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◆ 第一章 黒の姫宮
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「清玖、蛍星は軍ではどんな様子なんだ?」
三の宮様からの御下問に対し、迅速な反応が出来なかった。戸惑っていたのだ。宮様が俺の名を呼び、俺に声を掛けるというこの異常事態に対応出来なかった。
「そ、……そうですね。……今こうして、三の宮様の前で振る舞われているように、軍でも振る舞っています」
「では、随分と清玖の手を焼いているんじゃないか?」
「はい、……仰る通りです」
「ちょっと、清玖。兄上にそんなこと言わないでよ! 手ぇ焼いたりなんてしてなくない!?」
「……今、手を焼いている」
「ひどい! 仮にそうだったとしても、兄上の前で言うことないじゃん! 清玖最低!」
どうやら、蛍星は三の宮様にどう思わるかをとても気にするようだった。軍の中で手のかかる子供として扱われているなどと、三の宮様には思われたくないのだろう。
必死に、宮様に対して色々な言い訳をしている。身振り手振りで説明をする蛍星は、どこか滑稽にも見える。そんな弟君の言葉を聞きながら、三の宮様が肩を震わせて笑っていた。
「兄上が……笑ってる」
蛍星は目を見開いて、茫然としていた。その驚く様子からして、こんな風に三の宮様が笑うのは稀有なのだと察する。目の端に涙を浮かべて笑う三の宮様は、今まで俺が見てきたあらゆる生き物よりも遥かに美しかった。
「兄上、楽しいですか? 僕と清玖がいるの、楽しい?」
「ああ、楽しいよ。本当に仲が良いんだね、二人は」
「そうなんです! 兄上も軍に入るのは如何ですか、たくさん友達出来ますよ!」
そんな発言を聞いてぎょっとしたのは俺だけではなかった。侍従も目に見えて驚き、三の宮様も虚を突かれたような面持ちだった。三の宮様のおもてに浮いていた驚愕が、少しずつ失せていく。
「……そうできたら、楽しいだろうね。でも……私の役目は、他にあるから」
どこか、諦念に満ちた双眸だった。僅かに沈んだ声。そんな顔をしないで欲しい。先ほどのように、笑っていてほしい。身の程もわきまえず、そんなことを心の底から願ってしまった。
「でも、そう言ってくれて嬉しかった。ありがとう、蛍星」
「……はい、兄上」
「清玖、これからも蛍星のことを宜しく頼む」
「御心のままに」
三の宮様から掛けられた声には、兄として弟を深く慈しむ想いが込められていた。天瀬王室は、天寵厚き一族。我々市井の者とは何もかもが異なる。男しか生まれぬ点、はっきりとした役目とその適性を持ってお生まれになる点。
色々な相違点があるがその中に、親子の情は限りなく薄く兄弟の情は何よりも厚い、というものがある。俺は今、その一端を垣間見たような気がした。
「もう行きなさい。宴があるのだろう? 遅れないようにね」
三の宮様が静かに動きだし、俺たちに背を向けて歩き出した。黒珠宮内の構造は全く分からないが、おそらく自室のような場所へ向かわれるのだろう。
「帰りはちゃんと正門から出るんだよ、蛍星」
「……はーい」
最後にちゃんと釘を刺して去られるあたり、本当に兄らしいと思う。侍従は去り際に蛍星に頭を下げ、蛍星は侍従に手を振って応えた。気づいた時には、極悪な近衛もいなくなっている。
「門からだってさ。行こ、清玖」
「お、俺もか!?」
「そりゃそうでしょ。清玖だけ庭から帰るなんてずるい」
「ずるいってことはないだろ……というか、俺が黒珠宮内に入って良いのか?」
「もう入ってるじゃん」
「それは……そうなんだが」
「いいよいいよ、誰も何も言わないって」
