下賜される王子

シオ

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◆ 第一章 黒の姫宮

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 殿下の上に乗り、その首筋に唇を寄せる。黄に近い薄茶の髪が、わずかに首筋にかかっている。そこから、どんどん下へと下がっていく。唇で触れ、舌先で撫でながら。

「くすぐったいね」

 小さく笑いながらそう言った殿下の声には大して反応せず、私は私の仕事をする。舌先でユーリイ殿下の体を撫でていく。私の体も共に下がり、殿下の足と足の間に膝立ちするような形になっていた。

 臍の窪みに舌を差し入れて、そこから下へ。茶色の下生えはふわふわとしていて、毛艶が良い。それに包まれたものを、両手で掴んで顔を寄せた。そんな私の痴態を、殿下が眺めている。

「凄まじいまでに妖艶だ」
「……愉しんで頂けているのであれば、幸いです」
「お姫様はまだ愉しくないようだね」
「私のことはお気になさらずに」

 竿の側面に舌を這わせて舐めあげる。びくり、と殿下の腰が震えた。それに気付きながら、何度もそれを繰り返し、ものの先端を舌先で押し潰すように刺激する。垂れてきた己の髪を耳にかけ、私の唾液で濡れたそれを必死になって口に入れた。

「ああっ……、なんてことだ、もうイきそうだ」

 それならそれで構わない。口が封じられているため、言葉を返せなかったが、視線でそう訴える。すると、それが伝わったのか、殿下は小さな笑みを口元に浮かべて、私の頭に手を置いた。

「……っ!」

 頭を固定された状態で、殿下が腰を振った。喉の奥まで突き刺され、一気に苦しくなる。えづきそうになるのをぐっとこらえて、口内で必死に殿下のものをもてなした。

 そして、殿下の体が震えたと思った直後に、私の口の中で精が吐き出される。ずる、と引き抜かれたものと合わせて、精が口から零れていきそうになったが、それを殿下は許さなかった。

「飲んで」

 殿下の大きな手が私の口を塞ぎ、吐き出すことを許さない。もとより、そのつもりだ、と私は好戦的な目で見つめ返してしまう。ごくり、と嚥下して殿下は満足そうに微笑んだ。

「たくさん出してしまって、恥ずかしいなぁ」
「随分と早かったですね。久しかったのですか?」
「煽るような言葉がまた、可愛いね」

 人によっては、怒らせて仕方ないようなことを言っている。それなのに、殿下は楽しそうに笑うだけで意に介していないようだった。

 とりあえず、これでもてなしの第一段階が終わった。さて次は、と私は香油の入った瓶を取り出し、その中に指を突っ込んで、たっぷりと油をつける。それを今度は己の後孔に差し入れて、解した。

 頭の中で段取りを考える。次はこうして、その後はああして。そう考えることによって、これが作業であると自分自身に思い込ませたかったのだ。

 後ろがすでに濡れていることには気付きたくない。香油など無くても、すでに濡れているなど。解すまでもなく、解れているなど。そんな自分を認めたくなかった。

 ついさっき出会ったばかりの男の陽物を咥えただけで、後ろが濡れて解れてしまうような、売女以下の淫売に成り下がったなどとは、思いたくなかった。

「……っ、ぁ、……んっ」
「自分の指でも気持ち良いの?」
「……なんだって、同じ、ですよ……、私は、誰にだってこうなってしまう」
「凄いね、姫宮っていうのは。それは先天的な才能だよ」

 鼻で笑ってしまいそうになった。これが才能だなんて。嬉しくも、誇らしくも無い。どこまでも自尊心を傷つけるだけのこの体が才能だなんて。冗談だったとしても、たちが悪い。

 準備の整っている孔から指を引き抜き、横たわる殿下の上に跨る。殿下のものは再び硬さを増していた。ものを掴んで、私の中に入っていくよう手で固定する。そして、孔にぴたりとつけた。温かい。自分の指では感じることの出来ない熱が、そこには確かにあった。

 ぐっと腰を下ろしていく。私の肉を押しのけて、質量のあるものが中へと入ってきた。苦しい。苦しいけれど、それでも気持ちが良い。中に熱を入れると、体が勝手に喜んでしまう。

