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第十一話 弔問

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 妖精の森のかなり手前で目立たない場所にオレは車を停めて、荷台に乗り移った。
 サトーは軍のトップだ。アメリの言葉通り、王国側にいる時にヤツを狙うチャンスはほとんど無いだろう。森に来るまで待つしかない。

『トーリ君、私だ。聞こえるかね?』

 ああ、そうか。今日は本来ならオレが城にミサイルを撃ち込む日だった。

「ああ、アンタか? 何か用か?」
『ん? 随分と余裕たっぷりじゃないか。まさかお嬢ちゃんたちのことを――』
「うるせえよ」

 オレは無線機を投げ捨て、ついでに発砲して損壊した。
 あの調子だとまだカワイイ部下のマーカスが殺られた事に気付いていなかったようだ。まあアイツも忙しいだろうから仕方ないかもしれないな。

「さて……」

 オレはある大事なものを抱えて妖精の森に入った。カッコはシャツ一枚でまるで散歩スタイル。アメリと会った場所まで歩き、さらに奥にあるあのたき火をしていた集落まで行った。

「すみません」

 一軒の家の中を覗きながらあいさつした。
「はい」
 美しい少女……いや妖精が出てきた。

「オレ、トーリと言います。謝らなくてはいけないことがあります」
 オレは最悪、殺されることも覚悟の上だった。だが、これをせずにサトーと対峙するわけにはいかない。オレは両手に抱えたアメリの亡き骸をその美しい妖精にそっと渡した。
「私はシリと言います。アメリは私の姉です」
「え!?」
 驚くオレに全く意に介する様子もなく、シリはやさし気な眼差しを瞑目した姉に向けた。

「私たちは常に心の通信ができます。姉は貴方に敬意と感謝の念を持って死にました。ですからお気になさらなくて良いのです」
「し、しかし……」
「それよりトーリさんはこれから大事なことをしなくてはならないのでしょう? 私たちはお邪魔にならないようここから離れます。どうか思いのままに……」
「……」

 彼女がそう言うと他の家からも妖精たちがぞろぞろ出てきてオレに皆会釈してから森の奥へと消えた。
 きちんとしたお悔やみも言えなかったのは残念だが、これでサトーに引導を渡すことが出来る。
 オレが切り替えて再び森の外へと足を踏み出した時――

「トーリさん」

 アメリの妹、シリから再び声を掛けられた。アメリの姿は既になく、他の妖精に頼んだのだろうか。

「もう一つ、お話しておかなくてはならないことがあります」
「え?」
 それは戦時下ではとてもオープンできない内容だった。
「……ということです」
「わかった。じゃあ、色々とありがとう」
「トーリさん、これを」
「ん?」

 シリはオレにイチョウと思われる葉を一枚、オレに手渡した。

「これは?」
「貴方を守ってくれます。身に着けておいてください」
「……わかった」
「それでは失礼致します」


 オレは森の外に出た。そして停めてあるトラックに再び乗り込み、その時を待った。
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