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6.さんにん
382.ふたり
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「本当は、修学旅行から帰ったら、永那ちゃんのお母さんとみんなでお出掛けしようって話もしてたんです。私、それが楽しみで。…あ、永那ちゃん!お姉さんから貰ったクリスマスプレゼント、着けて見せてあげたら?せっかくなんだし」
穂がパタパタと部屋に行く。
全く動かないお姉ちゃんを見て、イライラする。
「…なんか言うこととか、ないわけ?」
「なんかって?」
睨まれる。
「“2人で寝泊まりしてるのか?”って聞いてきたのは、お姉ちゃんでしょ」
「ハァ」と大きなため息をついて、また頬杖をつく。
「お母さんが“穂ちゃん”って、しきりに言ってたから、誰のことかと思ったけど、あの子だったんだね。良い友達、出来て良かったね」
「…うん」
友達じゃ、ない。
世界一、大事な人だ。
穂が静かに隣に座った。
ピアスの入った箱を手渡される。
「…これ、ありがと」
一応、言う。
「べつに」
ピアスを耳に着けるけど、お姉ちゃんはチラリと目を遣るだけだった。
「永那ちゃん、似合ってる」
「ありがとう、穂」
お姉ちゃんが立ち上がって、コートを着始めた。
「明後日の朝、また家来るから」
「え…帰るの?」
「私がいても邪魔なだけでしょ」
穂と顔を見合わせる。
スタスタ歩いて、お姉ちゃんは靴を履いた。
「え、永那ちゃん!」
手を握られて、また穂を見た。
「お礼!お礼言わないと!お姉さん、永那ちゃんのことが心配で来てくれたんだよ!きっと!」
お姉ちゃんを見ると、耳を赤くしていた。
「ちが」
「ありがとう、お姉ちゃん」
お姉ちゃんは眉間にシワを寄せて、外に出た。
パタンとドアが閉まると同時に、穂と2人で床にしゃがみ込んだ。
「あぁ…びっくりした…」
「ごめんね、穂」
「ううん。お姉さんと話せて、良かったね」
私は俯いて、キッチンの床の木目を見つめる。
「穂がいてくれて、良かった。ありがとう」
「どういたしまして」
横目に穂を見ると、彼女が歯をみせて笑った。
「好き」
“好き”じゃ足りないくらい好き。
「私も」
はにかんだ後、穂は深呼吸して俯く。
「“ただの友達”は、ちょっとだけ…悲しかった、かも…」
「ごめん…。ごめんね、穂。ごめん」
彼女を抱きしめる。
「でも、しょうがないよね。まだ、私達の関係を言うには、早すぎるってことだもんね」
胸が、痛い。
グサグサと刺されるように、痛い。
「永那ちゃん…」
「ん?」
「私もね、本当は“嫌だ”って思ってる」
「なに、を?」
「永那ちゃんのお母さん、帰ってこなければいいのにって、思ってる。酷いよね。…お母さんのことは好きだよ?でも、永那ちゃんとの時間が奪われるのが、怖い」
穂から“学校を休もう”と言われたとき、穂らしくないと思った。
私が泣き喚いてるから、穂の優しさでそう言ってくれているのだと思っていた。
…それだけじゃなかったってこと?
「本当はね…本当は、ね?」
彼女の顔を見ると、涙で頬を濡らしていた。
「永那ちゃんを、千陽に盗られちゃうんじゃないかって、思ったりもしてるの」
「…え?」
「永那ちゃんは、私が1番だって言ってくれる。その言葉を信じてるし、千陽のことだって、信じてる。でもね…でも…私、たぶん、あんまり自分に自信がなくて」
大粒の涙が、彼女の瞳から溢れる。
「永那ちゃんと千陽が並んでるのを見たりすると、やっぱり2人はお似合いだなって、よく思うの。だから…永那ちゃんに似合うような人に、なりたくて」
「そんな…穂は十分」
「永那ちゃんが!そう言ってくれることは、わかってる。…でも、小倉先輩…も、すごく、綺麗な人で。なんか、自分が、すごく…その、なんていうか、野暮ったいというか…その…自信が、やっぱり、なくて…」
ああ…それでか。
穂が私に跨って腰を振ったときも、穂らしくないなって思った。
もちろん嬉しかったし、エロかったし、最高だったけど、穂が自分からあんなことするなんて、ちょっと信じられなかった。
でも千陽とシてから穗は興奮気味だったし、特に深く考えなかった。
…そんなに、思い悩んでるなんて、気づかなかった。
「そっか」
穂は深く息を吐いて、涙を指で拭う。
「永那ちゃんに、飽きられちゃったら嫌だな…とか、いろいろ、不安だった」
「うん」
「永那ちゃんのほうが、今、辛い気持ちなんだから、私は…私は、耐えなきゃって、思って」
「うん」
「でも…ただの友達、なんて…嫌だ、よ…」
「うん」
穂がワッと泣き始める。
ただ、抱きしめる。
抱きしめることしかできない自分が、不甲斐ない。
心音とのことがあったし、“彼女”って言っても、お姉ちゃんは信じてくれないと思った。
