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9.移ろい
493.新学年
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「永那~!遅い~!!」
ドアを開けた瞬間、床にへばりつくように座ったお母さんに両足を掴まれた。
「これから受験勉強するようになるから、ちょっと遅くなるって言ったじゃん。私、もう受験生だよ!?」
「受験って、来年でしょ~?意味わかんない~!!お母さんのことめんどくさくなったんでしょ…もう、お母さんと一緒にいたくないからでしょ…」
ポロポロと涙を流して、私の足を抱きしめる。
「あ゛~!穂ちゃんと2人になりたいからでしょ~!!」
あー…めんどくさい。
「穂は今日、生徒会!私だって穂と一緒にいたいよ…」
「じゃあなんで早く帰ってこないの~!!」
「だから、勉強して帰ってきたんだってば」
いつか、私がスマホを見ているのを、恋人と連絡を取り合っているからだと思い込んで騒いだ時に似ている。
「お母さんは大学受験してないからわかんないかもしんないけど、穂も千陽も優里も、みんな塾通って、もう受験勉強してるんだよ!?」
説明しても無駄だ。
「わかんない、わかんない」と騒いで、私が「ごめんね」と抱きしめるまで続く。
お母さんの調子は、良い日が続くようになりはしたものの、まだまだこういう日がある。
一緒にご飯を作ると、少し機嫌が良くなる。
ご飯を食べて、一緒にテレビを見ていると、泣いたことはもう覚えていない。
お風呂でお母さんの髪を洗ってあげると、鼻歌を歌い始める。
薬を飲ませて、お母さんが寝るまでそばにいる。
「日曜は、グループカウンセリングだっけ?」
「うんっ」
「ボランティアで、街の植栽もしてるんだよね?この前はどこやったんだっけ?」
「駅前だよ」
その後、ボランティアで仲良くなった人の話を聞き、お母さんがある程度満足したところで、寝かせた。
…小さい頃は、お母さんが私にやってくれていたことだ。
いつからかお姉ちゃんがやってくれるようになって、気づいたら私がお母さんにやっている。
お母さんが寝たら、食器の片付け。
たまに一緒に寝てしまうこともあるけど、今日は起きていられた。
少しテレビを見て、シャワーを浴びて、テーブルに教材を開く。
シャープペンを持ったはいいものの、勉強は全く進まず、テーブルに肘をついて、ガクッと手の平に乗せていた頭が落ちたところで、ノートを閉じた。
乱雑に明日の授業の準備をして、布団を敷く。
倒れるように眠りについた。
…どうやったら家で勉強できるんだろう?
こんなことは初めてで、対処法がわからない。
お母さんの病状が良くなったら良くなったで、こんな弊害が出てくるとは思わなかった。
アラームで起きる。
なかなか1回では起きられなくて、いつも余裕を持って家を出たいのにギリギリだ。
バタバタと準備をしている最中にお母さんが起きてくる。
「休んじゃえばいいのに」と言われることもあるから、困る。
前はこんなことなかったのに…。
とにかく、薬を飲んで、規則的な生活を送るようになってから、お母さんは何かしらの活動をしたくてたまらないらしい。
元々毎日のように働いていたんだから、エネルギーはあるのかもしれない。
私が学校に行っている最中、散歩もするけど、基本的には本を読んだりテレビを見たりして過ごしているらしい。
最近SNSも始めたらしく、私のアカウントを半ば無理矢理フォローし、私もフォローさせられた。
親とSNS繋がってる人なんて、ほとんど見たことがない。
親と友達みたいに仲の良い子は、たまに見かけるけど、かなりの少数派だ。
SNSには、読んだ本の感想が書かれていることが多い。
そんなわけで、私が家に帰ってから勉強しようとすると、本は読みたくないし、散歩は飽きて、何か他のことをしたいと騒ぐのだ。
走って家を出て、疲れたらたまに歩く。
そんな登校が当たり前になった。
体験入部期間は、生徒会はずっと忙しいらしい。
つまり、1週間はまともに穂と触れ合えない。
私は酷く寂しさを感じるけど、穂はそれどころではない感じだった。
だから邪魔しないように私はひっそりと寂しさを胸にしまう。
昼休みだけが癒やし。
「あ~、穂~」
パンを早々に食べ終えて、穂に抱きつく。
「体験入部は忙しさばかりを目立たせずに、楽しい面もアピールしようと思って、今年は早めに体育祭の話し合いをすることにしたんだ。種目は、毎年ほとんど変化はないけど、先生に交渉すれば変えられる競技もあるし、音楽なんかは自由だから、そういう案を出してもらったり」
私が抱きしめることなんか気にせず、優里と体験入部について話している。
…寂しい。
「私達も、早めにシャトルに触れてもらってるかなあ。私の時は、ほとんど見学だけって感じだったんだけど、やっぱりシャトルにさわりたいだろうし」
「“体験入部”って名前がついているんだし、ちゃんと体験をしたいよね」
