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2.変化
48.初めて
マンションの前につく。
「永那ちゃん、送ってくれてありがとう」
そう言うと、永那ちゃんが笑う。
私の目元をさすって「穂、まだ目赤いよ」と言った。
「もう…帰ったら冷やすよ」
「うん、そうしな」
「じゃあ、また明日ね」
「うん、また明日」
私がエレベーターに乗るまで見送ってくれる。
見えなくなるまで見ててくれる…見えなくなるまで、何度振り返ってもそこにいてくれる…些細なことかもしれないけど、そういう1つ1つに愛を感じる。
たぶん、私が永那ちゃんにしてあげられることなんてほんの少ししかない。
でも、せめて私といる時間だけは、彼女にとっての癒やしであってほしい。
彼女が私に安心感を与えてくれるのと同じように、永那ちゃんが私と一緒にいてホッとできるような存在でありたい。
家に帰って、手を洗ったり目を冷やしたり明日の授業の準備をした後、夕飯の支度をする。
誉が珍しく頭を捻って宿題をしている。
たまに呼ばれて、わからないところを聞かれる。
頭を撫でてあげると、嬉しそうに撫でられるのが可愛い。
ご飯を作り終えても、7時頃までは食べない。
お母さんが早く帰ってきたら、一緒に食べられるから。
それまでの間、私も誉の隣に座って勉強をする。
永那ちゃんはもう家についたかな?なんて考えていたら、お母さんが帰ってきた。
職場で貰ってきたお菓子を手にして、お母さんは私達に笑いかける。
思うところがないわけではない。
でも私は今、けっこう幸せだ。
「お母さん」
誉が寝た後、パソコンとにらめっこしているお母さんに声をかけた。
「んー?」
眉間にシワを寄せて、コーヒーを一口飲む。
「私、好きな人できた」
お母さんがコーヒーを吹き出して、パソコンを濡らす。
慌てて2人でティッシュを取る。
「え、えーっと、そうなの?」
どこか嬉しそうにソワソワしているお母さん。
私はお母さんの向かいに座る。
「うん。付き合ってるの」
お母さんの目が見開かれる。
鼻の下を伸ばして、鼻の穴まで大きくなってる。
思わず笑ってしまう。
こんなこと、お母さんに話す気なんて全然なかったのに、今日永那ちゃんと一緒に帰ったからか、なんとなく言いたくなった。
「よ、よかったね!…なんか、お母さん、穂がそんなこと教えてくれるなんて思わなかったから…えー…どうしよう?」
「どうしようってなに?」
私が笑うと、落ち着かないのか、もう濡れていないのに、ティッシュでテーブルを拭く。
私は深呼吸する。
「でもね」
唾を飲む。
不思議と緊張はしていない。なんでだろう?
手に汗はかいている。
それでも、落ち着いている。
この気持ちが確かなものだと思えているからかな?
「相手は、女の子なの」
お母さんが何度もパチパチと瞬きする。
少しの沈黙がおりる。
お母さんが口をパクパク動かして、何か言おうとするけど、何も出てこないみたいだった。
「私、女の子だからその子のことを好きになったんじゃない。性別は正直どうでもよくて、ただ、その子を好きになったの」
「…そう」
ようやくお母さんは声を発した。
「お母さんは、傷ついた?」
お母さんがハッとした、首をブンブン横に振る。
「傷つかないよ!…嬉しい!穂が好きになった人なら、お母さん、誰でも応援する。…ちょっと、驚いただけ」
フフッとお母さんは笑って、コーヒーを飲んだ。
「ちなみに、誉は…?」
「言ってないよ。誉に言ったら街中に広まりそうだし」
お母さんがお腹を抱えて笑う。
「あ、あの…もしかして、前に服を選んでくれたっていう…?」
「ああ、そう」
お母さんの顔がパアッと明るくなる。
今まで、こんな顔見たことなかったかもしれない。
私が見てきたのは、いつも仕事をする姿で。
その姿は“お母さん”でも“女性”でもないように思えていた。
お母さんって、私のお母さんなんだな…と思う。
お母さんって、恋話が好きな普通の女性なんだな…と思う。
「あ、それで。今度の土曜日、家に呼びたいんだけど」
「えぇ!」
「だめ?」
「いや、いいよ!全然大丈夫!!」
「テスト前だから、一緒に勉強するだけだけどね」
そう言って、私は立ち上がった。
「じゃあ、おやすみ」
「…うん、おやすみ」
お母さんの視線を背中に感じながら、部屋に入る。
電気をつけないままベッドに寝転がって、ため息をついた。
スマホを見る。
勝手にお母さんに言っちゃった。
永那ちゃんに相談してからのほうがよかったかな?
そんなことを思っても後の祭り。
『ごめん。永那ちゃんに相談もせずに、お母さんに永那ちゃんと付き合ってるって言っちゃった』
怒るかな?呆れるかな?それとも笑うかな?
