憧れはすぐ側に

なめめ

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ファンであること

18-9

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律仁さんが「そうだね…」と言っては思い詰めたように黙り込んだのを見て我に返り、流石に言いすぎてしまったのだと反省した。
渉太は「すみません」と肩を狭めて謝る。

そのタイミングでテーブルに珈琲とホットサンドが運ばれてきては、運んできた店主のおじさんと目が合った。
おじさんに「ごゆっくり」と柔らかい表情で微笑まれては先程の自分を見られていたのだと思うと恥ずかしくなる。

「謝らなくていいよ。渉太の言う通りだから」

おじさんに一礼をして去っていったのを見計らってか、律仁が口を開いた。
真剣な眼差しで此方を見据えてることに、自然と背筋が伸びる。
渉太はそんな律仁さんを直視できる訳もなく、珈琲の水面に目線を向けているしかできなかった。

「最初は渉太に律のことを言うつもりはなかったよ。律がかっこいいのは当たり前だから、あれは理想の俺であって俺自身じゃない。渉太に気づかれて俺として見てくれないと思ったら怖かった…律は俺にとって完璧だから、比べられたりするのが怖くて……でも、どうしても渉太の気を引きたくて、律を使うなんて卑怯だよね……」 


よく芸能人の人は表ではキャラを作ってるだとかも聴く。律仁さんの話から律もそうなんだろうと感じる。
一般人ですら誰だって闇の部分っていうのは必ずあるから、表でキラキラと輝いている人は余計に深いものがあるんだろうか。

そうだとしても別にショックではないし、所詮ファンの自分たちは表面上の見たまんまの彼しか見れない。

そんな彼でも努力してる姿だとか、彼を推してることで自分たちの生活に華や夢を与えてくれる。

自分を犠牲にしてまで誰かの笑顔のために全力を注いでいるのは素直に凄いと思うから。

律仁さんは「ファンの渉太にイメージ壊すようなこと言ってごめん」と謝ってきたが、渉太は首を大きく振って否定した。
しかし、すぐに「無理に合わせなくていいよ」と突き返される。

「…本当の俺はテレビに出てる律みたいに、何時も冷静で格好良くはないし。都合のいい様に自分の立場使って卑怯だったりする。渉太のことになると余裕なくて、この間大樹と喧嘩したりもした」

律ももちろん好きだけど……それは憧れとか理想であって同じ人でも比べるもんじゃない。渉太はこうやって目の前で話してくれる律仁さんを嫌いにはなれなれなかった。

卑怯だとか恰好良くないだとか言っているけど俺にとって律仁は時々強引だし、たまにはデリカシーに欠けてるところはあるけど優しくて、意外と情に熱いとことか悩んだり困っていたら助けてくれたりとか人間味が強くて好きな人だから……。
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