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ピアノの戦慄
22-4
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拍手と共にステージ袖の下手から女の人が出てくる。名前も顔も知らないが、ここに鑑賞に来ている人達は少なからず知っているのだろう。赤い肩と背中が開いたドレスに身を包んで颯爽とステージ中央までくると一礼をする。
ホント舞台上で輝く人は男女問わずに綺麗だとつくづく思う。
彼女がピアノの席に着いたと同時に拍手が止み、数秒の静寂の後演奏が始まった。
なんの曲だとか曲名までは分からないけど
聞き覚えのある有名な作曲家達の音楽。
クラシック音楽は不思議なもので、日頃聞き慣れてない渉太でも心を穏やかにさせてくれる。
それに知っている曲もあるせいか退屈はしなかった。数曲演奏され、女性が客席に向かって頭を下げるとふたたび拍手が沸きあがる。
渉太も透かさず拍手をした。
きっと律仁さんに連れてきて貰わなかったらクラシックを真面に聴くなんてことが一生なかったと思う。貴重な体験が出来たと感無量な気持ちだった。
拍手をしながら、隣の律仁さんと目が合っては「良かったね」と微笑まれて不覚にもドキッとしたが、それに応えるように満面の笑みを浮かべて返事をした。
10分程幕間後、次の演奏者が下手から拍手と共に出てくる。女性ではなく今度は男性。
さっきの女性よりも心做しか拍手が大きいのはこの人を見るために来てる方が殆どなんじゃないかと言わせるくらいだった。
「えっ……」
渉太はその舞台上の男性を見た途端、心臓を強く鷲掴まれたように苦しくなる。
上下黒のスーツにワイシャツ。
黒髪のセンターパートで流された髪にまさに王子のようなその容姿……。
舞台中央でゆっくりと丁寧にお辞儀をして顔を上げた姿は間違いなく藤咲尚弥だった。
変わらない。あの切れ長の目。
「渉太この人だよ、さっき話してた……」
律仁さんがそう静かに話しかけてきたが、渉太の耳には入らず、律仁さんの問いに答えらるほどの余裕がなかった。
動揺で心が乱れては呼吸が浅くなっていくのが判る。
ただ昔のことを思い出しただけ、昔の人を久しぶりに見てしまったからといってなんてこともない。自分は演奏を聴きに来ているだけ。
冷静になれ。と何度も言い聞かせてみるが一向に胸のざわつきが収まらなかった。
見えない不安に押しつぶされ胸元を服の上から必死掴む。微かに聴こえるピアノの音色に乗り、走馬灯のように思い出すあの日のこと。ステージなんか見れるわけもなかった。
「渉太、大丈夫?」
「律仁さん……すいません」
そんな自分の異変に気がついたのか、律仁さんに背中をさすられた感覚がしたが、渉太は即座に立ち上がると、会場の外に出ては御手洗の個室へと駆け込んだ。
律仁さん心配をかけさせたくなかった。ましてや律仁さんの仕事の相手、ちゃんと鑑賞をしなくてはならない相手。余計な気を散らしたくなかった。しかし、あのままあの場にいたら自分が保っていられないような気がして怖くなった。
ホント舞台上で輝く人は男女問わずに綺麗だとつくづく思う。
彼女がピアノの席に着いたと同時に拍手が止み、数秒の静寂の後演奏が始まった。
なんの曲だとか曲名までは分からないけど
聞き覚えのある有名な作曲家達の音楽。
クラシック音楽は不思議なもので、日頃聞き慣れてない渉太でも心を穏やかにさせてくれる。
それに知っている曲もあるせいか退屈はしなかった。数曲演奏され、女性が客席に向かって頭を下げるとふたたび拍手が沸きあがる。
渉太も透かさず拍手をした。
きっと律仁さんに連れてきて貰わなかったらクラシックを真面に聴くなんてことが一生なかったと思う。貴重な体験が出来たと感無量な気持ちだった。
拍手をしながら、隣の律仁さんと目が合っては「良かったね」と微笑まれて不覚にもドキッとしたが、それに応えるように満面の笑みを浮かべて返事をした。
10分程幕間後、次の演奏者が下手から拍手と共に出てくる。女性ではなく今度は男性。
さっきの女性よりも心做しか拍手が大きいのはこの人を見るために来てる方が殆どなんじゃないかと言わせるくらいだった。
「えっ……」
渉太はその舞台上の男性を見た途端、心臓を強く鷲掴まれたように苦しくなる。
上下黒のスーツにワイシャツ。
黒髪のセンターパートで流された髪にまさに王子のようなその容姿……。
舞台中央でゆっくりと丁寧にお辞儀をして顔を上げた姿は間違いなく藤咲尚弥だった。
変わらない。あの切れ長の目。
「渉太この人だよ、さっき話してた……」
律仁さんがそう静かに話しかけてきたが、渉太の耳には入らず、律仁さんの問いに答えらるほどの余裕がなかった。
動揺で心が乱れては呼吸が浅くなっていくのが判る。
ただ昔のことを思い出しただけ、昔の人を久しぶりに見てしまったからといってなんてこともない。自分は演奏を聴きに来ているだけ。
冷静になれ。と何度も言い聞かせてみるが一向に胸のざわつきが収まらなかった。
見えない不安に押しつぶされ胸元を服の上から必死掴む。微かに聴こえるピアノの音色に乗り、走馬灯のように思い出すあの日のこと。ステージなんか見れるわけもなかった。
「渉太、大丈夫?」
「律仁さん……すいません」
そんな自分の異変に気がついたのか、律仁さんに背中をさすられた感覚がしたが、渉太は即座に立ち上がると、会場の外に出ては御手洗の個室へと駆け込んだ。
律仁さん心配をかけさせたくなかった。ましてや律仁さんの仕事の相手、ちゃんと鑑賞をしなくてはならない相手。余計な気を散らしたくなかった。しかし、あのままあの場にいたら自分が保っていられないような気がして怖くなった。
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