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1.恋愛初心者
2.好きってなに?
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今日も今日とて、掃除を頼まれる。
この後、生徒会の集まりがあるんだけどなあ…と困惑しながらも、さっさと終わらせることに決めた。
…なのに、両角さんはまた寝ている。1時間目から寝ていて、3時間目の途中から起きて、お昼を食べて、また放課後になるまで寝ていた。
前のように、彼女の周りを避けるように掃除すればいい。わかっていても、昨日のことがあったからか、なんだか居心地が悪い。
なるべく気にしないように、なるべく起こさないように、いつにも増して気をつけて掃除をした。
終わり際、なんだか視線を感じて両角さんを見ると、枕のように机に置いていた腕の隙間から彼女の瞳が見えた。
極力無表情にジーッと彼女を見ていると、彼女の肩が震え始める。
「起きてるなら少しは手伝ってくれてもいいんじゃない?」
少し唇を尖らせて、フゥッと息を吐く。
「ごめんごめん」
参りましたと言うように両手を挙げて、それでも笑いを堪えきれていない。
「断ればいいのに」
彼女はひょうきん者みたいに眉を上げて、簡単に言う。
「べつに…掃除は嫌いじゃないから」
「ふーん」
頬杖をついて、優しい笑みを浮かべた。コロコロ変わる表情…見ていられなくなって、目をそらす。
両角さんはあくびをしながら両手を挙げて、大きく伸びた。教室の様子をうかがってから「もう終わってるじゃん」と笑う。
「両角さんがもっと早く起きてくれれば…」
そこまで言って、こういうところが人に好かれないのだと思い出す。
人に責任を追求したり、正論で言い負かそうとしたり…常に正しくあろうとすることが、必ずしも正解ではないのだと、過去の経験で散々思い知ったことだった。
「へへへ、だって眠いんだもん」
でも彼女は、そんなことまるで気にしないみたいに笑った。トクンと鼓動が脈を打つ。
きっとこういうところだ。
この人が人から好かれるのは、こんな優しい笑顔を見させてくれるからなんだ。
「先輩!」
ガラガラと扉が開いた。
「ああ、日住君」
「あっ、すみません。取り込み中でしたか」
生徒会で書記をしている日住君は、数少ない、私の友人と言える。とは言え後輩だから、親しい友人という距離感ではない。
たまに生徒会の懇親会が開かれて、みんなでハイキングやバーベキューをする。その時にいつも話しかけてくれるから、つい嬉しくて目をかけている。
彼とは中学の時も一緒に生徒会をしていて、彼が同じ高校に入学したので、私から生徒会に誘ったというのも、目をかけている理由の1つだ。
生徒会に入りたいと言う人は少ない。やることが雑務(裏方)ばかりだし、先生と生徒の橋渡し的な役割だから、先生から仕事を押し付けられることも多い。
だから生徒会は、常に人員を募集している…という状況なのだ。
本来なら生徒会長を決めるための選挙みたいなのもあるはずなのだけど、この学校ではほとんど行われないらしい。毎年生徒会の中から1人が立候補して、その1人しか立候補が出ないので選挙は行われず、自動的にその人が生徒会長になる。
そのくらい、生徒会は不人気だった。
「空井先輩の姿が見えたので一緒に生徒会室に行ければと思ったんですけど…」
日住君はチラリと両角さんを見遣る。両角さんも体をひねって日住君を見ていた。
「ありがとう。もう終わったから、一緒に行こう」
「はい!」
手元にあった箒と塵取りをロッカーにしまう。
「そっかあ」
両角さんは左の頬を膨らませて私を見た。
「何?」
「今日は用事があるから掃除が早かったんだね」
「ああ…うん、そうだね」
「それなら手伝えばよかった」
椅子の背もたれに頬杖をついて、優しく笑う。少し伸びた前髪が目にかかって、上目遣いになる。
「今日も寝てれば、空井さんにいたずらしてもらえるかなって楽しみにしてたんだけど」
「え!?ちょっ…それは…!」
「いたずら?」
日住君の視線を感じて、顔に熱がこもる。
ニヒヒと笑って、両角さんは鞄を取って立ち上がる。私の肩をポンポンと叩いた。「また明日ね」と耳元で囁いて、日住君に笑顔を振りまいて、彼女は去っていった。
両角さんの香りがふわりと漂う。囁かれた耳元がなんだかくすぐったくて、ふわふわする。
「あの人」
日住君の声で、意識が戻ってくる。
「両角さん。いつも寝てるのに、なぜかクラスの人気者なんだよ」
「ああ、はい。知ってます」
「知ってるの?」
「クラスの女子が、かっこいいって騒いでました」
「へえ…」
学年をも超えて人気者だったなんて、知らなかった。部活もしてないし、どうやったら存在が知られるんだろう?
