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9.移ろい
499.パーティ
「え、永那ちゃん、泣かないで」
穂が私を抱きしめてくれる。
「そんなことで泣かないでよ」
千陽がぶっきらぼうに言う。
「ありゃりゃ」
優里も抱きしめてくれて、なんだか本格的に泣けてきた。
「大丈夫だよ、永那。みんなちゃんと」
「優里」
…ん?
「わ、私達、みんな、ちゃんと覚えてたし。い、言おうと思ってたよ?…でも、ほら、杏奈ちゃん達のことがあったからさ?つい…つい、ね?そっち優先になっちゃったっていうか…」
なんで、今、優里、千陽に叱られたんだ?
あれ…?
あれー?
「ハァ」と千陽が息を吐く。
「優里は本当に…」
「え!?なに!?」
私を抱きしめていた優里が千陽の言葉であわあわと手を空中に彷徨わせる。
穂は眉をハの字にしながら、微笑んでいた。
気づいてしまって、つい涎が垂れそうになる。
サプライズかー。
もしかしてもしかして、今日の昼は早めに体育館から撤収して、教室に行ったらみんなが「おめでと~!」ってやる、みたいな?そういうやつ?
私としたことが…!そんなことにも気づけないなんて…!
違和感を抱いていたんだから、それくらい考えればわかりそうなものなのに…。
それほどまでに冷静さを失っていたということか。
穂の体調を気遣っていたのと(エッチとデートの我慢)、勉強時間の確保、ひそかちゃん達対策で頭がいっぱいいっぱいになっていた。
ま、サプライズなんて気づいてない方がいいんだから、本来それで良かったはずなんだけど…。
優里のアホが相変わらず炸裂していて、それはそれで面白い。
親指と人差指で銃のような形を作って、それを顎に当てる。
「ふむ。…みんな覚えていたんなら良しとしよう」
「ハァ」と、また千陽が盛大にため息を吐く。
「もう行こ」
千陽が立ち上がって、階段を下りていく。
ほらね!私が思った通りだ!
「よーし!行こ、行こ~!」
階段の手摺を両手で掴んで、ブランコのようにジャンプしながら階段を下りていく。
「永那ちゃん、危ないよ」
「はーい!」
ルンルンしながら教室に向かう。
どんなサプライズかな~!
…なかった。
お昼休みにサプライズ、なかった。
みんな平然と過ごしていて、まるでいつも通りの何も変わらない日みたいだった。
穂の席に座って、不貞腐れながら机に突っ伏していると、だんだん脳が冴えてきて、こんなに早く教室に戻ってきたら、ひそかちゃん達がまた来ちゃうんじゃない?とか考え始めた。
結局、彼女達も来なかったけど。
私の予想は外れまくりだ。
普通に授業が始まって、次の休み時間も、次の休み時間も、何もなかった。
じゃあ放課後か!?と思ったけど、各々教室を出て行く。
「千陽ちゃん!?帰るの!?」
桜の席にやって来た千陽に叫ぶ。
「…なに?悪い?」
「なんでよ!毎年プレゼントくれるじゃん!」
千陽が満面の笑みを浮かべる。
決して自然な笑みではなく、作り物の、背筋がゾワリとする笑みだ。
「え?もしかして永那、すっごく喜んでくれてたの?いつも、楽しみにしてくれてたの?あたしからのプレゼント」
うぐぐ…。
いつも、なんでもないフリして受け取っていた。
嬉しいに決まってる。
私、自分の欲しい物、ほとんど買えないし。
千陽のセンスは良いし。
…でも、なんか、千陽がくれた物を素直に喜ぶのは癪で、いつも軽くお礼を言っておしまいだった。
口を噤んで、鼻から息を吹き出す。
そんな私の気持ちを見透かしたように、ポンと頭に手を置かれた。
そのまま彼女の手が離れていき、桜と一緒に教室から出て行ってしまう。
「なんだよ…」
「永那ちゃん」
「穂」
穂が隣の席に座る。
「千陽のやつ、ひどいんだよ」
フフッと彼女が笑って、髪を耳にかける。
「私ね」
「ん?」
「永那ちゃんのお誕生日は、絶対にお祝いしたかったの」
「うん…」
意図が読めない。
「絶対に一緒にいたかった」
「うん。…私も、穂と一緒にいたいよ」
「10ヶ月記念日、一緒にいられなかったし」
「そ、それは…穂が忙しそうだったから…」
彼女が目を瞠る。
すぐに口元が弓なりになって、嬉しそうに伏し目がちになった。
「そっか。気遣ってくれたんだ。ありがとう、永那ちゃん」
「いいよ…そんな…お礼を言われるようなことじゃないし」
「でも、嬉しいよ」
見つめられて、柄にもなく、照れる。
「で、でも、明日は穂、生徒会のバーベキューでしょ?…日曜に会ってもいいけど、お母さんがいるし。絶対駄々こねると思うし」
「明日も明後日も、永那ちゃんの誕生日じゃないでしょ?」
「それは…そうだけど…」
「永那ちゃんの誕生日は、今日でしょ?」
「まあ…。え?…あ、デートするの?これから」
綿毛がふわりと宙に浮かぶように、彼女がふわりと笑った。
開いた窓から、春の風が教室に吹き込んでくる。
彼女の長い髪が靡く。
いつかを思い出す。
放課後、私が教室で眠りこけていた日…彼女が私を起こそうと躍起になった、あの日。
自然と、私の口元も緩む。
「なんか、懐かしいね。最初、穂が私を起こそうとしてさ…」
あの時は、もう少し湿った風だった。
強風で、穂が2度目の教室の掃除をしなくちゃいけなくなって…。
穂が私を抱きしめてくれる。
「そんなことで泣かないでよ」
千陽がぶっきらぼうに言う。
「ありゃりゃ」
優里も抱きしめてくれて、なんだか本格的に泣けてきた。
「大丈夫だよ、永那。みんなちゃんと」
「優里」
…ん?
