9 / 92
路上の天使
路上の天使⑨
しおりを挟む
「うぜぇ。まぁ、いいや。それでさ……」
人によっては反感を買いそうな律仁の冗談じみた戯れを軽く受け流してくれる廉介との会話の居心地さを感じながらも、彼の話を聞くと彼の好きな邦楽ロックバンドの新曲が発売されたのでCDショップに付き合ってほしいという誘いだった。
吉澤との約束をばっくれる理由が欲しかった律仁はあっさりと廉介の誘いに乗っかる。
歌うことに反発心を感じていても、音楽が完全に嫌いなわけではない。聴くのは好きだし、歩きながら廉介と好きなロックバンドや最近の流行りの曲の話をするのは楽しかった。
校門前まであと数メートルまで到着したとき、見覚えのなる黒いアルファードとスーツの男の姿を目にして足を止める。律仁の危険レーダーが感知したのか気づかれていないのがこれ幸いで、咄嗟に体格のいい廉介の後ろに身を隠す。
あれは間違えなく吉澤だ。レッスンまでまだ2時間弱はあるしアトリエに行かなければアイツに出会うことはないと踏んでいただけに見誤った。
まさか学校まで迎えに来ているとは……。
「あー廉介、裏門からでねぇ?」
「なんで?」
「いいからっ、門にやべぇのいっから」
このまま直進すれば、吉澤にレッスンへ強制連行されるのが目に見えている。
それだけは絶対に避けねばならなかった。
律仁は、状況を呑み込めていない廉介の背中を裏門の方角へと押しながら来た道を戻る。吉澤に気づかれないうちに退散しようと抜き足差し足で校門に背を向けてきた道を戻ろうとしたところで「おい、律仁」と呼ばれた気がして廉介を連れて全速力で走った。
裏門まで到達し、門柵を超えたと同時に車で追ってきたのか車道にアルファードが走行してくるのが見える。
相手は車とはいえ、このまま走り続けて速さで追いついたとしても方向の融通が利かないことは猿でもわかる。大きい道路に出て建物が入り組んだ道に入ってしまえばこっちのもんだった。
徐行しながら車の窓から顔を出し「律仁、またサボる気じゃないだろうな?」と大声で叫んでくる吉澤に時折、後ろを向いて走りながら車の様子を伺う。
日頃は走り慣れている廉介は訳も分からず一緒に走っているにもかかわらず一切値を上げた様子を見せないことに感心しながらも、吉澤との鬼ごっこを半ば楽しんでいた。
「俺にも用事があるんだよ、じゃーな。廉介早く行くぞ」
大きい道路に出たところで呑気に吉澤に手を振り別れを告げると、並走している廉介の肩を叩き角を曲がり、車では入れないような入り組んだ道へと入った。
人によっては反感を買いそうな律仁の冗談じみた戯れを軽く受け流してくれる廉介との会話の居心地さを感じながらも、彼の話を聞くと彼の好きな邦楽ロックバンドの新曲が発売されたのでCDショップに付き合ってほしいという誘いだった。
吉澤との約束をばっくれる理由が欲しかった律仁はあっさりと廉介の誘いに乗っかる。
歌うことに反発心を感じていても、音楽が完全に嫌いなわけではない。聴くのは好きだし、歩きながら廉介と好きなロックバンドや最近の流行りの曲の話をするのは楽しかった。
校門前まであと数メートルまで到着したとき、見覚えのなる黒いアルファードとスーツの男の姿を目にして足を止める。律仁の危険レーダーが感知したのか気づかれていないのがこれ幸いで、咄嗟に体格のいい廉介の後ろに身を隠す。
あれは間違えなく吉澤だ。レッスンまでまだ2時間弱はあるしアトリエに行かなければアイツに出会うことはないと踏んでいただけに見誤った。
まさか学校まで迎えに来ているとは……。
「あー廉介、裏門からでねぇ?」
「なんで?」
「いいからっ、門にやべぇのいっから」
このまま直進すれば、吉澤にレッスンへ強制連行されるのが目に見えている。
それだけは絶対に避けねばならなかった。
律仁は、状況を呑み込めていない廉介の背中を裏門の方角へと押しながら来た道を戻る。吉澤に気づかれないうちに退散しようと抜き足差し足で校門に背を向けてきた道を戻ろうとしたところで「おい、律仁」と呼ばれた気がして廉介を連れて全速力で走った。
裏門まで到達し、門柵を超えたと同時に車で追ってきたのか車道にアルファードが走行してくるのが見える。
相手は車とはいえ、このまま走り続けて速さで追いついたとしても方向の融通が利かないことは猿でもわかる。大きい道路に出て建物が入り組んだ道に入ってしまえばこっちのもんだった。
徐行しながら車の窓から顔を出し「律仁、またサボる気じゃないだろうな?」と大声で叫んでくる吉澤に時折、後ろを向いて走りながら車の様子を伺う。
日頃は走り慣れている廉介は訳も分からず一緒に走っているにもかかわらず一切値を上げた様子を見せないことに感心しながらも、吉澤との鬼ごっこを半ば楽しんでいた。
「俺にも用事があるんだよ、じゃーな。廉介早く行くぞ」
大きい道路に出たところで呑気に吉澤に手を振り別れを告げると、並走している廉介の肩を叩き角を曲がり、車では入れないような入り組んだ道へと入った。
1
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる