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8.閑話
13.永那 中2 秋《室橋芹奈編》
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…ああ、開けちゃダメってわかってるのに、開けたくなる。
聞いちゃダメってわかってるのに、聞きたくなる。
「永那の好みって、色白の女?」
「は?なに、急に」
「教えてよ」
「特別色白が好きってわけじゃないけど」
「…じゃあ、あたしのことも…可愛がってくれる?」
顔が熱くなる。
「あたしのことも…大切に、してくれる?」
「してるじゃん」
「してる…けど…」
「なに?誘ってんの?」
抱きしめ合っていた体が離れて、永那が首を傾げてあたしを見た。
あたしは恥ずかしくて、俯く。
「いたっ」
「バーカ」
デコピンされて、あたしは額を手で押さえる。
「そういうのは、大人になってからしましょー!」
ニシシと永那が笑って、帰る準備を始めた。
「お、大人って…!永那だってあたしと同じじゃん!」
「うるせーよ」
永那は両目を大きく開いて、鼻の穴も広げて、ベーッとベロを出した。
永那が立ち上がって、帰ろうとする。
あたしは慌てて彼女の服の裾を掴んだ。
「待ってよ」
フゥッと永那は息を吐いて、あたしの頭を撫でる。
「芹奈は今、傷ついてるんだから…これ以上自分を傷つけるようなことすんなって」
「永那が今帰ったほうが傷つく」
永那の左眉が上がる。
すぐに真剣な顔になって、小さく息を吐いた。
「私は、芹奈のこと、ちゃんと大切にしてあげられない。絶対傷つけちゃう」
「そんなことない!永那は、ずっと、優しいじゃん」
「それは…友達だからだよ」
「付き合ったら、優しくなくなるの?」
「…そもそも、私は誰とも付き合わない。付き合わないことが、相手を傷つける」
理解できなくて、気持ちが、ぐちゃぐちゃになる。
「誰とも、付き合ってないの?あの、先輩とも?」
「そうだよ。私は、誰にも“付き合う”なんて一言も言ってない。恋人面されたら、即、切る」
冷たい言い方でニヤリと笑う彼女を、初めて本気で怖いと思った。
「それがわかってるから、芽衣は恋人面しない。ちょうどいい相手なんだよ。…そりゃあ、ちょっとは怖いけどね?」
楽しそうに、永那は笑う。
「じゃあ…あたしも…恋人面しない…」
「は?」
「しない…から…」
「いやいや!おかしいだろ!芹奈、自分が何言ってるかわかってんの?」
「…あたしは嫌?やっぱ、あたしブスだから」
唇が塞がる。
「そんなこと、言うなよ。芹奈は可愛いってば」
「うん」
優しい、キス。
…やっぱ、永那、優しいじゃん。
「メイクも、ネイルも、持ってる物だって…全部…いつも、可愛いじゃん」
「嬉しい」
何度も優しくキスされて、あの馬鹿とは全然違って…ヤバい…。
あたし、本当に恋人面しないでいられるかな…。
頑張んなきゃ。
「今日はもう、遅いから…帰るね」
胸がギュッと締め付けられる。
永那はポリポリ頭を掻きながら、落としていた荷物を拾った。
「永那」
「ん?」
「あたしにも、約束して?」
「約束?」
「次…シてくれるって…」
永那が眉をハの字にして笑う。
「するよ」
「約束?」
「約束」
永那と外に出て、アパートの廊下から永那の背中が見えなくなるまで、あたしはずっと手摺に頬杖をついていた。
秋の風が気持ち良い。
永那は毎日千陽と帰る。
千陽とは家が遠いらしいのに、わざわざ千陽の送り迎えをしている。
前までは“そんな恋人最高だな~、あたしも恋人できたらそんな風にしてほし~”なんて呑気に思ってた。
でも永那に恋すると、これが妬けるから、マジで困った。
あ~!!
芽衣先輩のこと腹黒そうとか思ったけど、こんなの耐えてるだけでも凄すぎる…。
しかも相手は千陽。
めちゃくちゃ可愛い千陽…。
千陽だよ?
あーーー、ずるいずるいずるいずるい!
