1 / 2
なんでもあり〼
しおりを挟む
高田馬場の駅を出て、ふと気まぐれに裏道へと入った。
昼間なのに、どこか陰った通り。飲食店の看板は色褪せ、ビルの壁面には時代の埃が貼りついている。
――このへん、あまり来たことなかったな。
そんなことを考えながら、角を曲がったその先に、妙な露店が現れた。
「なんでもあり〼」
と書かれた赤いのぼりが、ぱたぱたとはためいている。
カラフルな布製パラソル。
そして、ガムテープで補強された折りたたみテーブルの上に、得体の知れない商品がずらりと並ぶ。
特に多いのが、さまざまな形の小さなガラス瓶。中には何やら液体が入っていた。
……その瞬間、脳裏に浮かんだのは――
池袋駅の北口から出た路地裏で、たまに現れるという「なんでもあり〼」の露店の都市伝説だった。
そんな馬鹿な、と思いながら近づいてみると、突然ひょいと男が現れた。
え、今、何もない空間から出てきた……?!
アフロが手入れされずに伸びきったような、ふわふわと広がった髪。
サングラスに、派手なアロハシャツ、黒いサルエルパンツ。
胡散臭さ100%、信用度マイナス300%。
「いらっしゃーい! さぁさぁ、見てくれたってかまわないッスよ~!」
「あの……ここって……高田馬場ですよね?
確かこのお店って……」
「細けぇことは気にすんな☆ 駅の気まぐれで場所がズレるんスよ~!」
はあ?
「池袋の北口に出るって聞いたんですけど?」
「いや~、最近の駅は自由人ッスから~」
どういう理屈だ。
「で、何を売ってるんですか?」
「なんでもあり〼ッス~! ほら、見て見て!
絶対♡起きられないオルゴール、全て叶うキラッ☆お守り、あとこれ、自己肯定感キャンディ~!」
「……全部、名前が怪しすぎるんですけど」
「みんなそう言うッス。でもね、これは全部“気の持ちよう”を売ってるんスよ~」
いや、それもう詐欺じゃん。
「ちなみにこれ、今いちばん人気なんスけど……転生ポーション。
死んだあと、行きたい異世界に行ける、かもしれないやつ~」
そう言って男は、ガラス瓶を指差す。
「かもしれないって」
「確率は五分五分! 人生も死後も運ッスよ☆」
「そもそも、ほんとに効くんですか?」
「効いたかどうかは、飲んだ人にしかわからないッス~!」
やっぱ詐欺では?
「今なら異世界行きガチャ券もセットでついてき〼!」
……どこで使うんだよ、そのガチャ券。
「試飲、してみます?」
「えーと、無料ですか?」
「一口だけ、ね。ただし、その一口が最後の一口になるかも~☆」
あ、そうなると実質無料かぁ、とぼんやり考えたそのとき。
男が、にやりとサングラスの奥で笑ったような気がした。
気がつけば、周囲の音が消えていた。
人通りのあるはずの裏道に、自分しかいない。
風もない。
音もない。
まるで、この場所だけ、切り離されてしまったような。
「……や、やめときます」
「残念~! また来てね~!」
男は軽くウインクして、親指を立てた。
その瞬間、ぐらりと視界が揺れて――
気づけば、自分は駅前に戻っていた。
露店も、裏道も、なかった。
その夜、検索してみると、やはりあの噂だけが引っかかった。
【都市伝説】池袋駅北口の「なんでもあり〼」露店。
売っているのは運命や願望。
その店に出会った者は、二度と同じ人生には戻れない――
あれは夢だったのか。
それとも、現実の隙間にある、もうひとつのレールだったのか。
――また会う気がする。
気まぐれな駅が、道をズラしたそのときに。
昼間なのに、どこか陰った通り。飲食店の看板は色褪せ、ビルの壁面には時代の埃が貼りついている。
――このへん、あまり来たことなかったな。
そんなことを考えながら、角を曲がったその先に、妙な露店が現れた。
「なんでもあり〼」
と書かれた赤いのぼりが、ぱたぱたとはためいている。
カラフルな布製パラソル。
そして、ガムテープで補強された折りたたみテーブルの上に、得体の知れない商品がずらりと並ぶ。
特に多いのが、さまざまな形の小さなガラス瓶。中には何やら液体が入っていた。
……その瞬間、脳裏に浮かんだのは――
池袋駅の北口から出た路地裏で、たまに現れるという「なんでもあり〼」の露店の都市伝説だった。
そんな馬鹿な、と思いながら近づいてみると、突然ひょいと男が現れた。
え、今、何もない空間から出てきた……?!
