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第三章 我、太陽の如き愛の伯(おさ)とならん
第五十二話 太陽と交わる(3)※
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裸の胸を合わせて、朱昂は伯陽の腰にしがみついている。深く穿ったまま動かない伯陽は、大きく息を吐くと少しだけ腰を引いた。かすかな刺激でも、朱昂の喉がごくりと鳴る。
「――ぶっ壊すかと思った」
「ん……、いいよ」
「よくねえよ。あーあ、唇真っ赤」
微笑する伯陽の瞳孔はほとんど円に戻っていた。突き上げる本能を理性でねじ伏せるなんて恐ろしい奴だと感心しつつ、朱昂は伯陽の額の汗をぬぐう。
伯陽が朱昂の額にくちづけた。
「動いていいか? もう出るぞ。出すぞ、俺は」
余裕を取り戻した軽い物言いに頬がゆるむのが分かった。「どんな宣言だよ」と笑いながら首を縦に振る。
「ん、ん、あっ」
伯陽の腰が動き始めた。単純な抽送だが、一突きされるごとに朱昂の中の想いが濃くなっていく。
「き、もち、いいっ!」
引き締まった伯陽の肩にすがりつきながら、朱昂は信じられない思いだった。
心が満たされていた。伯陽が腰を使うたび、たぷんたぷんと心を満たしたぬるま湯が優しく揺れる。伯陽への想いが尽きない。犯される恐怖がどこにもない。
――ただひたすらに、愛されている。
伯陽の腕の中でだけ、これを感じることができる。朱昂は懸命に伯陽を見つめた。
まっすぐで、おおらかで、狂気も恫喝も打算もない、ただ「愛」というあたたかなものを初めてくれたひと。
「はくよ……っ」
「朱昂」
呼べばすぐに返ってくる声に、朱昂は涙がこみ上げるのを止められなかった。
「伯陽!」
髪を振り乱し、汗を散らしながら朱昂は想い人の名を叫ぶ。呼ぶと心の闇がぽつんと消える。
ぽつぽつぽつぽつと、光が増えていく。心が軽くなる。性感は溶岩のように身体中を巡っているのに、心だけは爽快で、どうか伯陽もそうであってほしいと願う。
『本当は、自分の気持ちをどうやって抑えていけばいいのか分からなくて、途方に暮れてる』
朱昂の脳裏に、伯陽の言葉がよぎった。
お互いに気持ちを抑えつける必要などなかった。それでも、伯陽が交わりたいという欲求を抑えつづけていたのは自分が怖がっていたからだと、朱昂は今分かった。
怖かった。自分たちの形が変わるのが怖かった。否、形が変わることで、伯陽への気持ちが純粋な「愛」ではないと、自覚してしまうのが怖かった。
――純粋な愛が分からない。この気持ちが愛ではなかったら?
依存先、性欲のはけ口、都合のいい手駒。伯陽をそのように扱ってしまうのではないか、もう扱っているのではないか、常に心のどこかで疑っていた。
性的に成熟していないから体を交わせない。そんなものは言い訳だった。「親友」「幼馴染」「運命のしもべ」、伯陽との関係性を彩る綺麗な額を用意して、当てはめて、そこからはみ出す気持ちは額の中へ無理に押し込めようとした。
あまつ、伯陽の気持ちすら疑っていた。
――今はかわいい。今は弱い。でも大きくなったら、愛してくれないでしょう? いつか俺が、いらなくなるのだよね?
