君のために僕は歌う

なめめ

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すれ違う方向

すれ違う方向③

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「いいだろ別に、お前がカバーしてくれて丸く収まったんだから。
良かったな、好感度上がって」

「はぁ?そういうことじゃねぇだろ。お前の態度は自分だけじゃない俺達のイメージにもなんだぞ?中馬さんは芸能界の大手だし、干されたりでもしたら
俺達、もう日の目に出れなくなるかもしれないんだぞ?」

「それはめでたいだろ。この仕事が減れば勉強に集中できる」

大樹の頭の中ではStar-Eyesスターアイズの活動は暇つぶしに過ぎないくらいどうでもいいことなのだろうか。それよりも勉強の方が大事で
寧ろ鬱陶しいく思っている言い草に腹が立った。

「お前、それマジで言ってんの?」
「ああ」

当然のことのように頷く大樹に我慢ならずに衣装の胸倉を掴んではそのまま壁へと押しやった。僅かに顔を歪ませていたが、死んだ魚のような目をして彼が見つめてくる。

「ふざけんなよ。俺がどんな思いで命かけて活動してると思ってんだよ。
お前はそれを台無しにする気かよっ」

「元々親父に言われて始めたことだし、律仁がどんなに頑張ろうとも
俺には関係ない」

「関係ないって、お前っ。また勉強か。前々から思ってたけど、お前のその勉強勉強勉強ってうるせぇんだよ。そんなに勉強がしたいならアイドルなんか辞めてしまえよ」

「それができたら此処にいない。お前はいいよなやりたいことやりたいようにできて」

希望も未来も失ったような諦めた物言いに更に奮起する。
俺だってやりたいことができているわけじゃない。アイドルは単なる通過点でしかない。もっと有名になって鈴奈に追いついて彼女の曲を作って、彼女の歌声を隣で聴くのが本当の望み。

だからどんなに理不尽なことを言われ、傷を抉られるような発言をされても我慢してきた。

「分かったような口訊くんじゃねーよ。できないって、またお前の親父か。親父に言われてるからっ辞められないってか」

出会った時から親が言うからと引かれたレールの上を歩くだけの坊ちゃんの大樹の性格はこの半年以上過ごして来て充分理解してる。
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