アフロが手入れされずに伸びきったような、ふわふわと広がった髪。
サングラスに、派手なアロハシャツ、黒いサルエルパンツ。
胡散臭さ100%、信用度マイナス300%。
「いらっしゃーい! さぁさぁ、見てくれたってかまわないッスよ~!」
「あの……ここって……高田馬場ですよね?
確かこのお店って……」
「細けぇことは気にすんな☆ 駅の気まぐれで場所がズレるんスよ~!」
はあ?
「池袋の北口に出るって聞いたんですけど?」
「いや~、最近の駅は自由人ッスから~」
どういう理屈だ。
「で、何を売ってるんですか?」
「なんでもあり〼ッス~! ほら、見て見て!
絶対♡起きられないオルゴール、全て叶うキラッ☆お守り、あとこれ、自己肯定感キャンディ~!」
「……全部、名前が怪しすぎるんですけど」
「みんなそう言うッス。でもね、これは全部“気の持ちよう”を売ってるんスよ~」
いや、それもう詐欺じゃん。
「ちなみにこれ、今いちばん人気なんスけど……転生ポーション。
死んだあと、行きたい異世界に行ける、かもしれないやつ~」
そう言って男は、ガラス瓶を指差す。
「かもしれないって」
「確率は五分五分! 人生も死後も運ッスよ☆」
「そもそも、ほんとに効くんですか?」
「効いたかどうかは、飲んだ人にしかわからないッス~!」
やっぱ詐欺では?
「今なら異世界行きガチャ券もセットでついてき〼!」
……どこで使うんだよ、そのガチャ券。
「試飲、してみます?」
「えーと、無料ですか?」
「一口だけ、ね。ただし、その一口が最後の一口になるかも~☆」
あ、そうなると実質無料かぁ、とぼんやり考えたそのとき。
男が、にやりとサングラスの奥で笑ったような気がした。
気がつけば、周囲の音が消えていた。
人通りのあるはずの裏道に、自分しかいない。
風もない。
音もない。
まるで、この場所だけ、切り離されてしまったような。
「……や、やめときます」
「残念~! また来てね~!」
男は軽くウインクして、親指を立てた。
その瞬間、ぐらりと視界が揺れて――
気づけば、自分は駅前に戻っていた。
露店も、裏道も、なかった。
その夜、検索してみると、やはりあの噂だけが引っかかった。
【都市伝説】池袋駅北口の「なんでもあり〼」露店。
売っているのは運命や願望。
その店に出会った者は、二度と同じ人生には戻れない――
あれは夢だったのか。
それとも、現実の隙間にある、もうひとつのレールだったのか。
――また会う気がする。
気まぐれな駅が、道をズラしたそのときに。
0
あなたにおすすめの小説
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
義弟の婚約者が私の婚約者の番でした
五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」
金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。
自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。
視界の先には
私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
過程をすっ飛ばすことにしました
こうやさい
ファンタジー
ある日、前世の乙女ゲームの中に悪役令嬢として転生したことに気づいたけど、ここどう考えても生活しづらい。
どうせざまぁされて追放されるわけだし、過程すっ飛ばしてもよくね?
そのいろいろが重要なんだろうと思いつつそれもすっ飛ばしました(爆)。
深く考えないでください。
ざまぁされるための努力とかしたくない
こうやさい
ファンタジー
ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。
けどなんか環境違いすぎるんだけど?
例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。
作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。
中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。
……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる