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5.時間
275.一緒
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「あ、あ、あの…」
森山さんが眼鏡をかけて、髪を指で整える。
「森山さん、おはよう。…ごめんね」
私が謝ると、ペコリと会釈して、洗面台に走って行った。
「千陽、ありがとう。だ、大丈夫…だから…」
掴まれていた首が解放される。
「永那ちゃん…もう、ダメだからね?」
「…はい」
永那ちゃんは不服そうに唇を尖らせた。
寝癖がついているから、そっと撫でると、すぐに弧を描いた。
「穂、甘い」
「千陽が怒ってくれたからだよ」
今度は千陽が唇を尖らせた。
「ありがとう」
彼女の頭も撫でる。
千陽にギュッと抱きしめられて「あー!」と永那ちゃんが声を上げる。
永那ちゃんが立ち上がって、私と千陽をまとめて抱きしめた。
「んごっ」
森山さんが壁に顔をぶつけて、倒れた。
「森山さん!?」
私は永那ちゃんと千陽の腕から抜け出して、彼女に駆け寄る。
「だ、大丈夫れす…す、すびばせん…」
「ほ、本当に?」
何かの病気なんじゃないかと、本当に心配になる。
「優里、朝」
永那ちゃんが優里ちゃんの頬を突く。
「優里~」
千陽は洗面台に行って、準備を始めた。
「おーい、起きろー」
「んにゃ…あと、5分」
「ご飯食べれなくていいの?」
「…ご飯!?」
優里ちゃんが勢い良く起き上がって、永那ちゃんとぶつかりそうになる。
永那ちゃんは眉間にシワを寄せながら、ギリギリのところで避けていた。
森山さんがヨロヨロと立ち上がって服を着替え始めたから、私も準備をした。
朝ご飯を食べ終えて、8時半に出発。
午前中は資料館の見学だった。
永那ちゃんと千陽はずっと私のそばにいた。
「穂?」
永那ちゃんに顔を覗き込まれる。
眉がハの字になって、彼女が優しく笑った。
「よしよし」
頭を撫でられて、目元を指で拭われて、抱きしめられた。
「ご、ごめんね…」
「謝ることないよ。…穂は、優しいんだね」
戦争の悲惨さに、思わず、泣いてしまった。
そこに、本当に生きていた人がいた。
私達と同じように、普通に暮らしていた人がいた。
そしてそれが突然、奪われた。
ただその事実が、悲しかった。
…もちろん、歴史はそれなりに勉強しているつもりだから、日本がドイツ(ナチス)と同盟を結んだことも知っている。
そのナチスが、どれだけのことをしたのかも、知っている。
中国や韓国、台湾も含めて、日本が何をしたのかも、理解している。
それでも、やっぱり、戦争と無関係なはずの子供達の命まで奪う必要があったのか。
一説には、アメリカは日本が確実に負けることを知っておきながら、核実験をしたかったがために原爆を落としたとも言われている。
いろんな説があるけれど…それでも…私は、どの国だったとしても子供の命が奪われていいとは思えなかった。
子供だけじゃ、ないけれど。
暗い気持ちを引きずったまま、集合時間になった。
みんな楽しそうに話していて、複雑な気持ちになる。
この後は街なかを班で自由に行動できるから、みんなそれを楽しみにしているみたいだった。
永那ちゃんと千陽はずっと手を繋いでくれていて、途中で優里ちゃんが「私も!」と言って千陽と手を繋いでいた。
森山さんの手も掴んで「仲良しー」と笑うから、私も笑みが溢れた。
最初にご飯を食べに、カフェに入った。
事前に調べていた観光スポットを巡りつつ、お土産も買う。
「みんなで何か買おうよ!」
優里ちゃんが言って、同じ種類の、柄違いのハンカチを買った。