 そのまま、私は殿下の上で腰の上げ下げを繰り返す。突き刺されるたびに喉が反って、悲鳴が漏れた。

「あっ、あんっ、やっ、あ……あ……っ、あ、んっ……!」
「……吉乃、……ぅ、っ、は……っ」

 擦れるたびに腰が疼く。自分で自分の体を動かしているだけなのに、感じてしまって仕方がない。いつの間にか、私のものも立ち上がって、だらだらとよだれを垂らしていた。

「吉乃、動くよ」

 切羽詰まったような声で殿下が囁いて、殿下の両手が私の腰を押さえる。そして、殿下は己の腰を激しく振った。自分で飛び跳ねていた時とは比較にならないほどの振動。そして、擦れる回数。頭の中が焼ききれそうなほどに強い快感だった。

 一際大きな悲鳴が私の口から溢れて、思わずその口を手で押さえてしまう。けれど、そんな手に意味はなかった。生理的な涙がこぼれる。擦れて痛いのに、突かれすぎて苦しいのに。それら全てが快楽へ変わっていく。

「あぁ……っ! ま、まって……! やっ、やだ! こわいっ、やだぁ!」

 ぽろぽろと目から涙が零れてくる。悦すぎて怖い。このまま、頭がおかしくなってしまうのではないかと、そんなことを案じるほどの強烈な快感だった。何度も何度も腰が震えているのに、私の先端からは何も出てこなかった。おかしい。絶対にもう何度も達っているはすなのに。

「今度は……っ、こっちに、出すね……、……っ!」

 今まで与えられていた熱よりも、さらに熱いものが私の中に注ぎ込まれる。それに反応して、私もついに精を吐き出す。勢いはなかったが、どろどろと垂れて、殿下の腹部を僅かに汚した。

 はぁはぁ、と大きく呼吸を繰り返す。頭がぼうっとして、何も分からなくなっていた。これから何をすればいい。これから、何をしようとしていたのだったか。

「吉乃、大丈夫。怖くない。だから、もっと愛して良い?」

 男の手が私の頰を撫でる。涙を拭っているのだ。私はもう、訳も分からないまま頷くことしか出来ない。そして、大きな手が私の体を持ち上げて、寝台の上に降ろされた。そのままの流れで、仰向けで寝かされ、大きく足を開かれる。

 男は私の足の間に入って、太ももを抱えながら私の腰を浮かせる。指で後ろの孔をゆるゆると撫でる。後ろがひくつくのが自分でも分かった。

「吉乃はここに入れられるの、好き?」
「入れる……?」
「そう。こういう太いもの、入れるの、好き?」
「す……、き」
「大好き?」
「……大好き」
「吉乃は可愛いね」

 男の手が私の頰を撫でる。この手は、誰の手だっただろうか。私はよく知っているはずなのに、思い出せない。この手が大好きだった。この手の持ち主に、愛されるのが大好きだった。

「じゃあ、吉乃。今からここに入れるね? いい?」
「……うん、いいよ」
「ありがとう。たくさん気持ちよくさせてあげるからね」
「……うん、……あっ、……ああ、ぁ……っ! お、おく……っ、もっと…… !」

 愛する太さのものが、ゆっくりと私の中に入ってきて、穏やかな挿入を繰り返す。でも、そこじゃない。突いて欲しいのは、そこじゃない。よく知っているはずなのに、どうして焦らすの。いつもみたいに、真っ先にそこを突いて私を喜ばせて。

「奥? 奥がいいの? ここ?」
「ち、がうっ! もうちょっと、奥の……!」
「ここかな?」
「あっ! そこも……いいけど、でも、でも、ちがう……っ!!」

 思わず、自分の指を口の中に入れたり、噛んだりしてしまう。焦らされすぎて体中がざわついているのだ。奥を擦られて気持ちい。抜き差しされることによって与えられる圧迫が、私に快感をもたらす。でも、そこじゃない。もうちょっと右で、奥で、上の方で。

「もう、おねがい……っ! いじわるしないで、しん……っ!」

 この時の私には分かっていなかったのだ。その瞬間、私を抱いている彼が訝しげな顔をしたことも、その彼が一瞬動きを止めたことも。ただ、欲しかった場所に欲しかったものを与えられて、体が弓なりにしなる。

「あっ、あっ、ああ……っ!」
「吉乃、気持ち良い?」
「きもちっ、きもちいっ! しん、そこっ! もっと…、もっと!」

 私のものからは、壊れたように透明の液体が溢れてくる。欲しかったものを得て、体が心底喜んでいるのだ。ふいに、彼の動きが止まって、私の体からものが引き抜かれる。

 随分と彼も私の中に出していたようで、どろどろと流れ出てくる感覚があった。そして、体が離れた私たち。彼の手が私の体を抱き起こして、口付けをくれた。

 舌と舌を触れ合わせて、お互いの舌を根こそぎ掴むような勢いで貪りあった。唾液が垂れていくが、そんなことを今更気にする余裕はない。何度も角度を変え、口内を犯し、歯列を撫で合う。