それは当然、七の宮と共に歩いていれば誰も何も言わないだろう。とりあえず、俺も今日は右軍の武官としての正装を纏っているので、不審者とは思われないだろう。けれど、一般人として、こんな身の程知らずな場所を歩きたくないというのが本音だ。
「あーあ、もうすぐ陽が沈み始めるね。宴の準備しないと、将軍に怒られちゃう。早く行こ、清玖」
「え、あ、あぁ……」
国のため、天瀬王家のため、武官になって戦うと幼い頃から心に決めていた。天瀬王家は俺たち軍人の心の支えであり、憧れの的であり、守るべき方々だ。そうずっと思って生きてきた。
直視するのも烏滸がましいと思うのだ。お声を拝聴するのだって分不相応だと感じる。だというのに俺は今、宮様の姿を見、声を聴き、あまつさえお住まいの中を歩いている。先程からもうずっと胃が痛い。
蛍星が黒珠宮の中を進むたび、昔はここでよく他の兄弟と遊んで物を壊して怒られただの、教師から逃げてここに隠れていただのと、思い出を語ってくれる。
だがそれらの一つとして、俺の頭には残らない。ただただ、今は早くここから出たいというその一心だった。どれくらい歩いただろうか。もうそろそろ出口も近いはず、と思い蛍星に従って進んだ曲がり角。
「……げっ」
曲がり角の先で蛍星が、醜い声を出す。それはまるで、蛙が潰れたときに吐き出す呻き声のようだった。蛍星がそんな声を出すことになった原因を知る。俺はもう、出せる悲鳴も無くした。
「げ、とはなんだ」
「おや、珍しい。蛍星がちゃんと正門から出ようとしているなんて」
今日は一体なんなんだ。何故俺の目の前には、一の宮様と二の宮様がいらっしゃるのだ。否、ここにお二方がいることは何もおかしいことではない。間違っているのは俺なのだ。それは分かる。ただ何故、今日は何かにつけてこんなにも間が悪いのだろう。
「……お久しぶりです、兄上様方」
「吉乃にはちょくちょく会いに行くのに、私たちの所には全然来てくれないから、寂しい思いをしていたんだよ。蛍星」
「全くだ。兄たちには均等に接するべきだろう。……ところで、蛍星。そいつは誰だ?」
今日で二度目の、俺へ向けられた誰何。慌てて佩いた剣を抜き、膝を折ると共に廊下の上に剣を置いた。そして片膝をついた状態で、利き手である右手を胸に当てる。この国にはいくつもの所作や儀礼があるが、今の姿勢は、武官が国王陛下に示す儀礼だった。
「清玖だよ、同じ軍にいる友達」
「あぁ、庚小隊の中将補ですか」
俺の所属をすっと口にしたのは、二の宮様だった。名前だけで俺の所属と階級を言い当てた。中将補など、右軍左軍合わせて四十人程度もいるというのに、そのうちの一人である俺の名などを覚えていらっしゃるとは。
階級ごとに言えば右軍左軍両軍に、大将が一人、大将補が三人、中将が十人、中将補が二十人、少将が三十人、少将補も同じく三十人いる。そしてその下には多くの下士官がいるのだ。
二の宮様は、その全てを把握しているのだろうか。そんなまさか、と自分の想像を打ち消した。二の宮様は卓越した頭脳をお持ちだと聞くが、あまりにも法外すぎる。
「お前、よく知ってるな」
「戦績を見ていて、なかなかに将来有望であると思えたもので」
「ほう。良かったな、清玖とやら。この柊弥に褒められるとは、なかなかだぞ」
論功行賞にて褒章を賜れるのは、特例的な例外を除けば中将以上と決まっている。中将以下の働きは、全て自分の上官のものになってしまうのだ。そのため、褒章を選定する王は、中将以上の戦績を見ていれば事足りるはず。けれど、この二の宮様はおそらく、その全てを詳らかに見ている。
その上で、全て見抜いているのだろう。中将に吸収されてしまう中将以下の者たちの働きも、誰がどんな戦いをし、誰を仕留め、どう勝利を掴んだか。戦の一部始終を把握しておられるのだ。
