憧れはすぐ側に

なめめ

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それは突然に…

12-6

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雑誌やテレビで見たまんまの整った顔にあまりにも直視出来ずに、俯いたまま即座に頭を下げた。

「邪魔してす、すみませんでした。俺、り、り、律さんが大好きでドラマも欠かさず毎週見ていて……ちょっと覗いたら帰ろうと思ってたんです。すみませんでした。撮影頑張って下さい。では……」

とりあえず、迷惑だったことには変わりはないので謝罪をする。
緊張のあまり頭が真っ白になり、早口になりながらも何とか言葉を紡ぐことができた。

律の目の前に自分が立っているだけでも、頭に血が上りそうなくらいで一杯いっぱいで早急にこの緊張から解放するべく、渉太は慌てて自転車を押しながら前へ踏み出す。

「待って 」

踏み出して歩きだそうとした時に、呼び止められてしまい、思わず背筋がピンっと伸びてしまった。

律に呼び止めらた…!?

「君が見えたからファンの子かなって近づいてみただけだから、怒ったりはしてないよ 」

「あ、はい……」

これ以上何を話せばいいのだろうか、ニコニコとしている律の前に自分がいること自体が奇跡なのに。

ファンが居たからって近づいてきてくれる律はどれだけファンサービスがいいのだろう。
外見だけじゃなく、内面までもが格好良い……。

律から呼び止めてもらったとはいえ、自分から話を振らなきゃと気持ちは焦るが、ド緊張をしている頭で何かを考えられるわけがなかった。
きっと律仁さんならこういう時、憧れの人だろうと誰だろうと、親近感を持って話しかけるんだろうか……。

なんて考えては、ふと夏前に律仁さん経由で
律から名前付のサインを貰ったことを思い出した。

「あ、あの。サイン、ありがとうございました」

勇気を振り絞り、自転車を握る手を震わせながら律にお礼の言葉を送ったが、本人はピンと来ていないのか「サイン?」と呟いては小首を傾げていた。

それは無理もなく。律と律仁さんの関係がどういうのか分からないが故に、深い中ではないのかもしれない。

それにアイドルなのだから、日頃サインなんて書く機会なんて沢山ある。誰か一人のために書いたサインなんて忘れていて当然だった。
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