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4.踏み込む
189.文化祭準備
「どうして、みんなに言ったの?」
永那ちゃんはため息をつく。
「わからない。…ただ、千陽に盗られるかもって思った。…そのうち、穂に…呆れられるかもって…。全然一緒にいられない私なんかよりも、もっと一緒にいてくれる誰かに…盗られるかもって」
腕の中に顔をうずめてしまう。
「ごめんね」
くぐもった声。
…夏休み、言葉を尽くしたつもりだった。
私からすれば、永那ちゃんが与えてくれたものが全て。
永那ちゃん以外なんて…あり得ないのに。
でも、どれだけ言葉で言われても、現実的に、物理的に、一緒にいられないという不安は消えてはくれない。
それなら。
「永那ちゃん」
呼ぶと、目だけこちらに向けてくれる。
「私、永那ちゃんのお母さんに会ってみたい」
全く話の脈絡が読めない様子で、目をパチクリさせている。
永那ちゃんは体を起こして、左眉を上げる。
「ど、どういうこと?」
「永那ちゃんが、私と一緒にいられないことが不安なら、一緒にいる時間を増やせればいいんだと思ったの」
首を捻って、眉間にシワを寄せる。
「お母さんは、永那ちゃんがいれば、あまりパニックを起こさないんでしょ?それなら、そこに私がいてもいいんじゃないかなって、思ったんだけど…。そしたら、一緒にもいられるし」
永那ちゃんは深く呼吸をして、考える。
「私、永那ちゃんが好きだよ」
薄茶色の瞳が、光で透けて、キラキラ光る。
「一回だけでも、試してみちゃ、だめかな?」
「…わかった」
「もし、それでだめそうなら、また他に考える」
「うん。…ありがとう、穂」
「あと…ちゃんとみんなに言った責任、取って?」
「え…」
フゥッとため息を吐いて、私は彼女を睨む。
「永那ちゃんが寝てるから、みんな、私にいろいろ聞いてくるの。…ちゃんと、永那ちゃんが言っちゃったんだから、永那ちゃんが話してよ」
彼女の目が大きく見開いてから、申し訳なさそうに謝る。
「そうだね、私がちゃんと、言わないとね」
「うん」
「穂、好き」
「うん」
彼女が私の頬をさする。
「好き」
「私も、永那ちゃんが好きだよ」
耳に触れて、髪に触れる。
その手つきがあまりに優しくて、目を閉じる。
「誰にも、とられたくない」
「とられないよ」
額にぬくもりを感じて目を開けると、彼女の胸が目の前にあった。
少しおりてきて、私は慌てて目を閉じる。
瞼にキスが落とされる。
鼻、頬、唇…優しく、触れられる。
最後にもう一度、唇が重なる。
「好き」
彼女に見つめられる。
私はフフッと笑ってから、彼女の頬にキスをした。
「永那ちゃん、千陽と何か話したりしてるの?」
「何かって?」
「んー…私とのこととか」
「最近は、よく話すよ。テスト期間中、穂が恥ずかしがって机の下に隠れたの、可愛かった~とか」
「…なにそれ」
「え?惚気?」
…そんな恥ずかしい過去、話さなくていいよ。
「千陽も話にノッてくるから、あいつも穂のこと、好きなんだなってわかる」
千陽がどんなふうに話にノッてるのか…少し気になる。
「千陽は…なんて言うの?」
永那ちゃんがジト目になる。
「教えない」
「な、なんで」
「…千陽じゃなくて、今は2人のことを話したいから」
心臓がトクンと鳴って、私は俯く。
「…じゃあ…その、さっき言った、お母さんに会うって話、いつにする?」
「穂がよければ、いつでも。…でも、文化祭で忙しいんだよね?」
「そうだけど…今日は?」
「今日!?」
「さすがに、早すぎかな」
「…いや、いいよ」
「じゃあ、一緒に、帰れるね」
永那ちゃんは目を大きくして、嬉しそうに口を綻ばせた。
「そうだね、楽しみだ」
ガラガラと扉が開いて、クラスメイトが入ってくる。
大人しめの子で、私達を見てビックリして、俯くように、申し訳なさそうに、席についた。
2人で顔を見合わせて、小さく笑う。
何人か登校してきたあたりで、千陽も帰ってくる。
手にはジュースがあって、どこかで飲んでいたのだとわかった。
「仲直り、できたの?」
私の机に千陽が座る。
「千陽、机は椅子じゃない」
「いいじゃん」
空の紙パックのストローをズズッと吸って、私を見下ろす。
「で、仲直りできたの?」
「そもそも喧嘩してないし」
永那ちゃんが頬杖をつく。
千陽の目が細くなって、永那ちゃんを睨むように見た。
「穂が泣いてたことも知らないくせに」
永那ちゃんが飛び起きて、私を見る。
「ホント?」
「あ…いや…そんな、大袈裟だよ」
永那ちゃんの眉間にシワが寄って、ギリリと奥歯が鳴る。
「ごめん…ホントに…ごめんね」
多くのクラスメイトが登校してきても、永那ちゃんは私のそばにいた。
…というか、私の席に座って、私を膝に乗せていた。
みんなこちらを凝視する。
私は羞恥心で押しつぶされそうになって、顔を隠すことでなんとか生きていた。
永那ちゃんが、全然離してくれない。
「え、永那~、イチャイチャしすぎでしょ~」
優里ちゃんが言う。
「いやー、このほうがみんなも慣れるかなって思ってさ?…ねえ?穂」
何も言えない。
