11 / 35
1. No pain, No gain.
10
しおりを挟む
「見間違いじゃないよ、覚えているもの。颯や佐環の車と比べて、やけに出っ張ているなって」
「やっぱりそうだよね。嗣乃が言うなら、間違いないな」
嗣乃は一度見たものを記憶し後から詳細に再現することができる、映像記憶を持っている。その才能を活かし、英語や中国語を習得。五人の内、真っ先に貿易会社への内定を勝ち取った。
とても優秀な彼女がお世辞にも一流と呼べないQ大学へ進学した理由は、特待生制度を受けるため。三人姉妹の長女である彼女は親に負担をかけたくなかったと語ってくれた。
前髪をターバンで上げ、明るい茶髪を後ろでまとめている。奥二重でアイラインを目じりまで引いたメイクは佐環とは異なるエキゾチックな魅力を持っている。
女優を目指してみればいいのに。
彼女の推しである舞台俳優の公演を観に行った時、直感的に思った。
ただの絵空事ではない。佐環と比べれば容姿は劣るかもしれない。しかし、天真爛漫でエネルギッシュな彼女は舞台の上が似合いそうだ。
「それより、飯食おう。腹減ってしょうがない」
颯が車の運転席から顔を出す。
「賛成。けど、帰り道のファミレスしか開いていないみたい」
俺は地図アプリで近くの飲食店を検索する。自然あふれる長閑な街だけど、あるのは山とファミレスとスーパーマーケットぐらい。
「食べられれば何でもいい。さ、出発!」
ギアをドライブに入れ、シートベルトをしながらハンドルを回す。緩いパーマのかかった髪がなびいた。鼻が高く、意志の強さを象徴するような眉毛と眼差しの強さ。CMに起用されそうな爽やかさがある。颯はスポーツ推薦で入学した。残念ながらケガが絶えず、思うように活躍できなくなり野球を辞めたと語っている。
ファミレスに着くと駐車場は混雑していたが、幸い六人掛けの席は空いていた。最近のファミレスはタブレット端末で注文するだけでなく、提供用のロボットの運用が始まっている。
ロボットが子供の前を通るたび、彼らは興味深々に観察したりはしゃいだりしている。一方俺たちはと言うと、全員スマートフォンに夢中だ。
財布を失くしてしまったため、料理を頼まずドリンクバーで我慢することにした。颯が戻って探そうかと気を利かせてくれたが、諦めると言うと勝矢が食事代を持ってくれることに。正直、空腹は限界にあったし、勝矢は遠慮しないでと言ってくれた。食欲そそる写真に指が吸いこまれる。
「あんな事しておいて、食べられるのかな」
「え?」
ハンバーグを頼もうとしたところで、ブレーキがかかる。
「私だったら無理だよ」
「佐環、よせ。あの事は忘れようと言ったはずだ」
「颯はいいよね。簡単に切り替えられるんだから」
「どういう意味だよ?」
嗣乃が横やりを入れ、それに対し颯は腕組みをして威圧的な姿勢を取った。
「ちょと二人とも。騒ぎを起こしたら本末転倒だから。それに、僕たちには話し合わなければいけないことがたくさんある」
勝矢が抑え気味の音量で止めに入った。佐環も心配そうに両者を見る。
俺はハンバーグではなくパンケーキを注文した後、「とりあえず、水飲んで落ち着こう」と人数分注いだお冷を渡す。軽快な音楽を鳴らしながら、配膳ロボットがすぐ横を通り過ぎた。
運命共同体。お互いの弱みや秘密を握り合わなければ始まらない。
「やっぱりそうだよね。嗣乃が言うなら、間違いないな」
嗣乃は一度見たものを記憶し後から詳細に再現することができる、映像記憶を持っている。その才能を活かし、英語や中国語を習得。五人の内、真っ先に貿易会社への内定を勝ち取った。
とても優秀な彼女がお世辞にも一流と呼べないQ大学へ進学した理由は、特待生制度を受けるため。三人姉妹の長女である彼女は親に負担をかけたくなかったと語ってくれた。
前髪をターバンで上げ、明るい茶髪を後ろでまとめている。奥二重でアイラインを目じりまで引いたメイクは佐環とは異なるエキゾチックな魅力を持っている。
女優を目指してみればいいのに。
彼女の推しである舞台俳優の公演を観に行った時、直感的に思った。
ただの絵空事ではない。佐環と比べれば容姿は劣るかもしれない。しかし、天真爛漫でエネルギッシュな彼女は舞台の上が似合いそうだ。
「それより、飯食おう。腹減ってしょうがない」
颯が車の運転席から顔を出す。
「賛成。けど、帰り道のファミレスしか開いていないみたい」
俺は地図アプリで近くの飲食店を検索する。自然あふれる長閑な街だけど、あるのは山とファミレスとスーパーマーケットぐらい。
「食べられれば何でもいい。さ、出発!」
ギアをドライブに入れ、シートベルトをしながらハンドルを回す。緩いパーマのかかった髪がなびいた。鼻が高く、意志の強さを象徴するような眉毛と眼差しの強さ。CMに起用されそうな爽やかさがある。颯はスポーツ推薦で入学した。残念ながらケガが絶えず、思うように活躍できなくなり野球を辞めたと語っている。
ファミレスに着くと駐車場は混雑していたが、幸い六人掛けの席は空いていた。最近のファミレスはタブレット端末で注文するだけでなく、提供用のロボットの運用が始まっている。
ロボットが子供の前を通るたび、彼らは興味深々に観察したりはしゃいだりしている。一方俺たちはと言うと、全員スマートフォンに夢中だ。
財布を失くしてしまったため、料理を頼まずドリンクバーで我慢することにした。颯が戻って探そうかと気を利かせてくれたが、諦めると言うと勝矢が食事代を持ってくれることに。正直、空腹は限界にあったし、勝矢は遠慮しないでと言ってくれた。食欲そそる写真に指が吸いこまれる。
「あんな事しておいて、食べられるのかな」
「え?」
ハンバーグを頼もうとしたところで、ブレーキがかかる。
「私だったら無理だよ」
「佐環、よせ。あの事は忘れようと言ったはずだ」
「颯はいいよね。簡単に切り替えられるんだから」
「どういう意味だよ?」
嗣乃が横やりを入れ、それに対し颯は腕組みをして威圧的な姿勢を取った。
「ちょと二人とも。騒ぎを起こしたら本末転倒だから。それに、僕たちには話し合わなければいけないことがたくさんある」
勝矢が抑え気味の音量で止めに入った。佐環も心配そうに両者を見る。
俺はハンバーグではなくパンケーキを注文した後、「とりあえず、水飲んで落ち着こう」と人数分注いだお冷を渡す。軽快な音楽を鳴らしながら、配膳ロボットがすぐ横を通り過ぎた。
運命共同体。お互いの弱みや秘密を握り合わなければ始まらない。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる