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第2章 王都
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発端は5年前、ライオネルが国王から秘密裏に呼び出された事だった。
『当主交代で忙しい中、出向かせてしまってすまないな』
『いいえ。陛下のお望みとあればいつでも駆けつけますよ』
『これは頼もしいな。父上もさぞかし鼻が高いだろう』
『それはわかりませんね』
『はっは、そう謙遜するな』
前ブルーナ侯爵は政治にあまり興味がなかった。争いを嫌い、愛に生きる人だった。だから疲れてしまったのだろう。
前置きの後にシステリア王国国王から聞かされたのは衝撃的なものだった。
『君は、リエト辺境領を知っているかい』
『もちろんです。隣国との国境部に位置し、我が国の砦と呼ばれています』
現在は隣国との交易が盛んで活気のある領地だが、戦時には前線となる。システリア王国が創設した歴史の始まりは、初代国王が隣国レパスとの戦いに勝利したことである。レパスとの戦争が起こった際には多くの国民が犠牲となった。特に辺境領での犠牲者は国内でも一番を争うほど多い。
『ああそうだ。それゆえに王家と国民からの支持が厚い。しかし代替わりをしてから、動きがきな臭くなっていてな。詳しい調査を君に任せたい」
「私にですか?』
『ああ、王家への忠誠を示す機会だと捉えてくれ。やってくれるな?』
『......はい。陛下のお望みとあれば謹んでお受けいたします』
そこからライオネルは独自の調査を開始した。怪しまれぬようにリエト辺境伯周辺のことを調べ上げ、必要とあれば腹心のレオナルドを現地へ向かわせた。
調査の結果判明したことは、リエト辺境伯の横領だった。国に虚偽の申告を行い、余分な大金を得ていたのだ。
そしてその金はどこへ行ったのか。いくら調査しても出てこなかったが、ある協力者によって情報がもたらされた。
『辺境伯が横領している金は、商人を介して隣国へ流れているようです』
リエト辺境伯が横領している金額は莫大だ。下手をすれば1つの領地を買い上げられてしまう。
それに加えて商人を介しているとなれば、物としてその金が流れ込んでいるということになる。
リエト辺境伯家の人間は頻繁に武器商人と接触をしているという情報は以前からライオネルの耳にも入っていたが、まさかここまで緊急性を要した事件へと発展していたとは夢にも思わなかった。
「おかげで魔法医療実験も極秘で行わなければいけなくなった。以前から王家は有力な貴族の助けを借りて、魔法を使い手術では治すことが困難な病気を治療する計画を練っていたんだけどね。貴族の中でも信頼できるのがうちだけになったので、その負担が全部こちらにきたというわけだ」
「そんなわけがあったのですね」
だからロランはレオナルドから、次の行き先を告げずに辺境領を出るように言ったのだ。
魔法医療の使用が一般化して、戦時中も使うことができるようになれば悪用されることは明白である。
適切に魔法医療を使用すれば、ロランのように社会復帰をする手伝いができるかもしれないが、使用方法を間違えれば、人間の心を壊す武器になりかねない。
「幸い、隣国へ送られている武器はブルーナ家がバレない程度に間引くようにしているけれど、それは単なる時間稼ぎだ」
ライオネルの考察では、リエト辺境伯はシステリア王国と隣国間で戦争を起こそうとしている。当主交代が行われ新たにリエト辺境伯となった人物は野心家であり、傲慢な人物だ。
理由はおそらく自家の利益のため。戦争は多くの資金が動く、戦争ビジネスが成功した場合その利益は計り知れない。
「ただ、リエト辺境伯が謀反を起こそうとしているというのはあくまで我々の考察に過ぎなかった。そこはさすがと言ったところでね、決定的な証拠がなかったんだ。でも、やっとピースが揃った」
そのピースこそが、ロランが男から聞き出した情報である。
男達がリエト辺境伯令嬢とブルーナ侯爵家の人間であるロランを拉致した理由。
真の目的とは、貴族達の注目を浴び素性を全て提示することでリエト辺境伯の悪行を詳らかにすることだった。
「今まで、武器商人たちが隣国へ商品を持ち込んだという証拠や、証言が見つからなかったんだ。口封じをしているんだろうと思っていたが、まさか商人たちごと隣国へ売り飛ばしていたとはね。極悪非道とはこのことだよ」
「本当に、許せませんね」
ロランは唇を噛み締めた。被害者は同じ平民だ。加えて、ロランが辺境領に住んでいた頃、リエト辺境伯による平民たちへの加害は行われていたということになる。
黒服の男達は皆、被害に遭った武器商人達の関係者であった。
辺境伯の言い付けで、隣国に武器を密輸していたことは立派な犯罪であるが、脅しを受けていたとなれば彼らもまた被害者となる。
『俺はお前が辺境領の出身だというからっていうのも、取引きに応じている理由のひとつだぜ。もし同じ土地に住んでいた平民に騙されたってなったら、この世界に諦めもつくだろうさ』
面会室で男と取引きをする際に言っていたことだ。
ロランは身が震え立つようだった。
若い頃、選んだ職業が異なればロランもまた、彼らと同じ道を辿っていたのかもしれない。
(何ひとつ許されるべきじゃない)
『当主交代で忙しい中、出向かせてしまってすまないな』
『いいえ。陛下のお望みとあればいつでも駆けつけますよ』
『これは頼もしいな。父上もさぞかし鼻が高いだろう』
『それはわかりませんね』
『はっは、そう謙遜するな』
前ブルーナ侯爵は政治にあまり興味がなかった。争いを嫌い、愛に生きる人だった。だから疲れてしまったのだろう。
前置きの後にシステリア王国国王から聞かされたのは衝撃的なものだった。
『君は、リエト辺境領を知っているかい』
『もちろんです。隣国との国境部に位置し、我が国の砦と呼ばれています』
現在は隣国との交易が盛んで活気のある領地だが、戦時には前線となる。システリア王国が創設した歴史の始まりは、初代国王が隣国レパスとの戦いに勝利したことである。レパスとの戦争が起こった際には多くの国民が犠牲となった。特に辺境領での犠牲者は国内でも一番を争うほど多い。
『ああそうだ。それゆえに王家と国民からの支持が厚い。しかし代替わりをしてから、動きがきな臭くなっていてな。詳しい調査を君に任せたい」
「私にですか?』
『ああ、王家への忠誠を示す機会だと捉えてくれ。やってくれるな?』
『......はい。陛下のお望みとあれば謹んでお受けいたします』
そこからライオネルは独自の調査を開始した。怪しまれぬようにリエト辺境伯周辺のことを調べ上げ、必要とあれば腹心のレオナルドを現地へ向かわせた。
調査の結果判明したことは、リエト辺境伯の横領だった。国に虚偽の申告を行い、余分な大金を得ていたのだ。
そしてその金はどこへ行ったのか。いくら調査しても出てこなかったが、ある協力者によって情報がもたらされた。
『辺境伯が横領している金は、商人を介して隣国へ流れているようです』
リエト辺境伯が横領している金額は莫大だ。下手をすれば1つの領地を買い上げられてしまう。
それに加えて商人を介しているとなれば、物としてその金が流れ込んでいるということになる。
リエト辺境伯家の人間は頻繁に武器商人と接触をしているという情報は以前からライオネルの耳にも入っていたが、まさかここまで緊急性を要した事件へと発展していたとは夢にも思わなかった。
「おかげで魔法医療実験も極秘で行わなければいけなくなった。以前から王家は有力な貴族の助けを借りて、魔法を使い手術では治すことが困難な病気を治療する計画を練っていたんだけどね。貴族の中でも信頼できるのがうちだけになったので、その負担が全部こちらにきたというわけだ」
「そんなわけがあったのですね」
だからロランはレオナルドから、次の行き先を告げずに辺境領を出るように言ったのだ。
魔法医療の使用が一般化して、戦時中も使うことができるようになれば悪用されることは明白である。
適切に魔法医療を使用すれば、ロランのように社会復帰をする手伝いができるかもしれないが、使用方法を間違えれば、人間の心を壊す武器になりかねない。
「幸い、隣国へ送られている武器はブルーナ家がバレない程度に間引くようにしているけれど、それは単なる時間稼ぎだ」
ライオネルの考察では、リエト辺境伯はシステリア王国と隣国間で戦争を起こそうとしている。当主交代が行われ新たにリエト辺境伯となった人物は野心家であり、傲慢な人物だ。
理由はおそらく自家の利益のため。戦争は多くの資金が動く、戦争ビジネスが成功した場合その利益は計り知れない。
「ただ、リエト辺境伯が謀反を起こそうとしているというのはあくまで我々の考察に過ぎなかった。そこはさすがと言ったところでね、決定的な証拠がなかったんだ。でも、やっとピースが揃った」
そのピースこそが、ロランが男から聞き出した情報である。
男達がリエト辺境伯令嬢とブルーナ侯爵家の人間であるロランを拉致した理由。
真の目的とは、貴族達の注目を浴び素性を全て提示することでリエト辺境伯の悪行を詳らかにすることだった。
「今まで、武器商人たちが隣国へ商品を持ち込んだという証拠や、証言が見つからなかったんだ。口封じをしているんだろうと思っていたが、まさか商人たちごと隣国へ売り飛ばしていたとはね。極悪非道とはこのことだよ」
「本当に、許せませんね」
ロランは唇を噛み締めた。被害者は同じ平民だ。加えて、ロランが辺境領に住んでいた頃、リエト辺境伯による平民たちへの加害は行われていたということになる。
黒服の男達は皆、被害に遭った武器商人達の関係者であった。
辺境伯の言い付けで、隣国に武器を密輸していたことは立派な犯罪であるが、脅しを受けていたとなれば彼らもまた被害者となる。
『俺はお前が辺境領の出身だというからっていうのも、取引きに応じている理由のひとつだぜ。もし同じ土地に住んでいた平民に騙されたってなったら、この世界に諦めもつくだろうさ』
面会室で男と取引きをする際に言っていたことだ。
ロランは身が震え立つようだった。
若い頃、選んだ職業が異なればロランもまた、彼らと同じ道を辿っていたのかもしれない。
(何ひとつ許されるべきじゃない)
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