夕方、宿に戻ってご飯の時間まで自由時間。
永那ちゃんはすぐに寝てしまい、私達は部屋でゴロゴロしながら、撮った写真を眺めていた。
途中、クラスメイトから遊ぶお誘いがあったけれど、優里ちゃんが断っていた。
「角煮まんおいしかったねえ!」
優里ちゃんが言う。
「そうだね。私、カフェで食べたケーキが好きだったなあ」
「あれもおいしかった!」
「永那ちゃんと優里ちゃん、変な顔してる…!」
私が口元を手で押さえながら笑うと、優里ちゃんが写真と同じ顔をするから、また笑ってしまう。
「ここ、やっぱり夜景が見たかったよね」
「そうだね。きっと綺麗だよね」
ロープウェイに乗って、展望台から街を眺めた。
調べたら夜景がとても綺麗だと書かれていて、本当なら夜景を見たかった。
…自由時間は限られているから、見られないのも仕方ないけれど。
ロープウェイに乗ったとき、永那ちゃんが私の横に立って、腰を抱かれたのは…恥ずかしかった。
いつもは後ろから抱きしめられることが多いけど、腰に添えられた手が…なんだか…エッチで…。
「わあ、この写真…」
「いいでしょー!絵になるなあと思って撮っちゃった」
永那ちゃんと千陽と私の3人の後ろ姿が写っていた。
千陽が私の肩に頭を乗せて、スマホを覗き込む。
「優里、最高」
「え!?でしょ!でしょ!!」
「あたし、ホーム画面にしようかな」
「ホント!?私すごいかもー!」
「穂、お揃いにしよ?」
「うん」
優里ちゃんが写真を送ってくれたから、ホーム画面に設定する。
「穂の前のホーム画面の写真はいつの?」
「海。初めて永那ちゃんとデートした日の…」
「へえ」
千陽が微笑む。
「見せて見せて!」
「あのときは、まだ写真撮るのに慣れていなくて、永那ちゃんがブレブレなの」
「ホントだ!」
「穂が撮る写真は…未だに指が入ってたりするけど…」
千陽が言って、みんなで笑う。
森山さんが眼鏡をかけて、髪を指で整える。
「森山さん、おはよう。…ごめんね」
私が謝ると、ペコリと会釈して、洗面台に走って行った。
「千陽、ありがとう。だ、大丈夫…だから…」
掴まれていた首が解放される。
「永那ちゃん…もう、ダメだからね?」
「…はい」
永那ちゃんは不服そうに唇を尖らせた。
寝癖がついているから、そっと撫でると、すぐに弧を描いた。
「穂、甘い」
「千陽が怒ってくれたからだよ」
今度は千陽が唇を尖らせた。
「ありがとう」
彼女の頭も撫でる。
千陽にギュッと抱きしめられて「あー!」と永那ちゃんが声を上げる。
永那ちゃんが立ち上がって、私と千陽をまとめて抱きしめた。
「んごっ」
森山さんが壁に顔をぶつけて、倒れた。
「森山さん!?」
私は永那ちゃんと千陽の腕から抜け出して、彼女に駆け寄る。
「だ、大丈夫れす…す、すびばせん…」
「ほ、本当に?」
何かの病気なんじゃないかと、本当に心配になる。
「優里、朝」
永那ちゃんが優里ちゃんの頬を突く。
「優里~」
千陽は洗面台に行って、準備を始めた。
「おーい、起きろー」
「んにゃ…あと、5分」
「ご飯食べれなくていいの?」
「…ご飯!?」
優里ちゃんが勢い良く起き上がって、永那ちゃんとぶつかりそうになる。
永那ちゃんは眉間にシワを寄せながら、ギリギリのところで避けていた。
森山さんがヨロヨロと立ち上がって服を着替え始めたから、私も準備をした。
朝ご飯を食べ終えて、8時半に出発。
午前中は資料館の見学だった。
永那ちゃんと千陽はずっと私のそばにいた。
「穂?」
永那ちゃんに顔を覗き込まれる。
眉がハの字になって、彼女が優しく笑った。
「よしよし」
頭を撫でられて、目元を指で拭われて、抱きしめられた。
「ご、ごめんね…」