「確かに、かっこいいっすね」
困ったような笑顔をする日住君。日住君はもしかして、両角さんをかっこいいと言っていたクラスの女子が気になってたりするのだろうか?…なんて邪な考えが浮かぶ。
「日住君、行こっか」
「はい!」
この後、生徒会の集まりがあるんだけどなあ…と困惑しながらも、さっさと終わらせることに決めた。
…なのに、両角さんはまた寝ている。1時間目から寝ていて、3時間目の途中から起きて、お昼を食べて、また放課後になるまで寝ていた。
前のように、彼女の周りを避けるように掃除すればいい。わかっていても、昨日のことがあったからか、なんだか居心地が悪い。
なるべく気にしないように、なるべく起こさないように、いつにも増して気をつけて掃除をした。
終わり際、なんだか視線を感じて両角さんを見ると、枕のように机に置いていた腕の隙間から彼女の瞳が見えた。
極力無表情にジーッと彼女を見ていると、彼女の肩が震え始める。
「起きてるなら少しは手伝ってくれてもいいんじゃない?」
少し唇を尖らせて、フゥッと息を吐く。
「ごめんごめん」
参りましたと言うように両手を挙げて、それでも笑いを堪えきれていない。
「断ればいいのに」
彼女はひょうきん者みたいに眉を上げて、簡単に言う。
「べつに…掃除は嫌いじゃないから」
「ふーん」
頬杖をついて、優しい笑みを浮かべた。コロコロ変わる表情…見ていられなくなって、目をそらす。
両角さんはあくびをしながら両手を挙げて、大きく伸びた。教室の様子をうかがってから「もう終わってるじゃん」と笑う。
「両角さんがもっと早く起きてくれれば…」
そこまで言って、こういうところが人に好かれないのだと思い出す。
人に責任を追求したり、正論で言い負かそうとしたり…常に正しくあろうとすることが、必ずしも正解ではないのだと、過去の経験で散々思い知ったことだった。
「へへへ、だって眠いんだもん」
でも彼女は、そんなことまるで気にしないみたいに笑った。トクンと鼓動が脈を打つ。
きっとこういうところだ。
この人が人から好かれるのは、こんな優しい笑顔を見させてくれるからなんだ。
「先輩!」
ガラガラと扉が開いた。
「ああ、日住君」
「あっ、すみません。取り込み中でしたか」
生徒会で書記をしている日住君は、数少ない、私の友人と言える。とは言え後輩だから、親しい友人という距離感ではない。
たまに生徒会の懇親会が開かれて、みんなでハイキングやバーベキューをする。その時にいつも話しかけてくれるから、つい嬉しくて目をかけている。
彼とは中学の時も一緒に生徒会をしていて、彼が同じ高校に入学したので、私から生徒会に誘ったというのも、目をかけている理由の1つだ。
生徒会に入りたいと言う人は少ない。やることが雑務(裏方)ばかりだし、先生と生徒の橋渡し的な役割だから、先生から仕事を押し付けられることも多い。
だから生徒会は、常に人員を募集している…という状況なのだ。
本来なら生徒会長を決めるための選挙みたいなのもあるはずなのだけど、この学校ではほとんど行われないらしい。毎年生徒会の中から1人が立候補して、その1人しか立候補が出ないので選挙は行われず、自動的にその人が生徒会長になる。
そのくらい、生徒会は不人気だった。
「空井先輩の姿が見えたので一緒に生徒会室に行ければと思ったんですけど…」
日住君はチラリと両角さんを見遣る。両角さんも体をひねって日住君を見ていた。
「ありがとう。もう終わったから、一緒に行こう」
「はい!」
手元にあった箒と塵取りをロッカーにしまう。
「そっかあ」
両角さんは左の頬を膨らませて私を見た。
「何?」
「今日は用事があるから掃除が早かったんだね」
「ああ…うん、そうだね」
「それなら手伝えばよかった」
椅子の背もたれに頬杖をついて、優しく笑う。少し伸びた前髪が目にかかって、上目遣いになる。
「今日も寝てれば、空井さんにいたずらしてもらえるかなって楽しみにしてたんだけど」
「え!?ちょっ…それは…!」
「いたずら?」
日住君の視線を感じて、顔に熱がこもる。
ニヒヒと笑って、両角さんは鞄を取って立ち上がる。私の肩をポンポンと叩いた。「また明日ね」と耳元で囁いて、日住君に笑顔を振りまいて、彼女は去っていった。
両角さんの香りがふわりと漂う。囁かれた耳元がなんだかくすぐったくて、ふわふわする。
「あの人」
日住君の声で、意識が戻ってくる。
「両角さん。いつも寝てるのに、なぜかクラスの人気者なんだよ」
「ああ、はい。知ってます」
「知ってるの?」
「クラスの女子が、かっこいいって騒いでました」
「へえ…」
学年をも超えて人気者だったなんて、知らなかった。部活もしてないし、どうやったら存在が知られるんだろう?
「確かに、かっこいいっすね」
困ったような笑顔をする日住君。日住君はもしかして、両角さんをかっこいいと言っていたクラスの女子が気になってたりするのだろうか?…なんて邪な考えが浮かぶ。
「日住君、行こっか」
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