どんな表情も思い浮かぶ。
モソモソと布団に潜り込んで、スマホの画面に視線を戻す。
当然既読はつかない。
スマホを握りしめたまま、私は夢の中に誘われる。
「永那ちゃん、送ってくれてありがとう」
そう言うと、永那ちゃんが笑う。
私の目元をさすって「穂、まだ目赤いよ」と言った。
「もう…帰ったら冷やすよ」
「うん、そうしな」
「じゃあ、また明日ね」
「うん、また明日」
私がエレベーターに乗るまで見送ってくれる。
見えなくなるまで見ててくれる…見えなくなるまで、何度振り返ってもそこにいてくれる…些細なことかもしれないけど、そういう1つ1つに愛を感じる。
たぶん、私が永那ちゃんにしてあげられることなんてほんの少ししかない。
でも、せめて私といる時間だけは、彼女にとっての癒やしであってほしい。
彼女が私に安心感を与えてくれるのと同じように、永那ちゃんが私と一緒にいてホッとできるような存在でありたい。
家に帰って、手を洗ったり目を冷やしたり明日の授業の準備をした後、夕飯の支度をする。
誉が珍しく頭を捻って宿題をしている。
たまに呼ばれて、わからないところを聞かれる。
頭を撫でてあげると、嬉しそうに撫でられるのが可愛い。
ご飯を作り終えても、7時頃までは食べない。
お母さんが早く帰ってきたら、一緒に食べられるから。
それまでの間、私も誉の隣に座って勉強をする。
永那ちゃんはもう家についたかな?なんて考えていたら、お母さんが帰ってきた。
職場で貰ってきたお菓子を手にして、お母さんは私達に笑いかける。
思うところがないわけではない。
でも私は今、けっこう幸せだ。
「お母さん」
誉が寝た後、パソコンとにらめっこしているお母さんに声をかけた。
「んー?」
眉間にシワを寄せて、コーヒーを一口飲む。
「私、好きな人できた」
お母さんがコーヒーを吹き出して、パソコンを濡らす。
慌てて2人でティッシュを取る。
「え、えーっと、そうなの?」
どこか嬉しそうにソワソワしているお母さん。
私はお母さんの向かいに座る。
「うん。付き合ってるの」
お母さんの目が見開かれる。
鼻の下を伸ばして、鼻の穴まで大きくなってる。
思わず笑ってしまう。
こんなこと、お母さんに話す気なんて全然なかったのに、今日永那ちゃんと一緒に帰ったからか、なんとなく言いたくなった。
「よ、よかったね!…なんか、お母さん、穂がそんなこと教えてくれるなんて思わなかったから…えー…どうしよう?」
「どうしようってなに?」
私が笑うと、落ち着かないのか、もう濡れていないのに、ティッシュでテーブルを拭く。
私は深呼吸する。
「でもね」
唾を飲む。
不思議と緊張はしていない。なんでだろう?
手に汗はかいている。
それでも、落ち着いている。
この気持ちが確かなものだと思えているからかな?
「相手は、女の子なの」
お母さんが何度もパチパチと瞬きする。
少しの沈黙がおりる。
お母さんが口をパクパク動かして、何か言おうとするけど、何も出てこないみたいだった。
「私、女の子だからその子のことを好きになったんじゃない。性別は正直どうでもよくて、ただ、その子を好きになったの」
「…そう」
ようやくお母さんは声を発した。
「お母さんは、傷ついた?」
お母さんがハッとした、首をブンブン横に振る。
「傷つかないよ!…嬉しい!穂が好きになった人なら、お母さん、誰でも応援する。…ちょっと、驚いただけ」
フフッとお母さんは笑って、コーヒーを飲んだ。
「ちなみに、誉は…?」
「言ってないよ。誉に言ったら街中に広まりそうだし」
お母さんがお腹を抱えて笑う。
「あ、あの…もしかして、前に服を選んでくれたっていう…?」
「ああ、そう」
お母さんの顔がパアッと明るくなる。
今まで、こんな顔見たことなかったかもしれない。
私が見てきたのは、いつも仕事をする姿で。
その姿は“お母さん”でも“女性”でもないように思えていた。
お母さんって、私のお母さんなんだな…と思う。
お母さんって、恋話が好きな普通の女性なんだな…と思う。
「あ、それで。今度の土曜日、家に呼びたいんだけど」
「えぇ!」
「だめ?」
「いや、いいよ!全然大丈夫!!」
「テスト前だから、一緒に勉強するだけだけどね」
そう言って、私は立ち上がった。
「じゃあ、おやすみ」
「…うん、おやすみ」
お母さんの視線を背中に感じながら、部屋に入る。
電気をつけないままベッドに寝転がって、ため息をついた。
スマホを見る。
勝手にお母さんに言っちゃった。
永那ちゃんに相談してからのほうがよかったかな?
そんなことを思っても後の祭り。
『ごめん。永那ちゃんに相談もせずに、お母さんに永那ちゃんと付き合ってるって言っちゃった』
怒るかな?呆れるかな?それとも笑うかな?
どんな表情も思い浮かぶ。
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スマホを握りしめたまま、私は夢の中に誘われる。
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