怖かった。大きくなってしまうのが、怖かった。いつか伯陽の関心を惹けなくなるのが、恐ろしかった。
「しゅ、こぉっ!」
荒い息がもれる。伯陽が朱昂の肩の横に手をついて、懸命に腰を動かしている。高い鼻梁を汗が伝うのを、腹が弾けそうな快感に翻弄されながら朱昂は見つめる。まぶたを下ろし、眉を寄せていた伯陽が瞳を見せた。
眉が下がる。
「愛してるよ、朱昂」
上ずった声が悲痛に聞こえたのは、快感に耐えているからだけではないだろう。伯陽は言葉を続ける。
「こんなことしか言えないおれを、軽薄な男だと思わないでくれ……」
「伯陽……」
己の不信感が伯陽を傷つけていたのだと思った。交わりを拒むことで、つながることから逃げる態度で、伯陽の口を塞いだのだ。気持ちを抑え込むように、仕向けてしまった。
伯陽の心を軽くしたい、と朱昂は願った。出会ってよかったと、朱昂の元に戻るために苦労してよかったと、ふたりで乗り越えてよかったと思ってほしい。
伯陽の生きてきた道を、伯陽自身が肯定してほしい。そのために、朱昂は一歩踏み出す決心をした。
目の前にある伯陽の頬に両手を伸ばす。包むと熱く、汗ばんでいる。
「伯陽、あのね、いっぱい突いて」
「いっぱい? こう?」
「ぅん……!」
伯陽の腰の動きが早まる。肉がぶつかる音がする。朱昂の尻が、ぶる、ぶる、と細かく痙攣を始めた。
伯陽の頭を引き寄せてくちづける。目と目を合わせる。
「ん、きもちいい、俺、俺は、おれ――」
言葉にならない思いが聞こえたように、伯陽は小さくうなずいた。黒い瞳が、小さな生き物のようにふるふると揺れて、とてもかわいらしい。
「俺、伯陽のこと、あ、いしてる」
「うん、朱昂」
「ずっとずっとすき、だった。一目見た時から、ずっとたいせつ、ずっと、愛してるよ……!」
この先も永遠に、と続ける言葉は伯陽の唇によって塞がれた。
くちづけ、抱きしめられたまま伯陽の楔がずずずっと奥まで入ってくる。奥を伯陽が細かく突いた。
細かい刺激に、朱昂の媚肉が悦び収縮する。伯陽の槍先が、朱昂の我慢の膜を突き破った。
「ぁくよ、――ぅうううああああああ……っ!」
「しゅ、こうっ!」
熱すぎて何が起こっているかが分からない。体の中の溶岩が一挙に光の束となって脳天まで貫く。すがりつかないと消し飛びそうで、必死に伯陽を抱きしめた。
耐えている内にふわんと意識が浮き上がり、ぽかぽかした光に胸の奥まで照らされた。
「伯陽、あったかい……」
つぶやく朱昂の額に伯陽が唇を落とした。荒い呼吸が落ち着いていく。ふたりの体は離れない。
「愛している」
「おれも、あいしてるよ」
伯陽の囁きに応えながら、朱昂は安らぎの光に身を任せていた。
太陽に抱かれたのだと、思った。
「――ぶっ壊すかと思った」
「ん……、いいよ」
「よくねえよ。あーあ、唇真っ赤」
微笑する伯陽の瞳孔はほとんど円に戻っていた。突き上げる本能を理性でねじ伏せるなんて恐ろしい奴だと感心しつつ、朱昂は伯陽の額の汗をぬぐう。
伯陽が朱昂の額にくちづけた。
「動いていいか? もう出るぞ。出すぞ、俺は」
余裕を取り戻した軽い物言いに頬がゆるむのが分かった。「どんな宣言だよ」と笑いながら首を縦に振る。
「ん、ん、あっ」
伯陽の腰が動き始めた。単純な抽送だが、一突きされるごとに朱昂の中の想いが濃くなっていく。
「き、もち、いいっ!」
引き締まった伯陽の肩にすがりつきながら、朱昂は信じられない思いだった。
心が満たされていた。伯陽が腰を使うたび、たぷんたぷんと心を満たしたぬるま湯が優しく揺れる。伯陽への想いが尽きない。犯される恐怖がどこにもない。
――ただひたすらに、愛されている。
伯陽の腕の中でだけ、これを感じることができる。朱昂は懸命に伯陽を見つめた。
まっすぐで、おおらかで、狂気も恫喝も打算もない、ただ「愛」というあたたかなものを初めてくれたひと。
「はくよ……っ」
「朱昂」
呼べばすぐに返ってくる声に、朱昂は涙がこみ上げるのを止められなかった。
「伯陽!」
髪を振り乱し、汗を散らしながら朱昂は想い人の名を叫ぶ。呼ぶと心の闇がぽつんと消える。
ぽつぽつぽつぽつと、光が増えていく。心が軽くなる。性感は溶岩のように身体中を巡っているのに、心だけは爽快で、どうか伯陽もそうであってほしいと願う。
『本当は、自分の気持ちをどうやって抑えていけばいいのか分からなくて、途方に暮れてる』
朱昂の脳裏に、伯陽の言葉がよぎった。
お互いに気持ちを抑えつける必要などなかった。それでも、伯陽が交わりたいという欲求を抑えつづけていたのは自分が怖がっていたからだと、朱昂は今分かった。
怖かった。自分たちの形が変わるのが怖かった。否、形が変わることで、伯陽への気持ちが純粋な「愛」ではないと、自覚してしまうのが怖かった。
――純粋な愛が分からない。この気持ちが愛ではなかったら?