二の宮様には、実際に戦場を俯瞰で見据えていたかのように、全てが見えているのかもしれない。強烈な畏怖を抱く。やはり、宮様方は常人ではない。天の寵を受けている。
「兄上、そろそろ行かないと……宴の準備があって……」
「準備? そんなことを言って、ただ俺の前から逃げたいだけだろ」
「違いますって! 本当に! 準備をちゃんとしないと大将に怒られるんだって!」
「鴻凱が? ほう……じゃあ、鴻凱に伝えておけ。あとで俺も参加するとな。お前がどれだけ準備に貢献したかもその時確認してやろう」
「えー! なんでそんなことするんですか! ひどい!」
「ひどくない!」
体全体で不服を主張する蛍星を見て、一の宮は大きく笑い、二の宮は呆れながらも優しい目で二人を見ていた。この表情が、このお二方の本当の素顔なのだろう。どこまでも人を魅了する。だからこそ、この王朝は何百年と泰平であるのだろう。
「もう行こ、清玖!」
蛍星が俺の手を掴み走り出す。何とか俺は、二人の宮様に頭を下げ、全力で走る蛍星に合わせて走り出した。黒珠宮の外は、茜の空に包まれて、少しばかり肌寒さを感じるようになっていた。
「うわー! もう結構日が沈んでる! 本気でまずいよ、急ごう!」
宴の準備は主に、官職にない兵が行うが、それでも中将以下は皆総出で行うのが慣例だ。右軍の本拠地、右殿の食堂に食事と酒が並べられ、これでもかという程の人間が集まる。
食糧と酒は全て上位武官たちによる奢りになるのだが、ここで誰が一番多く奢ってやったかが男の沽券に関わるのだ。次々に運ばれてくるそれらを皆で手分けして運んだり、杯に注いだり。とにかく宴の準備は忙しい。
「よーし、今日はたくさん食べるぞー!」
跳ねるように駆けながら、そう叫んだ蛍星に俺は思わず笑みを漏らす。今日はなんだか蛍星のせいで大変な目に遭ったが、それでも俺は蛍星のことを好ましく思った。愛されやすいこの青年の横を並走し、俺も宴の会場を目指す。
三の宮様からの御下問に対し、迅速な反応が出来なかった。戸惑っていたのだ。宮様が俺の名を呼び、俺に声を掛けるというこの異常事態に対応出来なかった。
「そ、……そうですね。……今こうして、三の宮様の前で振る舞われているように、軍でも振る舞っています」
「では、随分と清玖の手を焼いているんじゃないか?」
「はい、……仰る通りです」
「ちょっと、清玖。兄上にそんなこと言わないでよ! 手ぇ焼いたりなんてしてなくない!?」
「……今、手を焼いている」
「ひどい! 仮にそうだったとしても、兄上の前で言うことないじゃん! 清玖最低!」
どうやら、蛍星は三の宮様にどう思わるかをとても気にするようだった。軍の中で手のかかる子供として扱われているなどと、三の宮様には思われたくないのだろう。
必死に、宮様に対して色々な言い訳をしている。身振り手振りで説明をする蛍星は、どこか滑稽にも見える。そんな弟君の言葉を聞きながら、三の宮様が肩を震わせて笑っていた。
「兄上が……笑ってる」
蛍星は目を見開いて、茫然としていた。その驚く様子からして、こんな風に三の宮様が笑うのは稀有なのだと察する。目の端に涙を浮かべて笑う三の宮様は、今まで俺が見てきたあらゆる生き物よりも遥かに美しかった。
「兄上、楽しいですか? 僕と清玖がいるの、楽しい?」
「ああ、楽しいよ。本当に仲が良いんだね、二人は」
「そうなんです! 兄上も軍に入るのは如何ですか、たくさん友達出来ますよ!」
そんな発言を聞いてぎょっとしたのは俺だけではなかった。侍従も目に見えて驚き、三の宮様も虚を突かれたような面持ちだった。三の宮様のおもてに浮いていた驚愕が、少しずつ失せていく。
「……そうできたら、楽しいだろうね。でも……私の役目は、他にあるから」
