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7.向
444.足りない
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事情のわかっていない穂が、たぶん見当違いなことを言っていることはわかる。
まあ、そういう人がいるってのも、改めて認識はしたけど。
千陽も、どちらかと言うと、たぶん、そういうタイプだし。
ただ、例外として…特例として、私のことを好きでいてくれたから、ずっと一緒にいることを良しとしてくれたんだろう。
なんなら、喜々として一緒にいてくれたんだ。
穂がジッと千陽の言葉を待つ。
穂はなんでも聞いてくれるし、なんでも言ってくれる。
こっちが“ちょっと言うの気まずいなー”ってことも、純真無垢に聞いたり話したりする。
だから、こちらも言うしかなくなるんだ。
それを“怖い”と思う人も、世の中にはたくさんいるんだと思う。
でも私達みたいなのは、誰かに気づいて欲しいって心の中で叫んでるから…怖いと思わない。
むしろ、嬉しい。
聞いてくれることが、話してくれることが、嬉しい。
「知られたく…なかったの…」
「何を?」
また千陽が大きなため息をつく。
スマホをつけて、投げ捨てるように穂に渡す。
「そんな会話、見られたくないでしょ?」
「どうして?」
す、穂…。そこは察しなよ…。
ちょっと可笑しくて笑ってしまう。
千陽に睨まれた。
目をそらす。
「あ!親に“大好き”なんて、なかなか言わないもんね。恥ずかしいよね」
それは…間違いじゃないけど、正解でもない。
なんか、千陽を傷つけてショックを受けた自分がバカらしくなってくる…。
「穂…」
「ん?」
「千陽はさー、私達のために、好きでもない父親に媚売ってくれてんだよ。それを見られたくなかったって言ってんの」
「え!?あ!そっか…!あ…そっか、そっか」
「可愛いなあ、穂は」
「な、なんでよ…。ごめんね、千陽。気づけなくて」
穂が前髪を指で梳く。
「もう、いい。恥ずかしいって思った自分がバカみたい」
千陽は穂の手からスマホを引っこ抜くと、鞄にしまった。
私も、心音からお金を貰ってた時のこと、恥ずかしいって思ってる。
お金が欲しかったのは事実で、もし時間を戻せたのだとしても、たぶん私は同じ選択をする。
だってそれ以外に方法がわからなかった。
お金を得る方法も、友達と遊ぶ方法も、お母さんを喜ばせる方法も、自分が貧乏であるということを誤魔化す方法も。
お金がないことは言えたけど、言う度に、恥ずかしくて仕方なかった。
“貧乏だけど、友達と遊べるくらいにはお金があるよ”って体でいたかった。
千陽は私に似てる。
全然違うのに、似てる。
生きるために、媚を売らなきゃいけない…。
素の自分を、受け止めてもらえないと思っているから。
「ち、千陽…?私にできること、ある?」
なんか、私じゃなくて穂が悪いことしたみたいになってる。
千陽がドカッと大きなソファに座って、息を吐き出す。
「パーティ…」
「ん?」
「パーティ、穂も来てよ」
「え!?私、行っていいの?」
「うん。パパも喜ぶんじゃない?」
「お礼もしたいし、楽しみ!」
穂は…可愛いなあ、ホントに。
「じゃあ、私も行こーっと」
「あんた、昔行きたくないって言ってたじゃん」
「穂が行くなら話は別だよ」
「あっそ」
目元を腕で隠してるけど、口元がニヤけるのを千陽は隠しきれていない。
ホッとする。
…そっか。こうすれば良かったのか。
“私にできることある?”か。
でも、なかなか言えることじゃないよな。
責任感が強い穂だから言えることなんだ。
かっこいいな、私の彼女は。
「あ~、アップルサイダー飲も~っ」
「1500円のやつ!?」
「2千円ね」
「な…!?私も飲む!!」
「あんなにお金のこと気にしてたくせに?」
「うるさい!もういいんだ!!海老フライだって食べたしね!もう2千円じゃビビらねえよ!」
千陽がフッと笑う。
「穂も飲む?」
「い、いいのかな…?」
「うん」
「じゃあ…いただきます…」
「穂、飲ませて?」
千陽が穂の両頬を包み込んで、唇を重ねた。
穂はハの字眉にしながらも、口内にあったアップルサイダーを千陽に注ぎ込んだ。
千陽の喉がゴクゴクと音を鳴らす。
「おいし」
「私も飲ませてやろうか?」
千陽の、ただでさえ大きな瞳が、さらに大きくなる。
そして、伏し目がちに呟く。
「…うん」
なんだよ、穂の時よりエロい顔しやがって…。
微炭酸のアップルサイダーを口に入れて、穂の膝に片手をつく。
もう片方の手で千陽の顎を上げて、口づけする。
少しずつ、彼女に注ぎ込む。
最後の一口を注ぎ込むのと同時に、舌を入れた。
驚いたのか、“ごきゅ”と喉が鳴る。
りんごの香りが鼻を通っていく。
冷たい舌が混ざり合っていき、徐々に熱を帯びる。
彼女の顎に添えていた手を下ろしていく。
バスローブの襟元から、手を滑り込ませる。
胸元が少し開けて、乳房に触れやすくなった。
優しく揉む。