依存先、性欲のはけ口、都合のいい手駒。伯陽をそのように扱ってしまうのではないか、もう扱っているのではないか、常に心のどこかで疑っていた。
性的に成熟していないから体を交わせない。そんなものは言い訳だった。「親友」「幼馴染」「運命のしもべ」、伯陽との関係性を彩る綺麗な額を用意して、当てはめて、そこからはみ出す気持ちは額の中へ無理に押し込めようとした。
あまつ、伯陽の気持ちすら疑っていた。
――今はかわいい。今は弱い。でも大きくなったら、愛してくれないでしょう? いつか俺が、いらなくなるのだよね?
怖かった。大きくなってしまうのが、怖かった。いつか伯陽の関心を惹けなくなるのが、恐ろしかった。
「しゅ、こぉっ!」
荒い息がもれる。伯陽が朱昂の肩の横に手をついて、懸命に腰を動かしている。高い鼻梁を汗が伝うのを、腹が弾けそうな快感に翻弄されながら朱昂は見つめる。まぶたを下ろし、眉を寄せていた伯陽が瞳を見せた。
眉が下がる。
「愛してるよ、朱昂」
上ずった声が悲痛に聞こえたのは、快感に耐えているからだけではないだろう。伯陽は言葉を続ける。
「こんなことしか言えないおれを、軽薄な男だと思わないでくれ……」
「伯陽……」
己の不信感が伯陽を傷つけていたのだと思った。交わりを拒むことで、つながることから逃げる態度で、伯陽の口を塞いだのだ。気持ちを抑え込むように、仕向けてしまった。
伯陽の心を軽くしたい、と朱昂は願った。出会ってよかったと、朱昂の元に戻るために苦労してよかったと、ふたりで乗り越えてよかったと思ってほしい。
伯陽の生きてきた道を、伯陽自身が肯定してほしい。そのために、朱昂は一歩踏み出す決心をした。
目の前にある伯陽の頬に両手を伸ばす。包むと熱く、汗ばんでいる。
「伯陽、あのね、いっぱい突いて」
「いっぱい? こう?」
「ぅん……!」
伯陽の腰の動きが早まる。肉がぶつかる音がする。朱昂の尻が、ぶる、ぶる、と細かく痙攣を始めた。
伯陽の頭を引き寄せてくちづける。目と目を合わせる。
「ん、きもちいい、俺、俺は、おれ――」
言葉にならない思いが聞こえたように、伯陽は小さくうなずいた。黒い瞳が、小さな生き物のようにふるふると揺れて、とてもかわいらしい。
「俺、伯陽のこと、あ、いしてる」
「うん、朱昂」
「ずっとずっとすき、だった。一目見た時から、ずっとたいせつ、ずっと、愛してるよ……!」
この先も永遠に、と続ける言葉は伯陽の唇によって塞がれた。
くちづけ、抱きしめられたまま伯陽の楔がずずずっと奥まで入ってくる。奥を伯陽が細かく突いた。
細かい刺激に、朱昂の媚肉が悦び収縮する。伯陽の槍先が、朱昂の我慢の膜を突き破った。
「ぁくよ、――ぅうううああああああ……っ!」
「しゅ、こうっ!」
熱すぎて何が起こっているかが分からない。体の中の溶岩が一挙に光の束となって脳天まで貫く。すがりつかないと消し飛びそうで、必死に伯陽を抱きしめた。
耐えている内にふわんと意識が浮き上がり、ぽかぽかした光に胸の奥まで照らされた。
「伯陽、あったかい……」
つぶやく朱昂の額に伯陽が唇を落とした。荒い呼吸が落ち着いていく。ふたりの体は離れない。
「愛している」
「おれも、あいしてるよ」
伯陽の囁きに応えながら、朱昂は安らぎの光に身を任せていた。
太陽に抱かれたのだと、思った。
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