「ねー!体験してもらわないと感覚わかんないだろうしさ!」
穂が頷く。
千陽と桜はヒソヒソと何やら楽しそうに話していて、私だけひとりぼっちだ。
ドアを開けた瞬間、床にへばりつくように座ったお母さんに両足を掴まれた。
「これから受験勉強するようになるから、ちょっと遅くなるって言ったじゃん。私、もう受験生だよ!?」
「受験って、来年でしょ~?意味わかんない~!!お母さんのことめんどくさくなったんでしょ…もう、お母さんと一緒にいたくないからでしょ…」
ポロポロと涙を流して、私の足を抱きしめる。
「あ゛~!穂ちゃんと2人になりたいからでしょ~!!」
あー…めんどくさい。
「穂は今日、生徒会!私だって穂と一緒にいたいよ…」
「じゃあなんで早く帰ってこないの~!!」
「だから、勉強して帰ってきたんだってば」
いつか、私がスマホを見ているのを、恋人と連絡を取り合っているからだと思い込んで騒いだ時に似ている。
「お母さんは大学受験してないからわかんないかもしんないけど、穂も千陽も優里も、みんな塾通って、もう受験勉強してるんだよ!?」
説明しても無駄だ。
「わかんない、わかんない」と騒いで、私が「ごめんね」と抱きしめるまで続く。
お母さんの調子は、良い日が続くようになりはしたものの、まだまだこういう日がある。
一緒にご飯を作ると、少し機嫌が良くなる。
ご飯を食べて、一緒にテレビを見ていると、泣いたことはもう覚えていない。
お風呂でお母さんの髪を洗ってあげると、鼻歌を歌い始める。
薬を飲ませて、お母さんが寝るまでそばにいる。
「日曜は、グループカウンセリングだっけ?」
「うんっ」
「ボランティアで、街の植栽もしてるんだよね?この前はどこやったんだっけ?」
「駅前だよ」
その後、ボランティアで仲良くなった人の話を聞き、お母さんがある程度満足したところで、寝かせた。
…小さい頃は、お母さんが私にやってくれていたことだ。
いつからかお姉ちゃんがやってくれるようになって、気づいたら私がお母さんにやっている。
お母さんが寝たら、食器の片付け。
たまに一緒に寝てしまうこともあるけど、今日は起きていられた。
少しテレビを見て、シャワーを浴びて、テーブルに教材を開く。
シャープペンを持ったはいいものの、勉強は全く進まず、テーブルに肘をついて、ガクッと手の平に乗せていた頭が落ちたところで、ノートを閉じた。
乱雑に明日の授業の準備をして、布団を敷く。
倒れるように眠りについた。
…どうやったら家で勉強できるんだろう?
こんなことは初めてで、対処法がわからない。
お母さんの病状が良くなったら良くなったで、こんな弊害が出てくるとは思わなかった。
アラームで起きる。
なかなか1回では起きられなくて、いつも余裕を持って家を出たいのにギリギリだ。
バタバタと準備をしている最中にお母さんが起きてくる。
「休んじゃえばいいのに」と言われることもあるから、困る。
前はこんなことなかったのに…。
とにかく、薬を飲んで、規則的な生活を送るようになってから、お母さんは何かしらの活動をしたくてたまらないらしい。
元々毎日のように働いていたんだから、エネルギーはあるのかもしれない。
私が学校に行っている最中、散歩もするけど、基本的には本を読んだりテレビを見たりして過ごしているらしい。
最近SNSも始めたらしく、私のアカウントを半ば無理矢理フォローし、私もフォローさせられた。
親とSNS繋がってる人なんて、ほとんど見たことがない。
親と友達みたいに仲の良い子は、たまに見かけるけど、かなりの少数派だ。
SNSには、読んだ本の感想が書かれていることが多い。
そんなわけで、私が家に帰ってから勉強しようとすると、本は読みたくないし、散歩は飽きて、何か他のことをしたいと騒ぐのだ。
走って家を出て、疲れたらたまに歩く。
そんな登校が当たり前になった。
体験入部期間は、生徒会はずっと忙しいらしい。
つまり、1週間はまともに穂と触れ合えない。
私は酷く寂しさを感じるけど、穂はそれどころではない感じだった。
だから邪魔しないように私はひっそりと寂しさを胸にしまう。
昼休みだけが癒やし。
「あ~、穂~」
パンを早々に食べ終えて、穂に抱きつく。
「体験入部は忙しさばかりを目立たせずに、楽しい面もアピールしようと思って、今年は早めに体育祭の話し合いをすることにしたんだ。種目は、毎年ほとんど変化はないけど、先生に交渉すれば変えられる競技もあるし、音楽なんかは自由だから、そういう案を出してもらったり」
私が抱きしめることなんか気にせず、優里と体験入部について話している。
…寂しい。
「私達も、早めにシャトルに触れてもらってるかなあ。私の時は、ほとんど見学だけって感じだったんだけど、やっぱりシャトルにさわりたいだろうし」
「“体験入部”って名前がついているんだし、ちゃんと体験をしたいよね」
「ねー!体験してもらわないと感覚わかんないだろうしさ!」
穂が頷く。
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