そこで気づく。
また冷たいままの手でさわっちゃったな…。
まあ、そういう人がいるってのも、改めて認識はしたけど。
千陽も、どちらかと言うと、たぶん、そういうタイプだし。
ただ、例外として…特例として、私のことを好きでいてくれたから、ずっと一緒にいることを良しとしてくれたんだろう。
なんなら、喜々として一緒にいてくれたんだ。
穂がジッと千陽の言葉を待つ。
穂はなんでも聞いてくれるし、なんでも言ってくれる。
こっちが“ちょっと言うの気まずいなー”ってことも、純真無垢に聞いたり話したりする。
だから、こちらも言うしかなくなるんだ。
それを“怖い”と思う人も、世の中にはたくさんいるんだと思う。
でも私達みたいなのは、誰かに気づいて欲しいって心の中で叫んでるから…怖いと思わない。
むしろ、嬉しい。
聞いてくれることが、話してくれることが、嬉しい。
「知られたく…なかったの…」
「何を?」
また千陽が大きなため息をつく。
スマホをつけて、投げ捨てるように穂に渡す。
「そんな会話、見られたくないでしょ?」
「どうして?」
す、穂…。そこは察しなよ…。
ちょっと可笑しくて笑ってしまう。
千陽に睨まれた。
目をそらす。
「あ!親に“大好き”なんて、なかなか言わないもんね。恥ずかしいよね」
それは…間違いじゃないけど、正解でもない。
なんか、千陽を傷つけてショックを受けた自分がバカらしくなってくる…。
「穂…」
「ん?」
「千陽はさー、私達のために、好きでもない父親に媚売ってくれてんだよ。それを見られたくなかったって言ってんの」
「え!?あ!そっか…!あ…そっか、そっか」
「可愛いなあ、穂は」
「な、なんでよ…。ごめんね、千陽。気づけなくて」
穂が前髪を指で梳く。
「もう、いい。恥ずかしいって思った自分がバカみたい」
千陽は穂の手からスマホを引っこ抜くと、鞄にしまった。
私も、心音からお金を貰ってた時のこと、恥ずかしいって思ってる。
お金が欲しかったのは事実で、もし時間を戻せたのだとしても、たぶん私は同じ選択をする。
だってそれ以外に方法がわからなかった。
お金を得る方法も、友達と遊ぶ方法も、お母さんを喜ばせる方法も、自分が貧乏であるということを誤魔化す方法も。
お金がないことは言えたけど、言う度に、恥ずかしくて仕方なかった。
“貧乏だけど、友達と遊べるくらいにはお金があるよ”って体でいたかった。
千陽は私に似てる。
全然違うのに、似てる。
生きるために、媚を売らなきゃいけない…。
素の自分を、受け止めてもらえないと思っているから。
「ち、千陽…?私にできること、ある?」
なんか、私じゃなくて穂が悪いことしたみたいになってる。
千陽がドカッと大きなソファに座って、息を吐き出す。
「パーティ…」
「ん?」
「パーティ、穂も来てよ」
「え!?私、行っていいの?」
「うん。パパも喜ぶんじゃない?」
「お礼もしたいし、楽しみ!」
穂は…可愛いなあ、ホントに。
「じゃあ、私も行こーっと」
「あんた、昔行きたくないって言ってたじゃん」
「穂が行くなら話は別だよ」
「あっそ」
目元を腕で隠してるけど、口元がニヤけるのを千陽は隠しきれていない。
ホッとする。
…そっか。こうすれば良かったのか。
“私にできることある?”か。
でも、なかなか言えることじゃないよな。
責任感が強い穂だから言えることなんだ。
かっこいいな、私の彼女は。
「あ~、アップルサイダー飲も~っ」
「1500円のやつ!?」
「2千円ね」
「な…!?私も飲む!!」
「あんなにお金のこと気にしてたくせに?」
「うるさい!もういいんだ!!海老フライだって食べたしね!もう2千円じゃビビらねえよ!」
千陽がフッと笑う。
「穂も飲む?」
「い、いいのかな…?」
「うん」
「じゃあ…いただきます…」
「穂、飲ませて?」
千陽が穂の両頬を包み込んで、唇を重ねた。
穂はハの字眉にしながらも、口内にあったアップルサイダーを千陽に注ぎ込んだ。
千陽の喉がゴクゴクと音を鳴らす。
「おいし」
「私も飲ませてやろうか?」
千陽の、ただでさえ大きな瞳が、さらに大きくなる。
そして、伏し目がちに呟く。
「…うん」
なんだよ、穂の時よりエロい顔しやがって…。
微炭酸のアップルサイダーを口に入れて、穂の膝に片手をつく。
もう片方の手で千陽の顎を上げて、口づけする。
少しずつ、彼女に注ぎ込む。
最後の一口を注ぎ込むのと同時に、舌を入れた。
驚いたのか、“ごきゅ”と喉が鳴る。
りんごの香りが鼻を通っていく。
冷たい舌が混ざり合っていき、徐々に熱を帯びる。
彼女の顎に添えていた手を下ろしていく。
バスローブの襟元から、手を滑り込ませる。
胸元が少し開けて、乳房に触れやすくなった。
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そこで気づく。
また冷たいままの手でさわっちゃったな…。
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