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ある職人さんとの繋がり

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 その後も結局世の中は自由に遊びに出歩けない状態が続いていたため、「とりあえず安いものでいいや」と大手サイトで夫婦茶碗を購入して使っていた。

 ──でも、違う。全然、違う。

 手に持つ感じといい、口に当たる感じといい、重さといい、全てにおいて『失格』だった。

 使いにくい、使いにくいと思いながら使っていたが、私が痺れを切らし、割れた茶碗を購入したお店のサイトを探した。
 今となっては懐かしの個人ホームページのような造りのサイトは、派手に原色が使われていて少々見にくくはあったが、あのお店の器を通信販売で買うことができるようだった。

「もっと早く買えばよかった」

 私は早速、サイトの中に並ぶ二次元の器からご飯用の茶碗をカートに入れた。
 ペアとしては売っていなかったので、サイズ違いでカートに入れようとしたが、なぜかカートに1つしか入らない。新しく入れた器に上書きされてしまうようだ。

 私は、あのお店なら、備考欄に書けば大きさ違いの茶碗を売ってくれそうな気がした。

 備考欄にカートの不具合の件と一緒に、夫婦茶碗として大きさ違いで2つ欲しい旨と、少し前に店舗で買った者です、ということを書いて送信する。

 夜遅い時間だったのにもかかわらず、器を作っている職人さんご本人から返信がきた。

 カートは設定の不具合だったらしく、
「教えていただきありがとうございます!」
と感謝までされた。

 私の要望通り、カートの中身を夫婦茶碗に変更してくれて合計金額を教えてくれる。
 私がカード払いを希望したからか、手間をとらせてしまったように感じたが、そちらも快く対応してくれ、後日、温かみのある優しい茶碗が2つ、届いた。

 しかも、
「いつもありがとうございます。感謝の気持ちとして爪楊枝立てを入れさせていただきましたのでご笑納ください」
という綺麗な字の直筆手紙と、爪楊枝立てが入っていた。

 我が家では爪楊枝立てを使っていないけれど、使わずに持っているのがもったいないくらい愛らしい爪楊枝立て。

 とても嬉しい気持ちになったので、感謝のメールを送った。
 メールには、以前購入した角皿に盛り付けた料理の写真も添付した。

『幻中様のような方の元へ行くことができて、器達も喜んでいることでしょう』なんて洒落た返信が返ってきた。

 機会があれば、使う食器全てをこの職人さんが作ったものに変更したいくらい、私はこのお店との繋がりを強く感じずにはいられない。
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