「謝ることないよ。…穂は、優しいんだね」
戦争の悲惨さに、思わず、泣いてしまった。
そこに、本当に生きていた人がいた。
私達と同じように、普通に暮らしていた人がいた。
そしてそれが突然、奪われた。
ただその事実が、悲しかった。
…もちろん、歴史はそれなりに勉強しているつもりだから、日本がドイツ(ナチス)と同盟を結んだことも知っている。
そのナチスが、どれだけのことをしたのかも、知っている。
中国や韓国、台湾も含めて、日本が何をしたのかも、理解している。
それでも、やっぱり、戦争と無関係なはずの子供達の命まで奪う必要があったのか。
一説には、アメリカは日本が確実に負けることを知っておきながら、核実験をしたかったがために原爆を落としたとも言われている。
いろんな説があるけれど…それでも…私は、どの国だったとしても子供の命が奪われていいとは思えなかった。
子供だけじゃ、ないけれど。
暗い気持ちを引きずったまま、集合時間になった。
みんな楽しそうに話していて、複雑な気持ちになる。
この後は街なかを班で自由に行動できるから、みんなそれを楽しみにしているみたいだった。
永那ちゃんと千陽はずっと手を繋いでくれていて、途中で優里ちゃんが「私も!」と言って千陽と手を繋いでいた。
森山さんの手も掴んで「仲良しー」と笑うから、私も笑みが溢れた。
最初にご飯を食べに、カフェに入った。
事前に調べていた観光スポットを巡りつつ、お土産も買う。
「みんなで何か買おうよ!」
優里ちゃんが言って、同じ種類の、柄違いのハンカチを買った。
夕方、宿に戻ってご飯の時間まで自由時間。
永那ちゃんはすぐに寝てしまい、私達は部屋でゴロゴロしながら、撮った写真を眺めていた。
途中、クラスメイトから遊ぶお誘いがあったけれど、優里ちゃんが断っていた。
「角煮まんおいしかったねえ!」
優里ちゃんが言う。
「そうだね。私、カフェで食べたケーキが好きだったなあ」
「あれもおいしかった!」
「永那ちゃんと優里ちゃん、変な顔してる…!」
私が口元を手で押さえながら笑うと、優里ちゃんが写真と同じ顔をするから、また笑ってしまう。
「ここ、やっぱり夜景が見たかったよね」
「そうだね。きっと綺麗だよね」
ロープウェイに乗って、展望台から街を眺めた。
調べたら夜景がとても綺麗だと書かれていて、本当なら夜景を見たかった。
…自由時間は限られているから、見られないのも仕方ないけれど。
ロープウェイに乗ったとき、永那ちゃんが私の横に立って、腰を抱かれたのは…恥ずかしかった。
いつもは後ろから抱きしめられることが多いけど、腰に添えられた手が…なんだか…エッチで…。
「わあ、この写真…」
「いいでしょー!絵になるなあと思って撮っちゃった」
永那ちゃんと千陽と私の3人の後ろ姿が写っていた。
千陽が私の肩に頭を乗せて、スマホを覗き込む。
「優里、最高」
「え!?でしょ!でしょ!!」
「あたし、ホーム画面にしようかな」
「ホント!?私すごいかもー!」
「穂、お揃いにしよ?」
「うん」
優里ちゃんが写真を送ってくれたから、ホーム画面に設定する。
「穂の前のホーム画面の写真はいつの?」
「海。初めて永那ちゃんとデートした日の…」
「へえ」
千陽が微笑む。
「見せて見せて!」
「あのときは、まだ写真撮るのに慣れていなくて、永那ちゃんがブレブレなの」
「ホントだ!」
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千陽が言って、みんなで笑う。
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