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重いとか軽いとか
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「千坂は、その子とどこで出会ったの?」
「繁華街の路地にあるところのバーだよ。お前は行ったことないだろ?」
千坂は大学生の頃から恋愛対象が同性であることは知っている。
在学中も全くその手のことには抵抗がなかった徹史に、何度惚気話を聞かされたことか……。
そんな千坂が行きつけるバーなのだから同じ恋愛志向が集まる場所に違いないのだろう。
「うん……。やっぱりその、千坂みたいな人が集まる店なんだよね?」
「まぁ……。両方いけるって奴も中にはいるけどな。お前が抵抗なければ行ってみるか?新境地開けるかもしれないぞ?」
ニヤニヤと頬を緩ませる千坂と自分の手元を交互に見遣る。
同性を恋愛対象として考えたことがないから分からない。
行ったところで結局自分は異性愛者だと分かれば冷やかしになるような気がして素直に頷けなかった。
「そんなところに俺が行って大丈夫なの?俺、同性を好きになったことないから確信がないし、単なる冷やかしにならない?」
「ならねぇよ。強いていうなら、獣の餌食になるかもな」
千坂が両手をガオっと顔の横に出して、徹史に向かって食らいつくすような動作をする。
「獣⁉俺、ライオンかなんかの餌になんの?まだ死にたくないんだけど……」
俺は肉食獣と戦いをさせられるのだろうか……。
そんなことを考えていた徹史の発言に「そっちの意味じゃねーよ。お前のケツの穴だよ」と補足されたことで、全てを理解した。
いわゆる処女を奪われるという意味なのだろう。徹史は同性のモノが自分の肛門に入る想像しては身震いして、自然と穴を窄めようと臀部に力を入れた。
「まぁ、でも。お前みたいな堅物は一回くらい遊んでもらった方が、その凝り固まった脳みそもほぐれるかもな。踏み込んでみるのもありだと思うぜ?」
千坂は鼻で笑いながら柄シャツの胸ポケットからお店の名刺を渡してくる。『ZUMI,S Bar』と書かれた名刺には住所と簡易的な地図が示されていた。
「千坂は一緒に来てくれないの?」
「行くわけないだろ。あんな可愛い彼氏いんのに行く必要ねーもん」
確かに恋人持ちが出会いの場でもあるバーに行くなんて禁忌ではあるが、世の中には二方向でつまみ食いをしている奴がいることも事実である。
けれど、千坂は『もっと遊べ』なんて人に言っているものの、あっちこっちに手を出しているような話は聞いたことはないので一途なのだろう。
そんな千坂に焚きつけられ、恋人が家で待っているからと早々にお開きになった彼と別れて、例のお店に向かってみることにした。
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