どこか、諦念に満ちた双眸だった。僅かに沈んだ声。そんな顔をしないで欲しい。先ほどのように、笑っていてほしい。身の程もわきまえず、そんなことを心の底から願ってしまった。
「でも、そう言ってくれて嬉しかった。ありがとう、蛍星」
「……はい、兄上」
「清玖、これからも蛍星のことを宜しく頼む」
「御心のままに」
三の宮様から掛けられた声には、兄として弟を深く慈しむ想いが込められていた。天瀬王室は、天寵厚き一族。我々市井の者とは何もかもが異なる。男しか生まれぬ点、はっきりとした役目とその適性を持ってお生まれになる点。
色々な相違点があるがその中に、親子の情は限りなく薄く兄弟の情は何よりも厚い、というものがある。俺は今、その一端を垣間見たような気がした。
「もう行きなさい。宴があるのだろう? 遅れないようにね」
三の宮様が静かに動きだし、俺たちに背を向けて歩き出した。黒珠宮内の構造は全く分からないが、おそらく自室のような場所へ向かわれるのだろう。
「帰りはちゃんと正門から出るんだよ、蛍星」
「……はーい」
最後にちゃんと釘を刺して去られるあたり、本当に兄らしいと思う。侍従は去り際に蛍星に頭を下げ、蛍星は侍従に手を振って応えた。気づいた時には、極悪な近衛もいなくなっている。
「門からだってさ。行こ、清玖」
「お、俺もか!?」
「そりゃそうでしょ。清玖だけ庭から帰るなんてずるい」
「ずるいってことはないだろ……というか、俺が黒珠宮内に入って良いのか?」
「もう入ってるじゃん」
「それは……そうなんだが」
「いいよいいよ、誰も何も言わないって」
それは当然、七の宮と共に歩いていれば誰も何も言わないだろう。とりあえず、俺も今日は右軍の武官としての正装を纏っているので、不審者とは思われないだろう。けれど、一般人として、こんな身の程知らずな場所を歩きたくないというのが本音だ。
「あーあ、もうすぐ陽が沈み始めるね。宴の準備しないと、将軍に怒られちゃう。早く行こ、清玖」
「え、あ、あぁ……」
国のため、天瀬王家のため、武官になって戦うと幼い頃から心に決めていた。天瀬王家は俺たち軍人の心の支えであり、憧れの的であり、守るべき方々だ。そうずっと思って生きてきた。
直視するのも烏滸がましいと思うのだ。お声を拝聴するのだって分不相応だと感じる。だというのに俺は今、宮様の姿を見、声を聴き、あまつさえお住まいの中を歩いている。先程からもうずっと胃が痛い。
蛍星が黒珠宮の中を進むたび、昔はここでよく他の兄弟と遊んで物を壊して怒られただの、教師から逃げてここに隠れていただのと、思い出を語ってくれる。
だがそれらの一つとして、俺の頭には残らない。ただただ、今は早くここから出たいというその一心だった。どれくらい歩いただろうか。もうそろそろ出口も近いはず、と思い蛍星に従って進んだ曲がり角。
「……げっ」
曲がり角の先で蛍星が、醜い声を出す。それはまるで、蛙が潰れたときに吐き出す呻き声のようだった。蛍星がそんな声を出すことになった原因を知る。俺はもう、出せる悲鳴も無くした。
「げ、とはなんだ」
「おや、珍しい。蛍星がちゃんと正門から出ようとしているなんて」
今日は一体なんなんだ。何故俺の目の前には、一の宮様と二の宮様がいらっしゃるのだ。否、ここにお二方がいることは何もおかしいことではない。間違っているのは俺なのだ。それは分かる。ただ何故、今日は何かにつけてこんなにも間が悪いのだろう。
「……お久しぶりです、兄上様方」
「吉乃にはちょくちょく会いに行くのに、私たちの所には全然来てくれないから、寂しい思いをしていたんだよ。蛍星」
「全くだ。兄たちには均等に接するべきだろう。……ところで、蛍星。そいつは誰だ?」