「わ、私達、みんな、ちゃんと覚えてたし。い、言おうと思ってたよ?…でも、ほら、杏奈ちゃん達のことがあったからさ?つい…つい、ね?そっち優先になっちゃったっていうか…」
なんで、今、優里、千陽に叱られたんだ?
あれ…?
あれー?
「ハァ」と千陽が息を吐く。
「優里は本当に…」
「え!?なに!?」
私を抱きしめていた優里が千陽の言葉であわあわと手を空中に彷徨わせる。
穂は眉をハの字にしながら、微笑んでいた。
気づいてしまって、つい涎が垂れそうになる。
サプライズかー。
もしかしてもしかして、今日の昼は早めに体育館から撤収して、教室に行ったらみんなが「おめでと~!」ってやる、みたいな?そういうやつ?
私としたことが…!そんなことにも気づけないなんて…!
違和感を抱いていたんだから、それくらい考えればわかりそうなものなのに…。
それほどまでに冷静さを失っていたということか。
穂の体調を気遣っていたのと(エッチとデートの我慢)、勉強時間の確保、ひそかちゃん達対策で頭がいっぱいいっぱいになっていた。
ま、サプライズなんて気づいてない方がいいんだから、本来それで良かったはずなんだけど…。
優里のアホが相変わらず炸裂していて、それはそれで面白い。
親指と人差指で銃のような形を作って、それを顎に当てる。
「ふむ。…みんな覚えていたんなら良しとしよう」
「ハァ」と、また千陽が盛大にため息を吐く。
「もう行こ」
千陽が立ち上がって、階段を下りていく。
ほらね!私が思った通りだ!
「よーし!行こ、行こ~!」
階段の手摺を両手で掴んで、ブランコのようにジャンプしながら階段を下りていく。
「永那ちゃん、危ないよ」
「はーい!」
ルンルンしながら教室に向かう。
どんなサプライズかな~!
…なかった。
お昼休みにサプライズ、なかった。
みんな平然と過ごしていて、まるでいつも通りの何も変わらない日みたいだった。
穂の席に座って、不貞腐れながら机に突っ伏していると、だんだん脳が冴えてきて、こんなに早く教室に戻ってきたら、ひそかちゃん達がまた来ちゃうんじゃない?とか考え始めた。
結局、彼女達も来なかったけど。
私の予想は外れまくりだ。
普通に授業が始まって、次の休み時間も、次の休み時間も、何もなかった。
じゃあ放課後か!?と思ったけど、各々教室を出て行く。
「千陽ちゃん!?帰るの!?」
桜の席にやって来た千陽に叫ぶ。
「…なに?悪い?」
「なんでよ!毎年プレゼントくれるじゃん!」
千陽が満面の笑みを浮かべる。
決して自然な笑みではなく、作り物の、背筋がゾワリとする笑みだ。
「え?もしかして永那、すっごく喜んでくれてたの?いつも、楽しみにしてくれてたの?あたしからのプレゼント」
うぐぐ…。
いつも、なんでもないフリして受け取っていた。
嬉しいに決まってる。
私、自分の欲しい物、ほとんど買えないし。
千陽のセンスは良いし。
…でも、なんか、千陽がくれた物を素直に喜ぶのは癪で、いつも軽くお礼を言っておしまいだった。
口を噤んで、鼻から息を吹き出す。
そんな私の気持ちを見透かしたように、ポンと頭に手を置かれた。
そのまま彼女の手が離れていき、桜と一緒に教室から出て行ってしまう。
「なんだよ…」
「永那ちゃん」
「穂」
穂が隣の席に座る。
「千陽のやつ、ひどいんだよ」
フフッと彼女が笑って、髪を耳にかける。
「私ね」
「ん?」
「永那ちゃんのお誕生日は、絶対にお祝いしたかったの」
「うん…」
意図が読めない。
「絶対に一緒にいたかった」
「うん。…私も、穂と一緒にいたいよ」
「10ヶ月記念日、一緒にいられなかったし」
「そ、それは…穂が忙しそうだったから…」
彼女が目を瞠る。
すぐに口元が弓なりになって、嬉しそうに伏し目がちになった。
「そっか。気遣ってくれたんだ。ありがとう、永那ちゃん」
「いいよ…そんな…お礼を言われるようなことじゃないし」
「でも、嬉しいよ」
見つめられて、柄にもなく、照れる。
「で、でも、明日は穂、生徒会のバーベキューでしょ?…日曜に会ってもいいけど、お母さんがいるし。絶対駄々こねると思うし」
「明日も明後日も、永那ちゃんの誕生日じゃないでしょ?」
「それは…そうだけど…」
「永那ちゃんの誕生日は、今日でしょ?」
「まあ…。え?…あ、デートするの?これから」
綿毛がふわりと宙に浮かぶように、彼女がふわりと笑った。
開いた窓から、春の風が教室に吹き込んでくる。
彼女の長い髪が靡く。
いつかを思い出す。
放課後、私が教室で眠りこけていた日…彼女が私を起こそうと躍起になった、あの日。
自然と、私の口元も緩む。
「なんか、懐かしいね。最初、穂が私を起こそうとしてさ…」
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