憧れはすぐ側に

なめめ

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知らない

15-1

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律仁さんが泊まっていった夜は、普段と違う状況と寝る直前に勘繰ってしまったせいで頭が冴えて思うように寝付けなかった。
しかし、人間疲れて布団に入れば寝付くようになるのか気づいたら眠りに入っていた。

目が覚めたのは朝方で、スマホが鳴る音がしたのがきっかけだった。眠気眼のままぼんやりと瞼だけ開く。律仁さんはスマホを持っては部屋を出ていき、廊下に繋がる扉の向こうで誰かと喋っているようだった。

遠巻きに聴こえる律仁さんの低い声がやけに心地よくて未だ眠気から冷めずに瞼を閉じては開いてを繰り返していると「渉太、ありがとね。これが終わったら渉太にちゃんと話すから」と囁かれた気がして、瞼を開いて起き上がるとすでに部屋には律仁さんの姿はなかった。

そんな律仁さんへのもやもやを残したまま秋が耽けていき、枯葉が目立つ頃。
九月に始まった律のドラマも最終回を迎えようとしていた。相変わらず律仁さんは姿を現さないし、連絡先も聴きそびれてしまったまま。

渉太は天体サークルの部室に入ると、何やら女子部員数名が一つのテーブルに集まって机上の一点先を見ては騒いでいた。

「三谷さん、みんなどうしたの?」

決して良くはない徒ならぬ雰囲気に渉太はその屯ろの一番後ろで突っ立っていた、天文部で唯一講義が一緒の三谷みたにさんに近づいては話しかけた。

すると、いきなり勢い良く肩を捕まれ反射的に身体が跳ねる。がっつくかのような食い気味の視線。大きな瞳がバッチリ目線にあってその圧に圧倒される。

「ねえ、早坂くん。律仁さんと仲良かったよね?」
「え?うん」

自分が律仁さんと仲が良いと言っていいのか曖昧なところだが、関わりは浅くはない方だと思うので深く頷く。

「じゃあ。あの時いた律仁さんって。これ、やっぱり律なの?!」
「えっ……」

スマホで一枚の写真を見せられては、息が止まった。
今日発売の週刊誌の一ページのカラー写真で見出し文字には『大人気アイドル 浅倉律  一般美女と天体デート!』と書かれていた。

見覚えのある夏のサークルの皆で行った天体観測の時の律仁さんの服装に帽子。そして、写真では女性の顔は見えないが長い髪の女の人が律仁さんに抱き着いている。

記憶が正しければ、あの長い髪とアナウンサーのような清楚な花柄のスカートは大樹先輩の元カノさんじゃないだろうか。

当時はまだ付き合っていたし、なんで、律仁さんと大樹先輩の元カノさんが……?
そして律ってどういうこと…?

「これって夏の天体観測の写真だよね?ほらしかも向かい合ってんの大樹先輩の彼女だよね?」

流石にその場にいた人間ならそう思わざる負えない写真。
三谷さんもまさにテレビ記者のように自分に問い詰めてくるが、渉太自身は何も知らかったし、頭が真っ白になっていた。

「ごめん。俺は何も知らない……」
「嘘だー渉太くん律仁さんといつも仲良さそうに話してたじゃん?」

迫ってくる三谷さんにどうとも返せない。
この雑誌の記事が嘘か本当かは分からないが、ただ、ほんの少しまさかとぼんやりと思っていたものが色濃くなっていくのを感じた。
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