憧れはすぐ側に

なめめ

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好きな人の隣

3-7

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筆跡を見て人の善し悪しを見るのは如何かと思うが、男の字が綺麗な人が好きとか自分には差程興味のない情報。いまや、何でもデジタルの時代に字がうんぬん言っているのは珍しかった。

「字って性格でるって言うじゃん?渉太くんって考えてから行動移すタイプでしょ?」
「はぁ·····」

男にそう言われ、どう返すべきか分からずに生半可な返事をする。確かに自分は言葉を発するより考えてから動くタイプだ。だからって何って訳じゃないけど·····。
それがいい時もあれば悪い時もあるし·····。
少なくとも考え無しに好きな人に前進していくタイプではない。

「それでいて、角張ってて神経質そうだから·····」

鑑定士のようにズバズバっと字を見ただけで性格を分析してくる男。そういう心理学的なものが好きなんだろうか。

「珍しいですね。そういう分析できる人。」
「だって皆、分析とか好きじゃん?きっかけにあわよくば気になる子に急接近できたらなーって」

緩やかに笑って見せていたが、理由が完全に遊び慣れた男の発言なだけに、渉太はギョッとした。この男に向かって真面目に心理学的なものが好きだからとか考えてしまった数分前の自分を訂正したくなる。結局、女の子を落とすためだけの口説き文句みたいなもん。やっぱり、この人は苦手かもしれない·····。

「ぇえ。大樹先輩って付き合ってる人いたんですか?!」

気づけば女子達が御手洗いから帰ってきていて、奥の方から一人の驚いた女子の声に思わず顔を向けてしまった。「渉太くん?」と向かいの男に名前を呼ばれた気がしたが、それよりも大樹先輩の話が気になって目の前の男の事はどうでも良くなる。

対角張線上で部員に囲まれながら照れたように話している大樹先輩。部員達に「彼女の写真見せてくださいよー」と詰め寄られながらも渋々スマホの写真を見せていたのを見て、渉太の時間が止まったようだった。

分かっていた。あんなに優しくて完璧な先輩に彼女の一人くらい居ない方が可笑しい。
だけど、何処かで期待していた自分がいたからなのか、思いの外ショックは大きかった。
今すぐ此処から消え去って一人になりたい·····。

「おーい、渉太くん?」

男が自分の焦点に合わせるように手を振ってきたのが分かったが、無視をして俯くと膝の上で拳を強く握っては立ち上がろうかと思った。このままでは泣いてしまいそうになる·····。

「渉太、律仁となんか楽しそうにやってんじゃん」

すると、頭上から道中の人の声が聞こえては渉太は顔を上げた。
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