何も言いたくない。
どうしてこうなるの…。
永那ちゃんはため息をつく。
「わからない。…ただ、千陽に盗られるかもって思った。…そのうち、穂に…呆れられるかもって…。全然一緒にいられない私なんかよりも、もっと一緒にいてくれる誰かに…盗られるかもって」
腕の中に顔をうずめてしまう。
「ごめんね」
くぐもった声。
…夏休み、言葉を尽くしたつもりだった。
私からすれば、永那ちゃんが与えてくれたものが全て。
永那ちゃん以外なんて…あり得ないのに。
でも、どれだけ言葉で言われても、現実的に、物理的に、一緒にいられないという不安は消えてはくれない。
それなら。
「永那ちゃん」
呼ぶと、目だけこちらに向けてくれる。
「私、永那ちゃんのお母さんに会ってみたい」
全く話の脈絡が読めない様子で、目をパチクリさせている。
永那ちゃんは体を起こして、左眉を上げる。
「ど、どういうこと?」
「永那ちゃんが、私と一緒にいられないことが不安なら、一緒にいる時間を増やせればいいんだと思ったの」
首を捻って、眉間にシワを寄せる。
「お母さんは、永那ちゃんがいれば、あまりパニックを起こさないんでしょ?それなら、そこに私がいてもいいんじゃないかなって、思ったんだけど…。そしたら、一緒にもいられるし」
永那ちゃんは深く呼吸をして、考える。
「私、永那ちゃんが好きだよ」
薄茶色の瞳が、光で透けて、キラキラ光る。
「一回だけでも、試してみちゃ、だめかな?」
「…わかった」
「もし、それでだめそうなら、また他に考える」
「うん。…ありがとう、穂」
「あと…ちゃんとみんなに言った責任、取って?」
「え…」
フゥッとため息を吐いて、私は彼女を睨む。
「永那ちゃんが寝てるから、みんな、私にいろいろ聞いてくるの。…ちゃんと、永那ちゃんが言っちゃったんだから、永那ちゃんが話してよ」
彼女の目が大きく見開いてから、申し訳なさそうに謝る。
「そうだね、私がちゃんと、言わないとね」
「うん」
「穂、好き」
「うん」
彼女が私の頬をさする。
「好き」
「私も、永那ちゃんが好きだよ」
耳に触れて、髪に触れる。
その手つきがあまりに優しくて、目を閉じる。
「誰にも、とられたくない」
「とられないよ」
額にぬくもりを感じて目を開けると、彼女の胸が目の前にあった。
少しおりてきて、私は慌てて目を閉じる。
瞼にキスが落とされる。
鼻、頬、唇…優しく、触れられる。
最後にもう一度、唇が重なる。
「好き」
彼女に見つめられる。
私はフフッと笑ってから、彼女の頬にキスをした。
「永那ちゃん、千陽と何か話したりしてるの?」
「何かって?」
「んー…私とのこととか」
「最近は、よく話すよ。テスト期間中、穂が恥ずかしがって机の下に隠れたの、可愛かった~とか」
「…なにそれ」
「え?惚気?」
…そんな恥ずかしい過去、話さなくていいよ。
「千陽も話にノッてくるから、あいつも穂のこと、好きなんだなってわかる」
千陽がどんなふうに話にノッてるのか…少し気になる。
「千陽は…なんて言うの?」
永那ちゃんがジト目になる。
「教えない」
「な、なんで」
「…千陽じゃなくて、今は2人のことを話したいから」
心臓がトクンと鳴って、私は俯く。
「…じゃあ…その、さっき言った、お母さんに会うって話、いつにする?」
「穂がよければ、いつでも。…でも、文化祭で忙しいんだよね?」
「そうだけど…今日は?」
「今日!?」
「さすがに、早すぎかな」
「…いや、いいよ」
「じゃあ、一緒に、帰れるね」
永那ちゃんは目を大きくして、嬉しそうに口を綻ばせた。
「そうだね、楽しみだ」
ガラガラと扉が開いて、クラスメイトが入ってくる。
大人しめの子で、私達を見てビックリして、俯くように、申し訳なさそうに、席についた。
2人で顔を見合わせて、小さく笑う。
何人か登校してきたあたりで、千陽も帰ってくる。
手にはジュースがあって、どこかで飲んでいたのだとわかった。
「仲直り、できたの?」
私の机に千陽が座る。
「千陽、机は椅子じゃない」
「いいじゃん」
空の紙パックのストローをズズッと吸って、私を見下ろす。
「で、仲直りできたの?」
「そもそも喧嘩してないし」
永那ちゃんが頬杖をつく。
千陽の目が細くなって、永那ちゃんを睨むように見た。
「穂が泣いてたことも知らないくせに」
永那ちゃんが飛び起きて、私を見る。
「ホント?」
「あ…いや…そんな、大袈裟だよ」
永那ちゃんの眉間にシワが寄って、ギリリと奥歯が鳴る。
「ごめん…ホントに…ごめんね」
多くのクラスメイトが登校してきても、永那ちゃんは私のそばにいた。
…というか、私の席に座って、私を膝に乗せていた。
みんなこちらを凝視する。
私は羞恥心で押しつぶされそうになって、顔を隠すことでなんとか生きていた。
永那ちゃんが、全然離してくれない。
「え、永那~、イチャイチャしすぎでしょ~」
優里ちゃんが言う。
「いやー、このほうがみんなも慣れるかなって思ってさ?…ねえ?穂」
何も言えない。
何も言いたくない。
どうしてこうなるの…。
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