 そうしながら、互いのものを扱き合い、再びそれを逞しくさせることに躍起になった。まだまだ愛し合える。彼となら、どれだけでも抱き合えた。

「ぁ……ふ、っ……しん、もっと……しん、もっとほしい」
「吉乃は我儘だなぁ」

 そう言いながらも、彼は私の言葉に応じてくれた。今度はうつ伏せに横になり、臀部だけ突き上げる。この姿勢はとても恥ずかしいが、それでも彼が望むなら私はどんな体位だって出来た。

 立ち上がった彼が私の後ろに立ち、腰を摑んだ状態でぐぐ、と彼の陽物を突っ込む。慣らす必要がない程に、私はの後ろはだらしないことになっていた。

「凄いね、女の穴よりも緩いよ」
「女の人よりも、良い?」
「当然。吉乃の方が断然素晴らしいよ。淫らで、綺麗で。最高だ」
「……嬉しい、しん、嬉しい」

 そんなことを今まで言ってくれたことが無かったから、とても嬉しく感じた。嬉しさを抱きながら、彼に突き刺される。この体位は、一番ものが奥まで届く。今までの体勢では届かなかった場所まで触れられ、喉が痛いほどに悲鳴が出て行く。

「本当にっ……最高だな、想像してた以上だっ!」
「あっ、あ…ぁ、……あぁっ!!」
「こら、吉乃。腰が下がってるよ」

 直後、ぺしん、と尻たぶを叩かれた。その衝撃にびっくりしてしまう。痛くはなかったが、尻がじんじんとする。それなのに、何故だろうか。酷く背徳的な気持ちになって、それがまた私の体を熱くする。

「ご、ごめんなさい……っ!」
「そうそう、ちゃんと腰は上げていてね。じゃないと奥まで愛してあげられないからね」
「はい……っ、やぁっ、ん……っ! しん、好き、好き……っ!」

 全身が熱かった。涙を流す目も熱い。頰も熱い。胸も熱い。叫ぶ喉も熱い。全身が熱くて、苦しかった。汗なのか、精液なのかもよくわからない。私の体はどろどろに汚れていた。

 彼に怒られたけれど、やはり駄目だった。私はもう私の足で体を支えていられない。崩れ落ちる直後、私の体を彼の手が支えてくれた。そして再び寝台の上にそっと置かれた。仰向けで横になる。全身が疲れ果てていた。もう眠ってしまいたい。私の意識は、すでに夢への旅路を始めていた。

「吉乃、眠い?」
「……うん、ねむって、いい?」
「もうちょっと頑張って。もう少し一緒に楽しもう?」

 返事も出来ないほどに、意識が消えかかっていた。それでも、彼はお構いなしに私の乳首を舐め始める。舌先で転がして、時折甘噛して。もう片方の乳首は、彼の手がぎゅうぎゅうと摘んでいる。

「姫宮の乳首って、なんだか女の人みたいだね。大きいし……なんていうか、乳房のない女の人の胸みたい」

 ひとりでそんなことを呟いて、私の胸を観察していく。好きなだけそうしていて良いから、私はもう眠らせて欲しい。感じすぎて、疲れてしまった。睡魔が私に子守唄を歌っている。

「……すごい、硬くなった。こりこりしてるね」
「しん……もう眠いよ……」
「じゃあ寝てても良いよ」

 眠りたいのはやまやまだが、こんなことをされていては、なかなか熟睡出来ない。そう思いつつも、私の頭は泥のように重たく、どんどんと意識が遠のいていっていた。

 彼は凝り固まった私の胸の先端に、彼のものを擦り付けて、私の胸で精を吐き出していた。勢いよくそれ出されたそれは、私の胸と首とを同時に穢すが、殆ど眠っていた私は無反応のままに過ごす。

 それからまた、私の胸の間に、ものを擦り付けて楽しんでいるようだった。女性のように谷間もない胸に、そんなことをして何が楽しいのかは分からないが、彼がそれで満足なら私は構わない。

「……しん」

 そうして、私は意識を完全に手放す。とても、穏やかな眠りだった。自分が何をしでかしたのか、全く分かっていないからこそ、そんな穏やかに眠ることが出来たのだ。

 私が眠りに落ちたのを見届けて、彼が微笑む。オルドローズの第三王子は、愉快そうなおもてを作って、榛色の双眸が私を見下ろしていた。

「面白いなぁ、吉乃は」


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