実際、穂が言ってくれるまで、お姉ちゃんは私の話を聞く価値もないと思っていたわけで。
だから、下手に彼女なんて言ったら、穂にお金のことをバラされるんじゃないかと、焦った。
穂のこと、貶されるんじゃないかって、焦った。
結局、そのせいで穂を傷つけてちゃ、しょうがない。
穂がパタパタと部屋に行く。
全く動かないお姉ちゃんを見て、イライラする。
「…なんか言うこととか、ないわけ?」
「なんかって?」
睨まれる。
「“2人で寝泊まりしてるのか?”って聞いてきたのは、お姉ちゃんでしょ」
「ハァ」と大きなため息をついて、また頬杖をつく。
「お母さんが“穂ちゃん”って、しきりに言ってたから、誰のことかと思ったけど、あの子だったんだね。良い友達、出来て良かったね」
「…うん」
友達じゃ、ない。
世界一、大事な人だ。
穂が静かに隣に座った。
ピアスの入った箱を手渡される。
「…これ、ありがと」
一応、言う。
「べつに」
ピアスを耳に着けるけど、お姉ちゃんはチラリと目を遣るだけだった。
「永那ちゃん、似合ってる」
「ありがとう、穂」
お姉ちゃんが立ち上がって、コートを着始めた。
「明後日の朝、また家来るから」
「え…帰るの?」
「私がいても邪魔なだけでしょ」
穂と顔を見合わせる。
スタスタ歩いて、お姉ちゃんは靴を履いた。
「え、永那ちゃん!」
手を握られて、また穂を見た。
「お礼!お礼言わないと!お姉さん、永那ちゃんのことが心配で来てくれたんだよ!きっと!」
お姉ちゃんを見ると、耳を赤くしていた。
「ちが」
「ありがとう、お姉ちゃん」
お姉ちゃんは眉間にシワを寄せて、外に出た。
パタンとドアが閉まると同時に、穂と2人で床にしゃがみ込んだ。
「あぁ…びっくりした…」
「ごめんね、穂」
「ううん。お姉さんと話せて、良かったね」
私は俯いて、キッチンの床の木目を見つめる。
「穂がいてくれて、良かった。ありがとう」
「どういたしまして」
横目に穂を見ると、彼女が歯をみせて笑った。
「好き」
“好き”じゃ足りないくらい好き。
「私も」
はにかんだ後、穂は深呼吸して俯く。
「“ただの友達”は、ちょっとだけ…悲しかった、かも…」
「ごめん…。ごめんね、穂。ごめん」
彼女を抱きしめる。
「でも、しょうがないよね。まだ、私達の関係を言うには、早すぎるってことだもんね」
胸が、痛い。
グサグサと刺されるように、痛い。
「永那ちゃん…」
「ん?」
「私もね、本当は“嫌だ”って思ってる」
「なに、を?」
「永那ちゃんのお母さん、帰ってこなければいいのにって、思ってる。酷いよね。…お母さんのことは好きだよ?でも、永那ちゃんとの時間が奪われるのが、怖い」
穂から“学校を休もう”と言われたとき、穂らしくないと思った。
私が泣き喚いてるから、穂の優しさでそう言ってくれているのだと思っていた。
…それだけじゃなかったってこと?
「本当はね…本当は、ね?」
彼女の顔を見ると、涙で頬を濡らしていた。
「永那ちゃんを、千陽に盗られちゃうんじゃないかって、思ったりもしてるの」
「…え?」
「永那ちゃんは、私が1番だって言ってくれる。その言葉を信じてるし、千陽のことだって、信じてる。でもね…でも…私、たぶん、あんまり自分に自信がなくて」
大粒の涙が、彼女の瞳から溢れる。
「永那ちゃんと千陽が並んでるのを見たりすると、やっぱり2人はお似合いだなって、よく思うの。だから…永那ちゃんに似合うような人に、なりたくて」
「そんな…穂は十分」
「永那ちゃんが!そう言ってくれることは、わかってる。…でも、小倉先輩…も、すごく、綺麗な人で。なんか、自分が、すごく…その、なんていうか、野暮ったいというか…その…自信が、やっぱり、なくて…」
ああ…それでか。
穂が私に跨って腰を振ったときも、穂らしくないなって思った。
もちろん嬉しかったし、エロかったし、最高だったけど、穂が自分からあんなことするなんて、ちょっと信じられなかった。
でも千陽とシてから穗は興奮気味だったし、特に深く考えなかった。
…そんなに、思い悩んでるなんて、気づかなかった。
「そっか」
穂は深く息を吐いて、涙を指で拭う。
「永那ちゃんに、飽きられちゃったら嫌だな…とか、いろいろ、不安だった」
「うん」
「永那ちゃんのほうが、今、辛い気持ちなんだから、私は…私は、耐えなきゃって、思って」
「うん」
「でも…ただの友達、なんて…嫌だ、よ…」
「うん」
穂がワッと泣き始める。
ただ、抱きしめる。
抱きしめることしかできない自分が、不甲斐ない。
心音とのことがあったし、“彼女”って言っても、お姉ちゃんは信じてくれないと思った。
実際、穂が言ってくれるまで、お姉ちゃんは私の話を聞く価値もないと思っていたわけで。
だから、下手に彼女なんて言ったら、穂にお金のことをバラされるんじゃないかと、焦った。
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