらは、世田谷は豪徳寺の女子高生だぞ。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

煙草屋さんと小説家

男鹿七海
キャラ文芸
※プラトニックな関係のBL要素を含む日常ものです。 商店街の片隅にある小さな煙草屋を営む霧弥。日々の暮らしは静かで穏やかだが、幼馴染であり売れっ子作家の龍二が店を訪れるたびに、心の奥はざわめく。幼馴染としてでも、客としてでもない――その存在は、言葉にできないほど特別だ。 ある日、龍二の周囲に仕事仲間の女性が現れ、霧弥は初めて嫉妬を自覚する。自分の感情を否定しようとしても、触れた手の温もりや視線の距離が、心を正直にさせる。日常の中で少しずつ近づく二人の距離は、言葉ではなく、ささやかな仕草や沈黙に宿る。 そして夜――霧弥の小さな煙草屋で、龍二は初めて自分の想いを口にし、霧弥は返事として告白する。互いの手の温もりと目の奥の真剣さが、これまで言葉にできなかった気持ちを伝える瞬間。静かな日常の向こうに、確かな愛が芽吹く。 小さな煙草屋に灯る、柔らかく温かな恋の物語。

処理中です...