君のために僕は歌う

なめめ

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志すもの

志すもの⑧

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本の表紙はあまり興味のない律仁でも綺麗だと思う程の星雲の中に無数の星が散りばめられた写真というのか絵と言えばいいのか……。
とにかく目を惹く星空が表紙の本は天体関連の写真集であることは一目瞭然だった。

「ぼく……。天文学に興味があって。その勉強がしたいんだ」

律仁の元へと来てから一度も緩むことがなかった表情が僅かに緩んだ。表紙の星空のように光を宿した瞳からコイツが心からやりたいことなのだと感じ取れる。

本当は気の乗らないことでも、自分の好きなことに繋がると思えば頑張れるのは少しだけ自分と似たところがあるのかもしれない。現に律仁も鈴奈とのデビューのためなら、今まで嫌がっていたボイトレも頑張ることができた。

大人なんて子供を言い負かすために平気で嘘をつく生き物だ。
長山の親も業界人だ。澄んだ心など持っているとは言い難い。
果して彼の言う通り約束を守ってくれるのかは疑わしいところではあるが、純粋に信じている此奴を見てると苦虫を噛み潰した気持ちになるのは此奴の努力を知っているからだった。

長山と部屋が同室になった当初は、アイドルになることに対して気が進まなそうな、仕方なくやっている感のある言動をしていたが、鈴奈のことから立ち直れず、いい加減な律仁と違って彼自身ダンスのレッスンは真剣にやっている。

歌の方も元々長けている方であった律仁に比べてほぼ素人である長山はまだ音程の安定こそ出来ていないが、必死に食らいつこうとしていることは偶にレッスンが被る時に思うことはあった。

基本的にボイトレは律仁と別々で受けているが、レッスンを終えて帰ってくる時間は予想できる。長山は消灯ギリギリの時間に部屋に戻ってくることが多かった。

最初は意外と真面目なフリして遊び歩いているのかと軽薄に見ていたが、長山が帰ってくる時間を見越して窓を覗くと吉澤の車があったことから遊びではないことは明確であった。

「何、そのためにデビューに本気になってんの」

だから此奴が大人の嘘だと知った時に、壊れてしまうのではないかと思うと見放させない。

「うん……。それもあるけど……。それだけじゃなくて……」

本を胸元で抱えて口元を一文字に結ぶ。
長山は何か言いたげに口を開いたかと思えば、TAKEYAから号令が掛かり長山の話は中断されてしまった。





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感想 1

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