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3.成長
129.噂
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「するわけないじゃん」
不貞腐れて、また私の肩に頭を乗せる。
「そうだよね…」
永那ちゃんがまた体を起こす。
忙しないなあ。
「穂、信じたの?」
「ううん、信じてないけど」
「けど?」
「噂では、キスしてたのが授業中だったらしくて…ほら、2人が授業に戻ってこなかった日があったでしょ?それで少し不安になったの」
永那ちゃんの眉間のシワがなくなって、ボーッと視線を上に向ける。
「永那ちゃん…?」
「それは…見間違いだな」
「見間違い?」
永那ちゃんがため息をつく。
「たしかにあの日、千陽に迫られてビビった」
衝撃の事実を知らされて、胸がズキリと痛む。
「せ、迫られたの?」
「うん、なんか、壁に追いやられて。でも、ちゃんと“やめろ”って言ったよ?」
「そう、なんだ…」
そういうことは、早く知りたかった…。
「穂?本当だよ?」
永那ちゃんの瞳が不安そうに揺らぐ。
「あ、うん。わかってるよ」
「よかった」
永那ちゃんが頭を撫でてくれる。
永那ちゃんはまた私の肩に頭を乗せて、目を閉じた。
すぐに寝息が聞こえてきて、私はなんとも言えない気持ちを抱えたまま、電車に揺られた。
永那ちゃんの家の最寄り駅について彼女を起こすと、もう体がフラフラしていた。
「永那ちゃん、熱あるんじゃないの?」
「んー?大丈夫だよー」
彼女の額に手を当てると、少し熱いかな?くらいで、正確にわからない。
「家に風邪薬ある?」
「ん?うん」
「ゼリーとかは?」
「ない」
永那ちゃんは何度も瞬きをして、明らかに具合が悪そうだった。
私は永那ちゃんに寄りかかられながら歩く。
やっぱり早く帰してよかった…。
なんとかコンビニに寄ってゼリーを買い占める。
念のため額に貼る冷却シートも買っておいた。
玄関前まで連れて行くと、顎を上げられて、触れるだけの口付けを交わす。
「ありがと、穂。じゃあ、また月曜日ね。会えて嬉しかった」
少し顔が赤い気がして額に触れようとしたけど「大丈夫」と笑みを浮かべられる。
ポンポンと頭を撫でられて、彼女は家に入っていった。
しばらくドアをジッと見つめていた。
お母さんは永那ちゃんのこと見れるの?
本当に大丈夫なの?
ちゃんと食べられるの?
薬も飲める?
服、着替えられる?
不安じゃない?
寂しくない?
無理してるんじゃないの?
いろんな言葉が脳内に溢れ出て来るのに、金属の扉からは何も返ってこない。
アパートの別の家の住人がこちらを見ているのに気づいて、私は慌てて帰った。
「姉ちゃん、おかえり」
「ただいま」
「どうしたの?」
「永那ちゃん、風邪うつったかも」
「え…マジか…」
「やっぱり来させちゃダメだったよね…」
私は玄関にしゃがみこんで、頭を抱えた。
「姉ちゃん、看病してあげたら?…俺のせいだけど」
「ちょっと家庭の事情があって、家にお邪魔できないの」
「じゃあ、家に泊まってもらえばよかったじゃん!」
「それも…だめなの…」
「なんで?」
「なんでも!」
つい苛立って、大声をあげる。
「…ごめんなさい」
ハッとして、顔を上げる。
「あ、いや。私も、ごめんね。誉、まだ万全じゃないんだから、寝てな?」
「…うん。…俺、ちゃんと、これからは気をつけるから。雨、当たらないように」
しょんぼりしながら肩を落として、誉は部屋に戻った。
そうだ。
あのとき、私がすぐに誉のびしょ濡れの状態に気づいていれば…。
…誉が熱を出した日、永那ちゃんは“たぶん私のせい”と言っていた。
あのときは意味がわからなかったけど、今ようやくわかった。
私が玄関に行ける状態じゃなかったから…だから、永那ちゃんが誉にタオルをわたしに行ってくれた。
でも誉は適当に拭いて、着替えもせずエアコンに当たって、風邪を引いた。
…ああ。申し訳ない。
永那ちゃんのせいなんかじゃないのに。
あのとき私がめんどくさがらずに、すぐに服を着て確認すればよかったんだ。
それに。
常に睡眠不足な永那ちゃんに、やっぱり任せるべきじゃなかった。
つい甘えた。
彼女の“大丈夫”を信じちゃいけなかった。
…大丈夫じゃないに決まってる。
しかもあのクマ…一体どのくらい起きていたの?
