上 下
5 / 118

第一章・ホステス麻薬事件。5

しおりを挟む
「実は、最近。赤薔薇会が、ある男と関わり合いがあると情報を手に入れたんですよ。その男の名は、篠田正信で暴力団です。その篠田が最近よく出入りしているキャバクラ『アイリス』に仲間が居るんじゃないかと思い警察も今、警戒をしています。それに俺も担当することになったんですけど、キャバクラなんて初めてで、どうしたらいいか分からないし。俺酒とか弱いから間違えて酔っぱらって刑事だとバレたら大変なことになるッス。先輩。どうにか調査とかしてくれませんか?」

 瀬戸さんが泣きついてきたのは、これか。
 しかしいいのだろうか? いくら神崎さんが元刑事だとしても、こんなベラベラと第三者に喋ってしまっても?
 普通なら秘密情報だし他人に話してはならないはずだ。もしバレたらこちらも大変なことになるのでは?
 俺は、そんな心配をしていたが神崎さんは、腕を組みながら考え込んでいた。

「その情報の裏は取れているのか? ガセの場合もあるだろう?」

「大丈夫、黒ッス。そこの暴力団の仲間の一人が自供した言葉なので。篠田が最近金回りが良くなってたびたび出入りしているらしいのと、そいつも薬で捕まったのですが篠田から貰ったと言っていました。でも逮捕状が出る前に捕まえたくて。俺の手柄を増やさないとまた課長に怒られるし」

「なるほどな。だとしたら、そのアイリスに一度行ってみた方がいいな。ただし客とではなく従業員としてだ」

 えっ……? 何で二人して俺の方を見るの?
 まさかと嫌な予感がした。こういう時は、大体良くないことが起きる。
 マジか……。それが俺が一番恐れていたことだ。
 バイトの求人には仕事以外で手伝ったら特別手当てが付くと書かれていた。
 しかし、それは重大な過ちになるきっかけに過ぎなかった。この事件もまた。

「今日からバイトとして入ることになりました。立花です。よろしくお願いします」

 結局俺は、言われるがまま潜入調査として『アイリス』にボーイのバイトとして働くことになった。何でこんなことに。
 そのお陰で喫茶店以外の時にバイトしていたラーメン屋は、辞めるはめに。
 まぁ特別手当ては、確かに時給はいい。だが無茶ぶりが酷い。危険と隣り合わせなのも恐ろしい。俺はバイト先を間違えたかもしれない。

「では、立花君。指導のもと今日から働いて」
しおりを挟む

処理中です...