いたずらはため息と共に

常森 楽

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5.時間

325.考える

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「穂、なに考えてんの?」
タピオカを飲みながら、永那ちゃんが私を見る。
「せっかくの半年記念日なのに、邪なことを考えているな?」
永那ちゃんは目を細めた。
「永那ちゃんと結婚したいなって思ってただけ」
「え!?」
素っ頓狂な声を出すから、思わず笑ってしまう。
「な、なんだよ…そ、それなら…まあ…いっか…」
「永那ちゃんは、したい?」
「当たり前じゃん」
「そっか」
心が、ほわほわする。

「穂」
「ん?」
「本当は、後で、渡そうと思ったんだけど…」
永那ちゃんがブレザーのポケットから箱を出す。
「半年間、ありがとう。これからも、よろしく」
箱を開けると、2つの指輪が並んでいた。
「お揃い?」
「うん」
永那ちゃんが箱から指輪を1つ出す。
手を差し出されたから、そこに左手を重ねると、薬指に指輪を通してくれる。
「ぴったり」
「良かった」
「いつの間に?」
「内緒」
私は手を天井のライトに透かして、リングを見た。
「結婚指輪みたい」
シンプルなシルバーのリング。
「結婚指輪にしては、安すぎる気もするけど」
「値段なんて、どうだっていいよ」
「…そっか」

私は永那ちゃんに視線を戻して、箱から、残っている指輪を出す。
永那ちゃんが左手を差し出してくれるから、薬指に通そうとすると、指を引っ込められた。
「永那ちゃん」
睨むと、彼女が楽しそうに笑う。
今度こそ、彼女の指に通す。

2人で手を並べて、写真を撮る。
…最近、私はSNSを始めて、そんなに多くはないけれど、写真を投稿することも増えた。
(後で載せようかな?…でもこういうのは、載せないほうがいいのかな?)
永那ちゃんが私を撮りたがったから、恥ずかしいけれど、大人しく撮られた。
手を繋いで外に出る。
冬の海は寒い。
私の誕生日の次の日にも来たけど、あのときよりも一段と寒い。
今週は期末テスト期間で、明日もテストがある。
本当は勉強したほうがいいんだけど、半年記念日にどこにも行かないで勉強…というのも寂しくて、海に行こうという話になった。

「永那ちゃん」
「なに?」
「私からは…これ…」
鞄から、布の袋を出す。
永那ちゃんが受け取って、中を見た。
「マフラーだ!」
「私が、編んだの」
「マジ!?…めっちゃ嬉しい。いつの間に?」
「内緒」
永那ちゃんが、お昼寝している間。
間に合うか不安だったけど、なんとか間に合った。
私が首に巻いてあげると「あったかい」と彼女が微笑んだ。
彼女に両頬を包まれて、口付けを交わす。
息が白い。
何度も、啄むように、触れ合う。
そのたびに2人の白い息が、風で流されていく。

鼻がくっつくと、お互いの体温が下がっているのがわかった。
「寒いね」
永那ちゃんが笑う。
「寒いね」
私も笑う。
「そろそろ帰る?」
「うん。勉強しなきゃ」
永那ちゃんがまた笑って、白い息が私にかかる。
「だね」
2人で帰る。
今週は永那ちゃんの家。
来週から、3週間連続で永那ちゃんが私の家に来ることになっている。
クリスマスと年末年始があるから。
少し胸が張っているから、そろそろ生理かな。
…ちょっと、エッチ…したいな。
私の家だと、思う存分…できないし…。

「永那ちゃん」
「なに?」
「ご飯、買って帰らない?」
「お?珍しい。いいよ」
少しでも、時間が、欲しい。
スーパーでお惣菜を買って、永那ちゃんがケーキも買ってくれた。
家に帰って、少し勉強をする。
こたつにもなる座卓は、あたたかい。
永那ちゃんと足がぶつかる。
お互い何も気にせず、そのまま勉強を続ける。

「そろそろ、ご飯食べる?」
「早いね、どうしたの?今日は」
永那ちゃんが頬杖をついて、私を見る。
私は少し考えて「お腹すいたの」と答えた。
「ふーん」
2人で立ち上がって、惣菜をあたためる。
永那ちゃんはお箸を出してくれたり、お茶を足したりしてくれた。
2人で食べる。
ご飯はいつも、土日は2人で料理して、平日は私が作っている。
…たまにはいいな、お惣菜も。
「おいしいね」
「うん」
今日も、永那ちゃん…エッチしてくれるよね。
でも…夜かな。
私が“勉強したいからエッチは夜寝るとき”って言っちゃったし、ここ数日は毎日千陽と優里ちゃんと勉強会を開いているから、エッチの時間も短い。
早く、したいな。
久しぶりに、たくさん、したいな。
「どうした?」
永那ちゃんが私の顔を覗き込む。
私は小さく首を横に振る。
“なんでもない”なんてことないのに。

千陽みたいに可愛くおねだりできるようになってみたい。
どう、言えばいいのかな。
「穂、なんか思ってることあるなら言って?」
永那ちゃんの瞳が不安そうに揺れる。
「…え、永那ちゃんは」
「うん?」
「どういうエッチが好きとか、あるの?」
「ん!?それを考えてたの!?」
永那ちゃんがちょっと咽る。
「…うん」
「え?ホントに?…あんな深刻そうな顔してたのに?」
「深刻そうだった?」
「うん…なんか、思い詰めてるみたいな…」
「思い詰めては、ないよ」
「そ、そっか…」
「それで…答えは?」
「えー…どういう…んー…考えたことなかったな」
「そうなの?好きな、シチュエーションとか、ないの?」
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