Rabbit-foot

Suzuki_Aphro

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1. No pain, No gain.

10

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「見間違いじゃないよ、覚えているもの。颯や佐環の車と比べて、やけに出っ張ているなって」

「やっぱりそうだよね。嗣乃が言うなら、間違いないな」

 嗣乃は一度見たものを記憶し後から詳細に再現することができる、映像記憶を持っている。その才能を活かし、英語や中国語を習得。五人の内、真っ先に貿易会社への内定を勝ち取った。

 とても優秀な彼女がお世辞にも一流と呼べないQ大学へ進学した理由は、特待生制度を受けるため。三人姉妹の長女である彼女は親に負担をかけたくなかったと語ってくれた。

 前髪をターバンで上げ、明るい茶髪を後ろでまとめている。奥二重でアイラインを目じりまで引いたメイクは佐環とは異なるエキゾチックな魅力を持っている。

 女優を目指してみればいいのに。

 彼女の推しである舞台俳優の公演を観に行った時、直感的に思った。

 ただの絵空事ではない。佐環と比べれば容姿は劣るかもしれない。しかし、天真爛漫でエネルギッシュな彼女は舞台の上が似合いそうだ。

「それより、飯食おう。腹減ってしょうがない」

 颯が車の運転席から顔を出す。

「賛成。けど、帰り道のファミレスしか開いていないみたい」

 俺は地図アプリで近くの飲食店を検索する。自然あふれる長閑な街だけど、あるのは山とファミレスとスーパーマーケットぐらい。

「食べられれば何でもいい。さ、出発!」

 ギアをドライブに入れ、シートベルトをしながらハンドルを回す。緩いパーマのかかった髪がなびいた。鼻が高く、意志の強さを象徴するような眉毛と眼差しの強さ。CMに起用されそうな爽やかさがある。颯はスポーツ推薦で入学した。残念ながらケガが絶えず、思うように活躍できなくなり野球を辞めたと語っている。

 ファミレスに着くと駐車場は混雑していたが、幸い六人掛けの席は空いていた。最近のファミレスはタブレット端末で注文するだけでなく、提供用のロボットの運用が始まっている。

 ロボットが子供の前を通るたび、彼らは興味深々に観察したりはしゃいだりしている。一方俺たちはと言うと、全員スマートフォンに夢中だ。

 財布を失くしてしまったため、料理を頼まずドリンクバーで我慢することにした。颯が戻って探そうかと気を利かせてくれたが、諦めると言うと勝矢が食事代を持ってくれることに。正直、空腹は限界にあったし、勝矢は遠慮しないでと言ってくれた。食欲そそる写真に指が吸いこまれる。

「あんな事しておいて、食べられるのかな」

「え?」

 ハンバーグを頼もうとしたところで、ブレーキがかかる。

「私だったら無理だよ」

「佐環、よせ。あの事は忘れようと言ったはずだ」

「颯はいいよね。簡単に切り替えられるんだから」

「どういう意味だよ?」

 嗣乃が横やりを入れ、それに対し颯は腕組みをして威圧的な姿勢を取った。

「ちょと二人とも。騒ぎを起こしたら本末転倒だから。それに、僕たちには話し合わなければいけないことがたくさんある」

 勝矢が抑え気味の音量で止めに入った。佐環も心配そうに両者を見る。

 俺はハンバーグではなくパンケーキを注文した後、「とりあえず、水飲んで落ち着こう」と人数分注いだお冷を渡す。軽快な音楽を鳴らしながら、配膳ロボットがすぐ横を通り過ぎた。

 運命共同体。お互いの弱みや秘密を握り合わなければ始まらない。
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