土曜、日曜と連絡がなかった。
月曜日の朝『ごめん、今日行けない』と連絡があって『何か必要な物ある?買って玄関に置いておくよ?』と返事をしたけど、その返事はなかった。
火曜日の朝『大丈夫、だいぶ良くなったよ。…でも、今日も行けない。明日も行けないかも。かっこつけといて、一緒に行けなくてごめん』と連絡がきた。
『気にしないで、ゆっくり休んでね』
返事はもちろん、なかった。
不貞腐れて、また私の肩に頭を乗せる。
「そうだよね…」
永那ちゃんがまた体を起こす。
忙しないなあ。
「穂、信じたの?」
「ううん、信じてないけど」
「けど?」
「噂では、キスしてたのが授業中だったらしくて…ほら、2人が授業に戻ってこなかった日があったでしょ?それで少し不安になったの」
永那ちゃんの眉間のシワがなくなって、ボーッと視線を上に向ける。
「永那ちゃん…?」
「それは…見間違いだな」
「見間違い?」
永那ちゃんがため息をつく。
「たしかにあの日、千陽に迫られてビビった」
衝撃の事実を知らされて、胸がズキリと痛む。
「せ、迫られたの?」
「うん、なんか、壁に追いやられて。でも、ちゃんと“やめろ”って言ったよ?」
「そう、なんだ…」
そういうことは、早く知りたかった…。
「穂?本当だよ?」
永那ちゃんの瞳が不安そうに揺らぐ。
「あ、うん。わかってるよ」
「よかった」
永那ちゃんが頭を撫でてくれる。
永那ちゃんはまた私の肩に頭を乗せて、目を閉じた。
すぐに寝息が聞こえてきて、私はなんとも言えない気持ちを抱えたまま、電車に揺られた。
永那ちゃんの家の最寄り駅について彼女を起こすと、もう体がフラフラしていた。
「永那ちゃん、熱あるんじゃないの?」
「んー?大丈夫だよー」
彼女の額に手を当てると、少し熱いかな?くらいで、正確にわからない。
「家に風邪薬ある?」
「ん?うん」
「ゼリーとかは?」
「ない」
永那ちゃんは何度も瞬きをして、明らかに具合が悪そうだった。
私は永那ちゃんに寄りかかられながら歩く。
やっぱり早く帰してよかった…。
なんとかコンビニに寄ってゼリーを買い占める。
念のため額に貼る冷却シートも買っておいた。
玄関前まで連れて行くと、顎を上げられて、触れるだけの口付けを交わす。
「ありがと、穂。じゃあ、また月曜日ね。会えて嬉しかった」
少し顔が赤い気がして額に触れようとしたけど「大丈夫」と笑みを浮かべられる。
ポンポンと頭を撫でられて、彼女は家に入っていった。
しばらくドアをジッと見つめていた。
お母さんは永那ちゃんのこと見れるの?
本当に大丈夫なの?
ちゃんと食べられるの?
薬も飲める?
服、着替えられる?
不安じゃない?
寂しくない?
無理してるんじゃないの?
いろんな言葉が脳内に溢れ出て来るのに、金属の扉からは何も返ってこない。
アパートの別の家の住人がこちらを見ているのに気づいて、私は慌てて帰った。
「姉ちゃん、おかえり」
「ただいま」
「どうしたの?」
「永那ちゃん、風邪うつったかも」
「え…マジか…」
「やっぱり来させちゃダメだったよね…」
私は玄関にしゃがみこんで、頭を抱えた。
「姉ちゃん、看病してあげたら?…俺のせいだけど」
「ちょっと家庭の事情があって、家にお邪魔できないの」
「じゃあ、家に泊まってもらえばよかったじゃん!」
「それも…だめなの…」
「なんで?」
「なんでも!」
つい苛立って、大声をあげる。
「…ごめんなさい」
ハッとして、顔を上げる。
「あ、いや。私も、ごめんね。誉、まだ万全じゃないんだから、寝てな?」
「…うん。…俺、ちゃんと、これからは気をつけるから。雨、当たらないように」
しょんぼりしながら肩を落として、誉は部屋に戻った。
そうだ。
あのとき、私がすぐに誉のびしょ濡れの状態に気づいていれば…。
…誉が熱を出した日、永那ちゃんは“たぶん私のせい”と言っていた。
あのときは意味がわからなかったけど、今ようやくわかった。
私が玄関に行ける状態じゃなかったから…だから、永那ちゃんが誉にタオルをわたしに行ってくれた。
でも誉は適当に拭いて、着替えもせずエアコンに当たって、風邪を引いた。
…ああ。申し訳ない。
永那ちゃんのせいなんかじゃないのに。
あのとき私がめんどくさがらずに、すぐに服を着て確認すればよかったんだ。
それに。
常に睡眠不足な永那ちゃんに、やっぱり任せるべきじゃなかった。
つい甘えた。
彼女の“大丈夫”を信じちゃいけなかった。
…大丈夫じゃないに決まってる。
しかもあのクマ…一体どのくらい起きていたの?
土曜、日曜と連絡がなかった。
月曜日の朝『ごめん、今日行けない』と連絡があって『何か必要な物ある?買って玄関に置いておくよ?』と返事をしたけど、その返事はなかった。
火曜日の朝『大丈夫、だいぶ良くなったよ。…でも、今日も行けない。明日も行けないかも。かっこつけといて、一緒に行けなくてごめん』と連絡がきた。
『気にしないで、ゆっくり休んでね』
返事はもちろん、なかった。
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