今日で二度目の、俺へ向けられた誰何。慌てて佩いた剣を抜き、膝を折ると共に廊下の上に剣を置いた。そして片膝をついた状態で、利き手である右手を胸に当てる。この国にはいくつもの所作や儀礼があるが、今の姿勢は、武官が国王陛下に示す儀礼だった。
「清玖だよ、同じ軍にいる友達」
「あぁ、庚小隊の中将補ですか」
俺の所属をすっと口にしたのは、二の宮様だった。名前だけで俺の所属と階級を言い当てた。中将補など、右軍左軍合わせて四十人程度もいるというのに、そのうちの一人である俺の名などを覚えていらっしゃるとは。
階級ごとに言えば右軍左軍両軍に、大将が一人、大将補が三人、中将が十人、中将補が二十人、少将が三十人、少将補も同じく三十人いる。そしてその下には多くの下士官がいるのだ。
二の宮様は、その全てを把握しているのだろうか。そんなまさか、と自分の想像を打ち消した。二の宮様は卓越した頭脳をお持ちだと聞くが、あまりにも法外すぎる。
「お前、よく知ってるな」
「戦績を見ていて、なかなかに将来有望であると思えたもので」
「ほう。良かったな、清玖とやら。この柊弥に褒められるとは、なかなかだぞ」
論功行賞にて褒章を賜れるのは、特例的な例外を除けば中将以上と決まっている。中将以下の働きは、全て自分の上官のものになってしまうのだ。そのため、褒章を選定する王は、中将以上の戦績を見ていれば事足りるはず。けれど、この二の宮様はおそらく、その全てを詳らかに見ている。
その上で、全て見抜いているのだろう。中将に吸収されてしまう中将以下の者たちの働きも、誰がどんな戦いをし、誰を仕留め、どう勝利を掴んだか。戦の一部始終を把握しておられるのだ。
二の宮様には、実際に戦場を俯瞰で見据えていたかのように、全てが見えているのかもしれない。強烈な畏怖を抱く。やはり、宮様方は常人ではない。天の寵を受けている。
「兄上、そろそろ行かないと……宴の準備があって……」
「準備? そんなことを言って、ただ俺の前から逃げたいだけだろ」
「違いますって! 本当に! 準備をちゃんとしないと大将に怒られるんだって!」
「鴻凱が? ほう……じゃあ、鴻凱に伝えておけ。あとで俺も参加するとな。お前がどれだけ準備に貢献したかもその時確認してやろう」
「えー! なんでそんなことするんですか! ひどい!」
「ひどくない!」
体全体で不服を主張する蛍星を見て、一の宮は大きく笑い、二の宮は呆れながらも優しい目で二人を見ていた。この表情が、このお二方の本当の素顔なのだろう。どこまでも人を魅了する。だからこそ、この王朝は何百年と泰平であるのだろう。
「もう行こ、清玖!」
蛍星が俺の手を掴み走り出す。何とか俺は、二人の宮様に頭を下げ、全力で走る蛍星に合わせて走り出した。黒珠宮の外は、茜の空に包まれて、少しばかり肌寒さを感じるようになっていた。
「うわー! もう結構日が沈んでる! 本気でまずいよ、急ごう!」
宴の準備は主に、官職にない兵が行うが、それでも中将以下は皆総出で行うのが慣例だ。右軍の本拠地、右殿の食堂に食事と酒が並べられ、これでもかという程の人間が集まる。
食糧と酒は全て上位武官たちによる奢りになるのだが、ここで誰が一番多く奢ってやったかが男の沽券に関わるのだ。次々に運ばれてくるそれらを皆で手分けして運んだり、杯に注いだり。とにかく宴の準備は忙しい。
「よーし、今日はたくさん食べるぞー!」
跳ねるように駆けながら、そう叫んだ蛍星に俺は思わず笑みを漏らす。今日はなんだか蛍星のせいで大変な目に遭ったが、それでも俺は蛍星のことを好ましく思った。愛されやすいこの青年の横を並走し、俺も宴の会場を目指す。
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