本当の自由は外なのか中なのか

幻中六花

文字の大きさ
4 / 11

オレの演技は通じるか

しおりを挟む
「あ、店長、おはようございます! 今日もみんな元気ですよ」
「いいねー! 一頭くらいポンと売れないかねぇ。シローも大きくなってきたし」

 ──なんだよ。悪かったな、デカくなるまで売れ残っちまって。

 もうすぐえっちゃんと店長が店番を交代する。
 よし、『オレの耳掃除しろ』作戦、決行の時がきたぞ!

 オレはえっちゃんがいなくなる前に耳が痒いフリをした。耳を前脚で擦ったり、後ろ足でカリカリ掻いたりした。

「ん? シローどしたの? 耳痒いの?」
 さすがえっちゃん。オレの仕草をよく見てる。店長なんか全然気づかねぇじゃん。
「あ、いいよ、耳掃除なら俺やっとくから。えっちゃんはお昼休憩行っといで」
「わかりました。じゃ、よろしくお願いします」
「ごゆっくり~」

 オレはずっと耳が痒いフリを続けた。

 ──バイバイ、えっちゃん。

「シロー、どれ、耳見せてごらん」
 店長はまず、オリの上からオレの耳を触って中を見る。
「んー? 汚くなさそうだけどなぁ」

 そりゃそうだよ。耳掃除だってこの間えっちゃんに丁寧にやってもらったばっかりだもん。いいから早くオレを外に出せ!

「どれ、掃除するか」
 店長は耳掃除に使う道具を用意し始めた。
 オレは身体が大きいし、もう生まれて半年経ってるから、爪切りや耳掃除で暴れたりしない。それを知っていてみんな、膝の上で耳掃除をしてくれるんだ。

 ショーケースに入れられているちびっ子達は、昼寝をしているヤツもいれば、おもちゃでひとり遊びしているヤツもいる時間。
 お客さんの目はショーケースに向かい、耳掃除をされているオレの方を見ている人は誰もいない。

「どれ、よっこいしょっと……! シローも重くなってきたな。早くお迎え来るといいなぁ。……あよっこいせ」

 店長はオレを抱き上げる時と、オレを抱えて椅子に座る時に、2回『よっこいしょ』と言った。
 店を切り盛りしているだけあって結構なおじさんだ。オレが走れば追いつけるわけがない。

 オレは大人しく耳掃除をしてもらった。
「やっぱり綺麗だけどなぁ?」
 そりゃそうだ。
 店長が耳掃除を終えて気を緩めた瞬間を、オレは神経を研ぎ澄まして待った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

おとうさんのオムライス

こぐまじゅんこ
児童書・童話
きょうは、にちようび。 おとうさんのしごとも、やすみです。

エリちゃんの翼

恋下うらら
児童書・童話
高校生女子、杉田エリ。周りの女子はたくさん背中に翼がはえた人がいるのに!! なぜ?私だけ翼がない❢ どうして…❢

緑色の友達

石河 翠
児童書・童話
むかしむかしあるところに、大きな森に囲まれた小さな村がありました。そこに住む女の子ララは、祭りの前日に不思議な男の子に出会います。ところが男の子にはある秘密があったのです……。 こちらは小説家になろうにも投稿しております。 表紙は、貴様 二太郎様に描いて頂きました。

かぐや

山碕田鶴
児童書・童話
山あいの小さな村に住む老夫婦の坂木さん。タケノコ掘りに行った竹林で、光り輝く筒に入った赤ちゃんを拾いました。 現代版「竹取物語」です。 (表紙写真/山碕田鶴)

マジカル・ミッション

碧月あめり
児童書・童話
 小学五年生の涼葉は千年以上も昔からの魔女の血を引く時風家の子孫。現代に万能な魔法を使える者はいないが、その名残で、時風の家に生まれた子どもたちはみんな十一歳になると必ず不思議な能力がひとつ宿る。 どんな能力が宿るかは人によってさまざまで、十一歳になってみなければわからない。 十一歳になった涼葉に宿った能力は、誰かが《落としたもの》の記憶が映像になって見えるというもの。 その能力で、涼葉はメガネで顔を隠した陰キャな転校生・花宮翼が不審な行動をするのを見てしまう。怪しく思った涼葉は、動物に関する能力を持った兄の櫂斗、近くにいるケガ人を察知できるいとこの美空、ウソを見抜くことができるいとこの天とともに花宮を探ることになる。

まぼろしのミッドナイトスクール

木野もくば
児童書・童話
深夜0時ちょうどに突然あらわれる不思議な学校。そこには、不思議な先生と生徒たちがいました。飼い猫との最後に後悔がある青年……。深い森の中で道に迷う少女……。人間に恋をした水の神さま……。それぞれの道に迷い、そして誰かと誰かの想いがつながったとき、暗闇の空に光る星くずの方から学校のチャイムが鳴り響いてくるのでした。

にたものどうし

穴木 好生
児童書・童話
イモリとヤモリのものがたり

処理中です...