セックスしてるのかなあ…しまくってるのかなあ…。
想像以上に辛い…。
「永那」
「んー…」
永那の背中には千陽が抱きついている。
(学校の行き来も一緒にいるんだから、少しは離れればいいのに…)なんて、思ってしまう。
「や、約束…いつ、してくれる…?」
フフッと永那が笑う。
「芹奈のお母さんって、土日家にいるの?」
「…いない」
「んじゃ、今週の土曜」
「オ、オッケー」
椅子を引いて、永那の隣に座る。
永那は机に顔を突っ伏したまま、ぐでんとしてる。
チラリと千陽を見ると、目が合った。
なんとなく気まずくて、目をそらす。
「両角ー、1年来てるよ」
男子が言うと、永那は顔だけ入口に向けた。
「部活の後輩だ」
永那が起き上がるのを察して、千陽がどく。
永那は立ってダルそうに歩くけど、いざ後輩と話し始めると、いつもの調子で楽しそうに振る舞っていた。
後輩の頭をポンポンと撫でて、キャーキャー言われる。
モヤッとする。
「そんなことでいちいち妬いてたら、永那のセフレなんてやってられないんじゃない?」
急に千陽が耳元で囁いてきて、肩が上がった。
聞いちゃダメってわかってるのに、聞きたくなる。
「永那の好みって、色白の女?」
「は?なに、急に」
「教えてよ」
「特別色白が好きってわけじゃないけど」
「…じゃあ、あたしのことも…可愛がってくれる?」
顔が熱くなる。
「あたしのことも…大切に、してくれる?」
「してるじゃん」
「してる…けど…」
「なに?誘ってんの?」
抱きしめ合っていた体が離れて、永那が首を傾げてあたしを見た。
あたしは恥ずかしくて、俯く。
「いたっ」
「バーカ」
デコピンされて、あたしは額を手で押さえる。
「そういうのは、大人になってからしましょー!」
ニシシと永那が笑って、帰る準備を始めた。
「お、大人って…!永那だってあたしと同じじゃん!」
「うるせーよ」
永那は両目を大きく開いて、鼻の穴も広げて、ベーッとベロを出した。
永那が立ち上がって、帰ろうとする。
あたしは慌てて彼女の服の裾を掴んだ。
「待ってよ」
フゥッと永那は息を吐いて、あたしの頭を撫でる。
「芹奈は今、傷ついてるんだから…これ以上自分を傷つけるようなことすんなって」
「永那が今帰ったほうが傷つく」
永那の左眉が上がる。
すぐに真剣な顔になって、小さく息を吐いた。
「私は、芹奈のこと、ちゃんと大切にしてあげられない。絶対傷つけちゃう」
「そんなことない!永那は、ずっと、優しいじゃん」
「それは…友達だからだよ」
「付き合ったら、優しくなくなるの?」
「…そもそも、私は誰とも付き合わない。付き合わないことが、相手を傷つける」
理解できなくて、気持ちが、ぐちゃぐちゃになる。
「誰とも、付き合ってないの?あの、先輩とも?」
「そうだよ。私は、誰にも“付き合う”なんて一言も言ってない。恋人面されたら、即、切る」
冷たい言い方でニヤリと笑う彼女を、初めて本気で怖いと思った。
「それがわかってるから、芽衣は恋人面しない。ちょうどいい相手なんだよ。…そりゃあ、ちょっとは怖いけどね?」
楽しそうに、永那は笑う。
「じゃあ…あたしも…恋人面しない…」
「は?」
「しない…から…」
「いやいや!おかしいだろ!芹奈、自分が何言ってるかわかってんの?」
「…あたしは嫌?やっぱ、あたしブスだから」
唇が塞がる。
「そんなこと、言うなよ。芹奈は可愛いってば」
「うん」
優しい、キス。
…やっぱ、永那、優しいじゃん。
「メイクも、ネイルも、持ってる物だって…全部…いつも、可愛いじゃん」
「嬉しい」
何度も優しくキスされて、あの馬鹿とは全然違って…ヤバい…。
あたし、本当に恋人面しないでいられるかな…。
頑張んなきゃ。
「今日はもう、遅いから…帰るね」
胸がギュッと締め付けられる。
永那はポリポリ頭を掻きながら、落としていた荷物を拾った。
「永那」
「ん?」
「あたしにも、約束して?」
「約束?」
「次…シてくれるって…」
永那が眉をハの字にして笑う。
「するよ」
「約束?」
「約束」
永那と外に出て、アパートの廊下から永那の背中が見えなくなるまで、あたしはずっと手摺に頬杖をついていた。
秋の風が気持ち良い。
永那は毎日千陽と帰る。
千陽とは家が遠いらしいのに、わざわざ千陽の送り迎えをしている。
前までは“そんな恋人最高だな~、あたしも恋人できたらそんな風にしてほし~”なんて呑気に思ってた。
でも永那に恋すると、これが妬けるから、マジで困った。
あ~!!
芽衣先輩のこと腹黒そうとか思ったけど、こんなの耐えてるだけでも凄すぎる…。
しかも相手は千陽。
めちゃくちゃ可愛い千陽…。
千陽だよ?
あーーー、ずるいずるいずるいずるい!
セックスしてるのかなあ…しまくってるのかなあ…。
想像以上に辛い…。
「永那」
「んー…」
永那の背中には千陽が抱きついている。
(学校の行き来も一緒にいるんだから、少しは離れればいいのに…)なんて、思ってしまう。
「や、約束…いつ、してくれる…?」
フフッと永那が笑う。
「芹奈のお母さんって、土日家にいるの?」
「…いない」
「んじゃ、今週の土曜」
「オ、オッケー」
椅子を引いて、永那の隣に座る。
永那は机に顔を突っ伏したまま、ぐでんとしてる。
チラリと千陽を見ると、目が合った。
なんとなく気まずくて、目をそらす。
「両角ー、1年来てるよ」
男子が言うと、永那は顔だけ入口に向けた。
「部活の後輩だ」
永那が起き上がるのを察して、千陽がどく。
永那は立ってダルそうに歩くけど、いざ後輩と話し始めると、いつもの調子で楽しそうに振る舞っていた。
後輩の頭をポンポンと撫でて、キャーキャー言われる。
モヤッとする。
「そんなことでいちいち妬いてたら、永那のセフレなんてやってられないんじゃない?」
急に千陽が耳元で囁いてきて、肩が上がった。
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